学校の健康診断では、身長・体重・視力・血圧と、いくつかの数字を測りますよね。どれか1つだけでは元気かどうか分かりませんし、去年と比べて初めて「伸びた」「下がった」が見えてきます。会社の決算書も同じです。数字はたくさん並んでいますが、最初に見る数字を5つに絞ると、ぐっと読みやすくなります。

第20回は、架空の雑貨店「ひだまり雑貨」の3年分の数字で、5つの数字の健康診断をやってみます。使う表は、第4回で見た損益計算書と、第8回で見た貸借対照表、それにキャッシュフローの表です。計算は割り算だけなので、数字が苦手でも大丈夫です。

架空の雑貨店の3年目の数字で行う会社の健康診断の図。成長しているかは売上成長率25%、もうかっているかは営業利益率10%、本業で現金が入っているかは営業キャッシュフロー26万円、近い支払いに耐えられるかは流動比率150%、借金に頼りすぎていないかは自己資本比率40%。1年分だけでなく3年の流れと同業と比べて読む
架空の雑貨店の3年目の数字で作成。

この記事で分かること

  • 会社の健康診断で最初に見る5つの数字と、それぞれの計算のしかた
  • 1年分の数字だけで良し悪しを決めてはいけない理由
  • 5つの数字をまとめて、一言で説明するコツ

結論|5つの問いに、5つの数字で答える

会社の健康診断は、「成長してる?」「もうかってる?」「現金は入ってる?」「近い支払いは大丈夫?」「借金に頼りすぎてない?」という5つの問いから始めます。答えに使うのは、売上成長率・営業利益率・営業キャッシュフロー・流動比率・自己資本比率の5つの数字です。そして、どの数字も1年分だけでは判断せず、去年や同業の会社と比べて読みます。

ひだまり雑貨の3年間

お店の3年分の数字を並べてみました。営業利益は本業のもうけ、営業キャッシュフローは本業で実際に入ってきた現金です(単位は万円)。

項目1年目2年目3年目
売上200240300
営業利益121830
営業利益率6%7.5%10%
営業キャッシュフロー81426

どの表のどこを見る?

5つの数字は、どれも決算書の表から拾えます。どの表を開いて、何を何で割るのかを先にまとめておきます。

数字見る表計算のしかた
売上成長率損益計算書(今年の売上-去年の売上)÷去年の売上
営業利益率損益計算書営業利益÷売上
営業キャッシュフローキャッシュフロー計算書一番上の「営業活動」の合計をそのまま見る
流動比率貸借対照表流動資産÷流動負債
自己資本比率貸借対照表純資産÷資産の合計

2つは損益計算書、2つは貸借対照表、1つはキャッシュフロー計算書から。つまり、3枚の表がそろって初めて健康診断ができるわけです。3枚がどうつながっているかは、第15回で取引ひとつを追いかけて確かめました。

5つの数字を1つずつ測る

  • 成長してる?(売上成長率):今年の売上が去年より何%増えたか。3年目は240万円から300万円なので25%です
  • もうかってる?(営業利益率):100円売って、本業で何円残るか。3年目は30÷300で10%。第4回で見た「階段」の途中の数字です
  • 現金は入ってる?(営業キャッシュフロー):本業で現金が増えたかどうか。3年目はプラス26万円です。利益が出ていても現金が入らないことがあるのは、第11回で見たとおりです
  • 近い支払いは大丈夫?(流動比率):1年以内に払うお金に対して、1年以内にお金になりそうなものがどれだけあるか。3年目の流動資産90万円÷流動負債60万円で150%です
  • 借金に頼りすぎてない?(自己資本比率):持っているもの全体のうち、返さなくていいお金でまかなっている割合。資産250万円のうち純資産が100万円なので40%です

中小企業基盤整備機構の解説によると、営業キャッシュフローがプラスなら本業から一応順調に現金を得ていると言え、マイナスなら本業に問題がある場合が考えられます。また、流動比率が100%を下回ると短期的な安全性が心配され、自己資本比率が高いほど長期的に見て安全性が高いとされています。ただ、これらはあくまで目安です。

「営業利益率10%」は良い数字?

ここで問題です。営業利益率10%は良い数字でしょうか。正解は「それだけでは分からない」なんです。

もう一軒、営業利益率がやはり10%の雑貨店があったとします。ただ、こちらは3年前が14%、去年が12%で、今年10%まで下がってきました。同じ10%でも、ひだまり雑貨は上り坂、もう一軒は下り坂。意味がまったく違いますよね。さらに、普通はどのくらいの数字になるかは業種によっても違います。

中小企業基盤整備機構の解説も、決算書は1期分だけでなく、時系列に並べて比べることと、同業の会社と比べることを勧めています。比べる相手は「去年の自分」「3年前の自分」「同じ業界の会社」の3つと覚えておきましょう。

ここは誤解しやすいポイント

  • 5つが全部良くても「良い会社」と決まるわけではありません。数字に表れない強みや弱みもあります
  • 数字が悪いときは、すぐに「危ない」と決めつけず、原因を探します。例えば、2号店を出した年は借金が増えて自己資本比率が下がることがあります
  • 5つの数字のうち、どれが一番気になるかは立場で違います。この点は第14回で取り上げました

診断結果は一言でまとめる

数字を測ったら、最後に言葉でまとめます。ひだまり雑貨なら、例えばこんな感じです。

「売上は3年で1.5倍になり、営業利益率も6%から10%に上がった。売上の伸び以上に利益が増えていて、営業キャッシュフローも増えているので、稼ぐ力が強くなっている。近い支払いにも余裕がある。」

ポイントは、数字を並べるだけで終わらせず、「だから何が言えるか」までつなげることです。株を選ぶときの指標とのつながりは個別株を買う前に確認することでも扱っています。

まとめ|5つの数字と、3つの比べる相手

会社の健康診断は、成長・もうけ・現金・近い支払い・借金の5つの問いに、5つの数字で答えることから始めます。そして、どの数字も去年、3年前、同業の会社と比べて読みます。数字が苦手でも、「1つの数字だけで決めない」ことさえ守れば、決算書はずっと身近になりますよ。

よくある質問

Q. 会社の健康診断で最初に見る5つの数字は何ですか?
売上成長率・営業利益率・営業キャッシュフロー・流動比率・自己資本比率の5つです。成長・もうけ・現金・近い支払い・借金の5つの問いに、それぞれ1つの数字で答えます。
Q. 営業利益率が10%なら良い会社と言えますか?
それだけでは分かりません。去年や3年前と比べて上がっているのか下がっているのか、同じ業界の会社と比べてどうかを見て、初めて良し悪しが判断できます。
Q. 流動比率はどのくらいあれば安心ですか?
中小企業基盤整備機構の解説では、100%を下回ると短期的な安全性が心配な状況とされています。ただし1つの目安で、業種や時期によって見方は変わります。
Q. 5つの数字が全部良ければ投資してよいですか?
数字が良くても、それだけで良い会社とは決まりません。数字に表れない強みや弱み、株価の水準なども合わせて考える必要があります。この記事は特定の銘柄を勧めるものではありません。

参考資料

本記事は2026年11月8日時点の情報をもとに作成しています。例に出したひだまり雑貨ともう一軒の雑貨店、その数字は説明のための架空のものです。