子どものころのお小遣い帳、覚えていますか? もらったお金、使ったお金、残ったお金。実はこれが会計のスタート地点です。会社の決算書も、書いてあることの基本は同じで、量が多いだけなんです。

では、海外の中学生や高校生は、学校で会計をどこまで習っているのでしょう。各国の教育省などが出している資料を調べてみると、答えは少し意外なものでした。

世界の中高生が習う会計の科目を比べた図。英国・米国ユタ州・シンガポール・豪州ビクトリア州・カナダBC州はいずれも選んだ人が習う科目。日本は商業科などの簿記が専門の科目で、家庭科のお金の勉強は全員が習う
各国・各州の教育省などの資料をもとに作成。州や学校によって習える科目は違います。

この記事で分かること

  • 海外でも「全員が習う」わけではないこと
  • 国ごとの授業の違い
  • 日本の高校ではどうなっているか
  • 数字が苦手な大人にも使える、授業のコツ

結論|全員は習わない。でも教え方がうまい

会計は、どの国でも「やりたい人が選ぶ科目」がほとんどです。「海外ではみんな中学から決算書を読んでいる」というのは、ちょっと言いすぎかもしれません。

ただ、選んだ生徒には「計算して終わり」ではなく、「この数字から何が分かる?」まで考えさせる授業になっています。

国・地域科目どんなことを習う?誰が習う?
英国GCSE Business「もうけ」と「手元のお金」の違い選んだ人
米国(ユタ州)Accounting I帳簿の付け方から決算書まで選んだ人
シンガポール会計の原理数字以外の情報も使って判断選んだ人
豪州(ビクトリア州)VCE Accounting小さなお店の記録と分析選んだ人
ニュージーランドNCEA Accounting会計の情報を作って伝える選んだ人
カナダ(BC州)Accounting 11・12基本から応用への2段階選んだ人
フランス技術系の高校コース会社の成績とお金の状態選んだ人
国際的な学校IGCSE・IB決算書と数字の比べ方選んだ人
日本商業科の「簿記」など帳簿の付け方、決算書づくり商業科などの生徒

「お金の勉強」には3つのレベルがある

一口に「お金の勉強」といっても、中身はけっこう違います。1つ目は、やりくりや貯金、投資といった家のお金の勉強。2つ目は、ビジネスの授業の中でもうけやお金の流れを見る勉強。3つ目は、帳簿を付けて決算書を自分で作る勉強です。

ニュースで「金融教育が必修に」と聞いても、たいていは1つ目の話。決算書の話とは別ものなんです。この3つを分けておくだけで、海外の話がぐっと分かりやすくなります。

英国とシンガポール|数字を「判断」に使う

英国(イングランド)では、14〜16歳が受ける試験の科目の一つに「Business」があります。お金の単元でまず教えるのが、「もうかっている」と「手元にお金がある」は別だということ。覚える計算は利益率の2つだけに絞り、そのぶん「去年と比べてどう?」「ライバルと比べてどう?」を考えさせます。先生向けの資料には、生徒自身のお小遣いから始めるやり方も載っています。

シンガポールの会計の授業が面白いのは、数字だけで決めないことを目標に掲げている点です。例えばお店の評判や業界の様子など、決算書に載らない情報も合わせて判断します。

米国とカナダ|帳簿の付け方から順番に

米国は州ごとに制度が違い、全国共通の必修科目はありません。例えばユタ州の高校には、取引を記録して決算書を仕上げるまでの手順を習う選択科目があります。こちらは「決算書を作る側」の勉強です。

カナダのブリティッシュコロンビア州では、日本の高2にあたる学年で基本を、高3にあたる学年で応用(在庫、給料、株や配当など)を習います。2段階に分けて少しずつ進む仕組みです。

豪州・ニュージーランド・フランス|小さなお店や会社が教材

豪州のビクトリア州では、一人で営む小さなお店を題材に、記録してまとめ、分析するところまで通して学びます。「その判断はお客さんや社会にとってどうか」という目線もあるのが特徴です。ニュージーランドとフランスにも会計を学べるコースがあり、どちらもそのコースを選んだ生徒が学びます。

国際的な学校|IGCSEとIB

世界中のインターナショナルスクールなどで使われている2つの仕組みにも、お金の単元があります。IGCSEには会計そのものの科目があり、2027年からの試験では倫理や環境、技術の話も加わります。IB(国際バカロレア)では、経営の科目の中で決算書の読み方や投資の考え方を学びます。

日本|商業科は本格派、全員が習うのは家のお金

日本の高校にも会計の授業はあります。商業科などでは「簿記」などの科目で、帳簿の付け方から決算書づくりまでしっかり学びます。ただ、普通科の生徒は習いません。

全員が習うのは、家庭科のお金の勉強です。文部科学省の解説には「株式,債券,投資信託等の基本的な金融商品の特徴」を扱うと書かれていますが、会社の決算書を読む勉強とは別ものです。

ここは誤解しやすいポイント

  • 「金融教育が必修」=「決算書が必修」ではありません
  • 米国・カナダ・豪州は州ごとに違います。ここで紹介したのは一部の州の例です

数字が苦手な大人にも使える3つのコツ

国は違っても、教え方には共通点があります。

  • 身近なものから始める:お小遣いや小さなお店など、全体が見渡せる大きさから入ります。
  • 「もうけ」と「手元のお金」を分けて考える:例えば100万円売れても、代金が来月払いなら今月の手元のお金は増えません。黒字なのにお金が足りない、はよくある話です。
  • 「誰の目線で見るか」を決める:投資する人、お金を貸す銀行、働く人では、気になるところが違います。

この3つは、大人が決算書を読むときにもそのまま使えます。株を買う前にどこを見るかは個別株を買う前に確認することで、配当だけで選ばないコツは高配当株の利回りの落とし穴で紹介しています。次回からは、国ごとの授業と決算書を読む練習を、1回ずつ進めていきます。

まとめ|うまい教え方をまねすれば、決算書は怖くない

海外でも、会計を全員が習うわけではありません。でも、身近な例から入り、もうけとお金を分け、誰の目線で見るかを決める。この順番なら、数字が苦手でも決算書はちゃんと読めるようになります。

よくある質問

Q. 海外の中高生は、全員が決算書を習うのですか?
いいえ。今回調べた英国・米国・シンガポール・豪州・カナダなどでは、会計は「選んだ人が習う科目」がほとんどでした。全員が習うのは、家のお金のやりくりや投資の基本といった勉強であることが多いです。
Q. 「金融教育」と「会計の勉強」は何が違うの?
金融教育は、貯金や投資など自分のお金の扱い方を学ぶものです。会計の勉強は、会社のお金の記録を付けたり、決算書を読んで会社の様子をつかんだりするもので、中身はかなり違います。
Q. 日本の高校では会計を習えないの?
習えます。商業科などには「簿記」などの科目があり、帳簿の付け方から決算書づくりまでしっかり学びます。ただし商業科などの生徒向けの科目で、普通科の生徒は習いません。
Q. 数字が苦手でも、決算書は読めるようになりますか?
なります。海外の授業と同じように、身近な例から入って「もうけ」と「手元のお金」を分けて考えれば、難しい計算がなくても大まかな意味はつかめます。この特集の後半で、架空の会社を使って練習します。

参考資料

本記事は2026年10月19日時点の情報をもとに作成しています。教育の仕組みは国・州・学校によって違い、変わることもあります。