投資信託での積立に慣れてきて、次は名前を知っている会社の株を買ってみたい。 そう考えたときに迷うのが、どの数字をどこで見ればよいかです。証券会社のアプリには株価の横に指標がいくつも並び、 ニュースでは「上方修正」「PBR1倍割れ」といった言葉が飛び交います。
個別株は、投資信託と違って1社の業績がそのまま値動きに出ます。 ただ、買う前に確かめることは「必要な資金」「株価の水準」「稼ぐ力と財務」「開示資料」の4つに絞れます。 ここでは東京証券取引所の規則と金融商品取引法をもとに、それぞれの見方を整理します。
この記事でわかること
結論|指標は「単独」ではなく「比較」で使う
PERやPBRに「何倍なら割安」という決まった基準はありません。業種によって水準が大きく違い、同じ会社でも成長の見通しが変われば評価も変わるからです。 東京証券取引所も上場会社向けの資料で、PBR・PERは「時系列の変化や、同業他社との比較などの観点でも」分析・評価することが考えられるとしています。
個人が買う前にできるのは、数字の意味を知ったうえで、同業の数社や過去数年と並べて極端な点がないかを確かめることです。 そのうえで、数字の出どころである決算資料を1度は自分で開いてみる。この順序を守れば、ニュースの見出しだけで売買する事態は避けられます。
必要な資金は「株価×100株」で決まる
国内の証券取引所では、2018年10月1日に内国株式の売買単位が100株に統一されました。 2007年11月に取組みを始めた時点では8種類の売買単位があり、それを集約した結果です。 株価が2,500円の銘柄なら、1回の購入に25万円と売買手数料が必要になります。
値動きの大きさも、あらかじめ知っておきたい点です。東証は1日の値動きの幅を「制限値幅」として価格帯ごとに決めており、 前日の終値などが2,000円以上3,000円未満の銘柄は上下500円まで動きます。株価2,500円なら1日で最大2割、 100株で5万円の値下がりがありうるということです。
100株に満たない株数で買える単元未満株のサービスは証券会社ごとに違います。 取扱いや手数料の比べ方は証券口座の選び方で扱っているので、ここでは触れません。
株価の水準はPERとPBRで比べる
| 指標 | 計算式 | 何がわかるか |
|---|---|---|
| PER(株価収益率) | 株価 ÷ 1株当たり純利益 | 利益の何年分の値段がついているか |
| PBR(株価純資産倍率) | 株価 ÷ 1株当たり純資産 | 帳簿上の純資産の何倍で評価されているか |
東京証券取引所「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」の指標例をもとに作成。
たとえば株価2,500円、1株当たり純利益200円、1株当たり純資産2,000円の会社なら、PERは12.5倍、PBRは1.25倍です(説明のための仮の数字です)。 PBRが1倍を下回ると、株価が帳簿上の純資産を下回っている状態になります。
東証は2023年3月31日、プライム市場とスタンダード市場の全上場会社に資本コストや株価を意識した経営を要請しました。 その背景として、「プライム市場の約半数、スタンダード市場の約6割の上場会社がROE8%未満、PBR1倍割れ」という現状を挙げています。 PBRの低さは割安の目印にもなりますが、市場が成長を見込んでいない表れでもあるため、低いというだけでは買う理由になりません。
稼ぐ力はROE、財務の厚さは自己資本比率で見る
ROE(自己資本利益率)は、当期純利益を自己資本で割った値です。株主が出したお金をもとに、1年でどれだけ利益を上げたかを示します。 自己資本100億円で純利益10億円なら、ROEは10%です。
ROEは借入を増やして自己資本を小さくしても上がります。そこで合わせて見たいのが、自己資本を総資産で割った自己資本比率です。 ROEが高くても自己資本比率が同業より極端に低い会社は、借入に頼って数字を押し上げている可能性があり、景気が悪化したときの打たれ強さが異なります。
1年分の数字だけで判断しない
純利益は、土地や子会社の売却といった一度きりの利益で大きく膨らむことがあります。その年だけROEが跳ね上がり、PERが低く見えることもあります。 3〜5年分を並べ、本業の利益である営業利益と同じ方向に動いているかを確かめてください。
数字の出どころは決算短信と有価証券報告書
| 資料 | 開示の時期 | 見られる場所 |
|---|---|---|
| 決算短信 | 期末後45日以内が適当(30日以内がより望ましい) | TDnet・各社のIRページ |
| 有価証券報告書 | 事業年度経過後3か月以内 | EDINET |
| 半期報告書 | 半期経過後45日以内(上場会社) | EDINET |
東京証券取引所「決算短信・四半期決算短信作成要領等」(2026年7月)、金融商品取引法第24条・第24条の5をもとに作成。
決算短信は、証券取引所の規則にもとづいて会社が出す決算の速報です。東証の作成要領は、通期の決算について 「決算期末後45日」以内の開示が適当とし、50日を超えた場合は理由の開示を求めています。 2024年4月1日の改正金融商品取引法の施行で四半期報告書は廃止され、第1・第3四半期は四半期決算短信に一本化されました。
有価証券報告書は、金融商品取引法第24条にもとづき事業年度経過後3か月以内に提出する法定の書類で、 事業のリスクや大株主、セグメントごとの業績まで載っています。3月決算の会社なら6月末までに、金融庁の電子開示システムEDINETで誰でも読めます。
業績予想の修正は株価が動くきっかけになる
多くの会社は決算短信で次の期の業績予想を示します。東証の規則では、新たに算出した予想値が直近の予想値に比べて 売上高で1.1倍以上または0.9倍以下、営業利益・経常利益・純利益で1.3倍以上または0.7倍以下になると、直ちに修正を開示しなければなりません。
修正は取引時間中に出ることもあり、翌日に株価が大きく動く原因になります。 保有中の銘柄なら、TDnetの適時開示を会社名で確認する習慣をつけておくと、ニュースより先に一次資料で内容を読めます。
1社に集中しない・NISAの枠をどう使うか
個別株の最大のリスクは、1社の不祥事や業績悪化が資産全体に響くことです。勤務先の株を持っている人は、給与と株価が同じ会社に依存する形になります。 比率の決め方は持株会の集中リスクで詳しく扱っています。
NISAで個別株を買えるのは成長投資枠で、年間240万円、生涯の非課税保有限度額1,800万円のうち1,200万円までです。 整理銘柄・監理銘柄は対象外です。制度の全体像は新NISAの基本を参照してください。 配当目当ての銘柄選びは高配当株の落とし穴、 優待目当ては株主優待の考え方で、それぞれ別に確認点をまとめています。
まとめ|買う前の4つの確認
- 必要資金は株価×100株。株価2,000円以上3,000円未満なら1日に上下500円動きうる
- PER・PBRは同業他社や過去と比べて使う。PBR1倍割れだけでは買う理由にならない
- ROEは自己資本比率と合わせて見る。1年分でなく3〜5年分を並べる
- 決算短信(期末後45日以内が目安)と有価証券報告書(3か月以内)を1度は自分で開く
指標は会社の一面を切り取った数字にすぎず、どれか1つで結論を出せるものではありません。 それでも、意味を知って一次資料までたどれるようになれば、値動きに振り回されずに持ち続けるかどうかを判断しやすくなります。
よくある質問
- Q. 個別株を買うにはいくら必要ですか
- 国内の証券取引所では2018年10月1日に内国株式の売買単位が100株に統一されたため、必要な資金は株価×100株に売買手数料を加えた額です。株価2,500円の銘柄なら25万円が目安になります。100株未満で買える単元未満株のサービスは証券会社ごとに取扱いが異なります。
- Q. PERやPBRは何倍なら割安ですか
- 何倍なら割安という決まった基準はありません。業種によって水準が大きく異なり、成長の見通しでも評価が変わるためです。東京証券取引所も、PBRやPERは時系列の変化や同業他社との比較といった観点で分析することを示しています。同業の数社や過去数年の数字と並べて、極端な点がないかを確かめる使い方が基本です。
- Q. 決算短信と有価証券報告書はどう違いますか
- 決算短信は証券取引所の規則にもとづく決算の速報で、東証は決算期末後45日以内の開示が適当、30日以内がより望ましいとしています。有価証券報告書は金融商品取引法第24条にもとづく法定の書類で、事業年度経過後3か月以内に提出され、事業のリスクや大株主なども載ります。決算短信はTDnet、有価証券報告書はEDINETで読めます。
- Q. 業績予想の修正はどんなときに発表されますか
- 東証の規則では、新たに算出した予想値が直近に公表した予想値に比べて、売上高で1.1倍以上または0.9倍以下、営業利益・経常利益・純利益で1.3倍以上または0.7倍以下になった場合に、直ちに開示することが義務付けられています。株価が大きく動くきっかけになりやすいため、保有銘柄はTDnetの適時開示を確認すると早く内容を把握できます。
参考資料
- 日本取引所グループ「売買単位の統一」
- 日本取引所グループ「制限値幅」
- 日本取引所グループ「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」
- 日本取引所グループ「決算短信作成要領・四半期決算短信作成要領」
- 東京証券取引所「業績予想の修正、予想値と決算値との差異等」
- e-Gov法令検索「金融商品取引法」(第24条・第24条の5)
- 金融庁「令和5年金融商品取引法等改正に係る政令・内閣府令案等の公表について」
- 金融庁「EDINET(金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム)」
- 金融庁「NISAを知る」
本記事は2026年9月15日時点の公開情報をもとに作成しています。 売買単位・制限値幅・開示の規則は取引所の規則改正で変わることがあります。 記事中の株価や指標の数値は説明のための仮の例で、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。