転職したときに作らされた口座、子どもの学費のために開いた口座、引っ越す前に使っていた地元の金融機関の通帳。 引き出しに行く手間のほうが残高より大きく見えて、そのままになっている口座は、多くの家庭にいくつかあります。 10年動かさないと国に取られる、という言い方を聞いて気にはなるものの、確かめる機会がないまま年が過ぎていきます。

結論から書くと、預けたお金が取り上げられることはありません。ただし、放っておくと お金は残るのに、口座の存在だけが分からなくなるという状態が起こります。 この記事では金融庁・内閣府・全国銀行協会・法務省・デジタル庁の公表資料をもとに、 10年をいつから数えるのか、通知はどんな条件で届くのか、移された後にどう引き出すのか、 そして口座を減らすときに何を先に付け替えるのかを順番に整理します。

使っていない銀行口座を整理する手順について、洗い出し・残高確認・まとめ先・解約・家族共有という段階ごとに、確認することと判断の目安を整理した図解
解約から始めると止まる引き落としがあります。順番があります。

この記事でわかること

  • 休眠預金等になる10年をいつから数えるのか
  • 9年目に届く通知の条件と、届いたときの扱い
  • 対象になる預金と、対象にならない預金の線引き
  • 預金保険機構へ移った後の引き出し方
  • 使っていない口座を洗い出す4つの手がかり
  • 解約する前に付け替えておくもの

結論|お金は消えない。消えるのは探せる状態のほう

10年間まったく動きのない預金は、休眠預金等として預金保険機構へ移されます。 ただし移された後も、預けていた金融機関の窓口で払い戻しを請求できます。 権利そのものは残り続けるので、「10年で没収される」という理解は正しくありません。

実際に困るのは別の場面です。本人が口座の存在を忘れ、家族もその金融機関と取引があったことを知らない。 この状態で相続が起きると、残高が数十万円あっても誰も請求しません。 金融機関ごとの手続きについては ネット証券・ネット銀行の相続で扱っています。 この記事は、そうなる前の段階、つまり本人が生きているうちの口座整理に絞ります。

10年をいつから数えるのか

金融庁は休眠預金等を、10年以上入出金等の取引がない預金等と説明しています。 対象になるのは2009年1月1日以降に最後の異動があった預金等で、その最終異動日等から10年が経過したものです。 根拠となるのは民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律で、2018年1月1日に施行されました。

ここでいう異動とは、入金や出金といった取引を指します。 つまり1円でも動かせば、そこから10年を数え直します。 逆に、利息が付いただけでは動いたことになりません。何年も残高が1円単位で変わらないまま増えている口座は、 本人の意思による取引がない口座です。移管された資金は預金保険機構を経由し、指定活用団体を通じて、 子どもや若者への支援、生活を営む上で困難を有する者への支援、地域活性化への支援という三つの分野に使われます。

対象になる預金、ならない預金

すべての預金が休眠預金等になるわけではありません。金融庁が示している線引きは次のとおりです。

区分該当するもの
対象になる普通・通常預貯金、定期預貯金、当座預貯金、別段預貯金、貯蓄預貯金、定期積金、相互掛金、元本補填のある金銭信託、保護預りのある金融債
対象にならない外貨預貯金、譲渡性預貯金、保護預りのない金融債、財形貯蓄、仕組預貯金、マル優口座

ふだん使う普通預金と定期預金は、どちらも対象です。 一方、外貨預金や財形貯蓄は対象外なので、10年動かさなくても移管されません。 ただし対象外であることと、忘れてよいことは別です。外貨預金は為替の変動を受け続け、 財形貯蓄は勤務先を辞めた後の取り扱いが決まっています。放置してよい口座はありません。

9年目に届く通知が、最後の分かれ目

移管の前には知らせが来ます。金融機関は、最終異動日等から9年を経過した預金等のうち、 元本が1万円以上のものについて、預金者へ通知を行います。郵送のほか、電子メールで届く場合もあります。 この通知が届けば異動があったものとして扱われ、休眠預金等にはなりません。

通知が届かない2つのケース

  • 残高が1万円未満のとき。通知の対象そのものに入らないため、何も来ないまま移管されます
  • 金融機関に登録した住所が古いとき。引っ越しや結婚で住所や姓が変わったまま届け出ていない口座は、 残高が1万円以上でも通知が届かず、気づかないうちに移管されます

数十年前に作った口座ほど、この2つに当てはまります。 実家に届いた見覚えのない金融機関からの封書を、広告と思って捨ててしまうこともあります。 親の口座については親の口座が凍結される前と後にできることも合わせてご覧ください。

移された後でも引き出せる

仮に移管されても、手続きは難しくありません。内閣府は、預金者はいつでも、預金等があった金融機関の窓口に申請することで 払い戻しを受けられると説明しています。全国銀行協会も、通帳や取引印、本人確認書類等を持参すれば引き出せると案内しています。

通帳や印鑑が見つからない場合でも、本人であることを確認できれば手続きは進みます。 必要な書類は金融機関によって違うため、心当たりのある金融機関へ先に電話で確認してから出向くほうが確実です。 支店が統廃合されている場合は、その金融機関の現在の店舗が窓口になります。

使っていない口座を洗い出す4つの手がかり

整理はまず、いくつ口座があるかを数えるところから始めます。手がかりは4つあります。

手がかり見つかるもの次にすること
通帳・証書店舗型の金融機関の口座最終記帳日から経過年数を数える
キャッシュカード通帳を作らなかった口座残高照会で生死を確かめる
メールの受信箱ネット銀行・ネット証券の口座金融機関名で検索する
引き落としの明細いま使っている口座の全体像まとめ先の候補を決める

ネット銀行は通帳もカードもないことがあり、記憶だけでは漏れます。 受信箱を金融機関名や「お知らせ」で検索すると、開設した覚えのない口座が出てくることがあります。 まとめ先をどう決めるかはネット銀行の金利と口座の使い分けで、 お金の役割ごとに口座を分ける考え方として整理しています。

解約する前に付け替えるもの

数え終えたら減らします。ここで順番を間違えると、支払いが止まって延滞になります。 解約は最後です。先に付け替えるものを並べます。

解約の前に移しておくもの

  • 給与・年金・配当の受取口座。変更が反映される月を確認してから解約する
  • 公共料金、通信費、保険料、クレジットカードの口座振替。反映まで1〜2か月かかるものがある
  • 証券口座の出金先や、積立の引き落とし口座
  • 給付金等の受取先として登録した公金受取口座。マイナポータルから登録先を変更する

引き落としが何本あるかを把握していないまま解約すると、後から未納の通知が届きます。 固定費そのものを見直す順番は家計改善で先に見直すべき固定費にまとめています。 口座を減らす作業と固定費を減らす作業は、同じ明細を見るので同時に進めると効率的です。

家族が探せる状態にしておく

最後に、自分がいなくなった後のことです。名義人の死亡を金融機関が把握すると口座の取引は止まり、 引き出しだけでなく口座振替も停止します。相続の手続きが済むまで動かせません。

当面の生活費や葬儀費用については、2019年7月1日から使えるようになった仕組みがあります。 法務省によれば、各共同相続人は口座ごとに、相続開始時の預貯金債権の額の3分の1にその相続人の法定相続分を掛けた額まで、 他の相続人の同意がなくても単独で払い戻しを請求できます。同一の金融機関に対する権利行使は150万円が限度です。 預金600万円の口座で法定相続分が2分の1なら、単独で払い戻せるのは100万円になります。

探す手間そのものを減らす制度もあります。デジタル庁の預貯金口座付番制度は、預貯金者の意思にもとづいて 金融機関へマイナンバーを届け出る任意の仕組みで、届け出ておくと相続や災害のときに、 一つの金融機関の窓口を通じて登録済みの口座の所在を確認できます。付番していない口座は照会の対象になりません。 家族と何を共有しておくかは相続の前に家族で話しておきたいお金のことで扱っています。

まとめ|数えて、付け替えて、残すのは3つか4つ

10年放置しても預金の権利は消えず、移管された後も窓口で払い戻せます。 9年目には残高1万円以上の口座へ通知が届き、届けば休眠預金等にはなりません。 ですから恐れるべきは制度ではなく、住所が古いまま連絡が取れない状態と、家族が口座の存在を知らない状態のほうです。

やることは3つです。通帳・カード・受信箱・引き落とし明細から口座を数え、受取と口座振替を先に付け替え、 それから解約する。残す口座を生活費・貯蓄・投資といった役割で3つか4つに絞れば、翌年からの管理はぐっと軽くなります。 手元に置く現金の目安は生活防衛資金はいくら必要かを参考にしてください。

参考資料

本記事は2026年8月13日時点の公開情報をもとに作成しています。 休眠預金等の対象範囲や通知の取り扱い、払い戻しに必要な書類は、制度改正や金融機関ごとの運用によって変わることがあります。 記載した金額や割合は法令および官公庁の公表資料に示されたもので、個別の口座に当てはめた結果を保証するものではありません。 実際に手続きを行う際は、取引のある金融機関および各制度の最新の案内をご確認ください。 本記事は制度と手順の一般的な説明であり、特定の金融機関や商品を推奨するものではありません。