長いあいだ、預金の金利はあってないようなものでした。100万円を1年預けても利息が数十円という時代が続き、 どの銀行に置いても同じだと考えるのが自然だったと思います。
その前提は変わりました。日本銀行の統計では、普通預金の平均金利は2022年4月の年0.002%から2026年7月には年0.255%になっています。 約4年で100倍を超える変化です。ただし、だからといって金利の高い口座を探して資金をまとめればよい、という話にはなりません。 この記事では、金利の水準を確かめたうえで、口座に役割を割り当てる考え方を整理します。
この記事でわかること
- 普通預金の平均金利が2022年からどう変わったか
- 表示された金利から2割強が税金で引かれること
- 金利差より振込手数料の差のほうが大きくなる場合があること
- 口座を3つの役割に分けると判断がぶれなくなること
- 保護されるのは1金融機関ごとに元本1,000万円までであること
結論|金利で選ぶ前に、口座に役割を割り当てる
口座選びで迷う原因は、ひとつの口座にすべてを求めてしまうことにあります。 生活費の引き落としも、いざというときの備えも、数年後に使う予定の資金も、同じ口座に入れておけば、 残高を見ても「使っていいお金」がいくらなのか分かりません。
先に決めるのは金利ではなく役割です。生活費・生活防衛資金・目的のある資金の3つに分け、 それぞれに求める性質を決めてから、その性質を満たす口座を選ぶ。この順序にすると、 金利が0.1%高い口座を探す作業が、家計全体のなかで何番目に重要なのかも見えてきます。
普通預金の平均金利はどう動いたか
金融機関が標準として公表している預金金利を店頭表示金利といい、日本銀行がその平均を統計として集計しています。 直近までの動きは次のとおりです。
| 時点 | 普通預金 | 定期預金(1千万円以上・1年) |
|---|---|---|
| 2022年4月 | 0.002% | 0.004% |
| 2024年3月 | 0.002% | 0.005% |
| 2025年3月 | 0.162% | 0.212% |
| 2026年7月 | 0.255% | 0.384% |
ここで押さえておきたいのは、これが平均であり、標準の提示水準であるという点です。 実際に適用される金利はこれと同じとは限りません。給与振込の指定、他の商品との同時申込、期間限定のキャンペーンといった 条件を満たすことで上乗せされる優遇金利が設定されていることが多く、店頭表示金利は受け取れる金利の下限に近い目安として読むのが実務的です。
優遇金利は「条件が続くかどうか」で見る
優遇の多くは、条件を満たした月にだけ適用されます。給与振込の口座を変えた、指定の取引を使わなくなった、 キャンペーン期間が終わった。こうしたときに自動的に標準の水準へ戻る設計が一般的です。 比較するときは、いまの金利ではなくその条件を無理なく満たし続けられるかを見てください。
表示された金利から2割強が引かれる
預貯金の利子は利子所得として、受け取るときに源泉徴収されます。税率は所得税および復興特別所得税が15.315%、 住民税が5%で、合わせて20.315%です。原則として源泉分離課税なので、確定申告は必要ありません。 裏を返せば、表示されている年利率は税引前の数字で、手取りはその約8割になります。
年0.255%で1年間預けた場合の利息を、預入額ごとに置いてみます。
| 預入額 | 年間の利息(税引前) | 手取り(20.315%控除後) |
|---|---|---|
| 100万円 | 2,550円 | 約2,032円 |
| 300万円 | 7,650円 | 約6,096円 |
| 500万円 | 12,750円 | 約10,160円 |
| 1,000万円 | 25,500円 | 約20,320円 |
金利が動いたことで、預金は「置いても増えないもの」ではなくなりました。 一方で、この表の金額を見て生活が変わるかというと、そうではありません。 預金に期待できるのは増やすことではなく、必要なときに額面どおり引き出せることです。 この役割の切り分けは債券・預金・現金の役割で詳しく整理しています。
金利差より手数料差のほうが大きいことがある
金利を比べる前に確認したいのが手数料です。仮に、いまより年0.3%高い口座に100万円を移せたとします。 増える利息は年3,000円、手取りでは約2,391円です。
これを振込手数料と並べてみます。毎月2回の振込に1回あたり200円を払っていれば、年間で4,800円です。 金利を0.3%上げるより、無料回数の枠を使い切るほうが大きいという計算になります。 ATMの時間外手数料も同じ構造です。
多くの銀行は、残高や取引内容に応じて振込・ATM手数料の無料回数を設ける仕組みを持っています。 金利の比較表を作る前に、まず直近1年の通帳から手数料の合計を拾ってください。 固定費の見直しと同じ考え方で、毎月出ていく金額を先に止めるほうが確実です。
口座は3つの役割に分けて考える
| 役割 | 求める性質 | 置き場所の考え方 |
|---|---|---|
| 生活費 | 出入りが多く、引き落としが集中する | 給与振込と各種引き落としを1つに集約する。手数料の無料条件はこの口座で満たす |
| 生活防衛資金 | すぐ引き出せて、元本が変動しない | 生活費の口座とは分ける。金利より、うっかり使わないことを優先する |
| 目的のある資金 | 使う時期が決まっている | 使う時期までの期間に合わせる。1年以内なら普通預金、数年先なら定期預金も選択肢 |
生活防衛資金を生活費の口座と分ける理由は、金利ではなく行動にあります。同じ口座にあると残高の一部として意識され、 少しずつ使われていきます。いくら必要かの考え方は 生活防衛資金はいくら必要かで扱っています。
なお、投資のための資金をどこに置くかは別の判断になります。証券口座の選び方は 証券口座の選び方を参照してください。 この記事で扱うのは、あくまで円建ての預金として置く場所です。 為替の変動を伴う外貨預金は、名前は預金でも性質が異なります。
保護されるのは1金融機関ごとに元本1,000万円まで
金融機関が破綻した場合、預金保険制度によって保護されるのは、預金者1人あたり1金融機関ごとに元本1,000万円までと破綻日までの利息等です。 同じ銀行に普通預金と定期預金を分けて持っていても、複数の支店に口座があっても、すべて合算して判定されます。 この合算作業を名寄せといいます。
一方、当座預金や利息の付かない普通預金等(決済用預金)は全額保護されます。 また、外貨預金のように預金保険の対象にならない商品もあります。
口座を増やしても保護の枠は増えない
誤解が多いところです。1,000万円の枠は金融機関ごとに数えるため、同じ銀行のなかで口座をいくつ作っても意味がありません。 枠を広げたいなら、増やすのは口座の数ではなく金融機関の数です。 ただし家族の名義に移す方法は、実質的に誰の資金かで判断され、贈与とみなされる可能性があります。税務上の判断が別に必要になります。
対象者が限られる非課税制度もある
障害者手帳の交付を受けている人、障害年金・遺族年金・寡婦年金を受けている人などを対象に、 預貯金等の元本350万円までの利子を非課税にする制度(マル優)があります。国債・地方債は額面350万円まで別枠です。 利用するには最初の預入までに非課税貯蓄申告書を提出する必要があり、預け入れた後から遡って非課税にすることはできません。 該当する可能性があるなら、口座を作る前に窓口で確認してください。
口座を増やしすぎると、後で家族が困る
金利や手数料の条件を追っていくと、口座はどうしても増えます。しかし口座の数は、そのまま管理の手間になります。 優遇条件を満たしているかの確認、住所変更の届出、そして相続のときの手続きが、口座の数だけ発生します。
とくに通帳やカードのないネット専業の口座は、本人以外から存在が見えません。 家族が把握できないまま残された口座は、探すところから始めることになります。 この問題への備えはネット証券・ネット銀行の相続で扱っています。
目安として、役割が3つなら口座も3つから4つで足ります。それ以上に増やすときは、 増えた1つが年にいくらの差を生むのかを、先ほどの手取りの表で確かめてから決めてください。
まとめ|役割を決めてから、条件を比べる
普通預金の平均金利は2022年4月の年0.002%から2026年7月には年0.255%になりました。 預金にも金利を意識する意味が戻ってきたのは確かです。 ただし手取りは20.315%を引いた後の金額で、100万円で年2,000円あまりという規模感です。
やることは3つです。まず、生活費・生活防衛資金・目的のある資金の3つに役割を分ける。 次に、直近1年で払った振込・ATM手数料を集計し、無料回数の条件を満たせる口座を生活費の口座にする。 最後に、1金融機関あたり元本1,000万円という保護の上限を頭に置いて、預け先の数を決める。 金利の比較は、この3つを済ませてからで間に合います。
参考資料
- 日本銀行「預金種類別店頭表示金利の平均年利率等(月次)」時系列統計データ
- 日本銀行「預金種類別店頭表示金利の平均年利率等」について
- 国税庁「No.1310 利息を受け取ったとき(利子所得)」
- 国税庁「No.1313 障害者等のマル優(少額貯蓄非課税制度)」
- 金融庁「預金保険制度」
本記事は2026年8月9日時点の公開情報をもとに作成しています。 預金金利・手数料の無料条件・優遇の適用要件は金融機関ごとに異なり、変更されることがあります。 掲載した金利は日本銀行が集計した平均値であり、特定の金融機関の提示水準を示すものではありません。 実際のお取引にあたっては、各金融機関の最新の商品説明書と約款をご確認ください。