子どもが生まれることになって、育児休業を取る方向で話が進んでいる。 ただ、休んでいる間の収入がいくらになるのか、社会保険料はどうなるのかが分からないまま、 貯金の残高だけを見て不安になっている——共働き世帯からの相談でいちばん多いのがこの状態です。
育児休業中の家計は、給付金の額だけを見ても分かりません。 雇用保険からの給付・健康保険と厚生年金保険の保険料免除・給付が非課税であることの3つが重なって、 はじめて手取りの見当がつきます。ここでは厚生労働省と日本年金機構が公表している数値だけを使って、 もらえる条件、金額、保険料免除の期間、そして賞与の扱いまでを順に並べます。
この記事でわかること
- 育児休業給付金の給付率が180日目までは67%、181日目以降は50%であること
- 2025年4月に始まった上乗せ給付により、合計80%で手取り10割相当になる条件
- 2026年8月1日改定の支給上限額が、給付率67%で月332,454円であること
- 健康保険・厚生年金保険の保険料が免除される期間の数え方(月末か、同月内14日以上か)
- 賞与の保険料が免除されるのは「連続1か月超」の育児休業に限られること
結論|給付率80%・非課税・保険料免除の3つが重なって手取り10割相当になる
育児休業給付金の給付率は、休業開始から180日目までが67%です。 この数字だけを見ると「3割以上減る」と感じますが、実際の手取りの減り方はもっと小さくなります。 厚生労働省は理由を3つ挙げています。 「育児休業中は申出により健康保険・厚生年金保険料が免除され、勤務先から給与が支給されない場合は雇用保険料の負担はありません。また、育児休業等給付は非課税です」。
さらに2025年4月からは、子の出生直後に両親がそろって休んだ場合に13%が上乗せされる給付が加わりました。 合計80%になると、同省の資料では「手取り10割相当」と説明されています。 つまり確認する順番は、①受給要件を満たすか、②給付率が何%の期間か、③保険料免除の要件を満たすか、の3つです。
誰がもらえるか|2年間に「11日以上働いた月」が12か月あるか
育児休業給付金の要件は4つです。第一に、1歳未満の子を養育するために育児休業を取得した雇用保険の被保険者であること。 分割して取得できるのは原則2回までです。第二に、 休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上の)完全月が12か月以上あること。 第三に、1支給単位期間中の就業日数が10日(10日を超える場合は就業時間が80時間)以下であること。 第四に、有期雇用の場合、子が1歳6か月に達する日までに労働契約が満了することが明らかでないことです。
支給単位期間とは、育児休業を開始した日から起算した1か月ごとの期間を指します。 なお産後休業(出生日の翌日から8週間)は育児休業給付金の対象外で、この期間は健康保険からの出産手当金が対応します。 被保険者期間の数え方は失業給付と共通の考え方なので、 失業給付は何日分もらえるかと併せて確認すると分かりやすくなります。
いくら出るか|67%と50%、そして上限額
支給額は休業開始時賃金日額×支給日数×67%(181日目以降は50%)で計算します。 休業開始時賃金日額は、休業開始前の直近6か月の賃金総額を180で割った額です。賞与は含みません。 この日額には上限と下限があり、上限額は16,540円、下限額は3,203円(いずれも令和9年7月31日までの額)です。
支給限度額は毎月勤労統計の平均定期給与額の増減にもとづいて毎年改定されます。 2026年8月1日からの支給上限額は次のとおりです。
| 給付の種類 | 給付率 | 支給上限額 |
|---|---|---|
| 育児休業給付金(支給日数30日) | 67% | 332,454円 |
| 育児休業給付金(支給日数30日) | 50% | 248,100円 |
| 出生時育児休業給付金(休業28日) | 67% | 310,290円 |
| 出生後休業支援給付金(休業28日) | 13% | 60,205円 |
休業開始時賃金日額が10,000円(賃金月額30万円)の人が、賃金の支払いを受けずに30日休んだ場合、 育児休業給付金は10,000円×30日×67%=201,000円になります。 181日目以降は10,000円×30日×50%=150,000円です。
67%が続くのは「通算180日」まで
産後パパ育休(出生時育児休業)に対して出生時育児休業給付金が支給された日数は、 育児休業給付金の給付率67%の上限日数である180日に通算されます。 産後パパ育休を28日取った場合、その後の育児休業で67%が適用されるのは152日分です。 夫婦でどちらがいつ休むかを決めるときは、この通算を前提に考える必要があります。
2025年4月に増えた13%の上乗せ|出生後休業支援給付金
出生後休業支援給付金は2025年4月1日に創設された給付で、 子の出生直後の一定期間について最大28日分、給付率13%が上乗せされます。 育児休業給付金の67%と合わせて80%となり、保険料免除と非課税を踏まえると手取り10割相当になる、という設計です。
要件は2つです。第一に、被保険者本人が対象期間に通算14日以上の育児休業を取得していること。 第二に、配偶者も同じ期間に通算14日以上の育児休業を取得していることです。 ただし配偶者が無業者、自営業者やフリーランスなど雇用される労働者でない場合、産後休業中である場合などは、 配偶者側の取得は要件になりません。母親が産後休業中に父親が14日以上休めば、父親はこの給付を受けられます。
休業開始時賃金日額が10,000円の人が28日分を受けると、10,000円×28日×13%=36,400円が別に支払われます。 この上乗せ分は、勤務先から賃金が支払われて育児休業給付金が減額される場合でも減額されません。 ただし賃金が80%以上となって育児休業給付金そのものが不支給になると、上乗せ分も支給されません。
社会保険料はいつからいつまで免除されるか
健康保険と厚生年金保険の保険料は、申出により免除されます。免除されるのは 被保険者負担分と事業主負担分の両方です。対象期間は 「育児休業等を開始した日の属する月から育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月まで」と定められています。 月末時点で育児休業中であればその月が免除になる、と覚えると実務に合います。
2022年10月1日からは、これに加えて 「開始日の属する月と終了日の翌日が属する月が同一の場合でも、育児休業等開始日が含まれる月に14日以上育児休業等を取得した場合は免除となります」という扱いが加わりました。 月をまたがない短い育児休業でも、同じ月に14日以上取れば免除されるということです。 毎月の天引き額がどの月から変わるかは、 給与明細の見方で確認できます。
賞与の保険料が免除されるかは「連続1か月超」で決まる
見落とされやすいのが賞与の扱いです。かつては賞与月の月末に育児休業中であれば賞与の保険料も免除されましたが、 2022年10月1日以降に開始した育児休業については、 「当該賞与月の末日を含んだ連続した1カ月を超える育児休業等を取得した場合に限り免除」に変わりました。
たとえば賞与が12月10日に支給され、12月25日から1月5日まで育児休業を取った場合、 12月末日は休業中ですが連続した期間が1か月を超えないため、賞与の保険料は免除されません。 賞与は標準賞与額に保険料率を掛けて計算されるため、金額が大きいほど差が出ます。 短い育児休業を賞与月に合わせて取る、という考え方は現在の制度では成り立ちません。
免除は自動では始まらない
保険料の免除は申出が前提です。勤務先が年金事務所または健康保険組合へ 「育児休業等取得者申出書」を提出することで手続きされます。 育児休業を延長したときも、その都度の届出が要ります。給与明細で保険料が引かれたままになっていないか、 最初の1か月分で確かめておくと安心です。
休業中に働くと給付はどうなるか
支給単位期間中の就業日数が10日(10日を超える場合は80時間)以下であれば、休業中に働いても給付は受けられます。 ただし勤務先から賃金が支払われると、額に応じて調整が入ります。
| 支払われた賃金の額 | 育児休業給付金の支給額 |
|---|---|
| 賃金日額×日数の13%以下 | 減額されない(67%のまま) |
| 同13%超〜80%未満 | 賃金日額×日数×80%-賃金額 |
| 同80%以上 | 支給されない |
賃金月額30万円の人が支給単位期間に12万円の賃金を受けた場合、 240,000円-120,000円=120,000円が育児休業給付金として支払われます。 なお181日目以降の期間では、減額されない上限が13%ではなく30%になります。 在職しながら給付を受ける点は在職老齢年金や 傷病手当金にも似た調整があり、 「働いた分だけ手取りが増えるとは限らない」という構造は共通です。
まとめ|確認する順番は「要件・給付率・免除」の3つ
育児休業中の収入を見積もるときは、金額の話に入る前に受給要件を確かめるのが先です。 休業開始日前2年間に11日以上の月が12か月という要件は、 転職直後や休職を挟んだ場合に満たせないことがあります。要件を満たしていれば、 あとは給付率67%の期間が通算180日まであること、181日目から50%になること、 出生直後に両親がそろって休めば13%が上乗せされることを、休業の分担に当てはめて計算するだけです。
保険料免除については、月末時点で休業中かどうか、同月内なら14日以上か、 賞与は連続1か月超かの3点を押さえておけば足ります。 なお短時間勤務に切り替える場合は、2025年4月に創設された育児時短就業給付金が別にあり、 社会保険の加入条件そのものは 社会保険の適用拡大の影響も受けます。 申請は勤務先を通じてハローワークと年金事務所へ行うため、休業に入る前に担当部署へ手続きの予定を確認しておくのが確実です。
よくある質問
- Q. 育児休業給付金はいくらもらえますか
- 休業開始時賃金日額×支給日数×67%で計算します。休業開始から181日目以降は50%です。休業開始時賃金日額は休業開始前6か月の賃金を180で割った額で、上限は16,540円です。2026年8月1日改定後の支給上限額は、支給日数30日の場合、給付率67%で332,454円、50%で248,100円です。
- Q. 手取り10割相当になるのはどういう場合ですか
- 子の出生直後に両親がそろって14日以上の育児休業を取得し、出生後休業支援給付金の13%が上乗せされる場合です。育児休業給付金の67%と合わせて給付率80%になります。育児休業中は健康保険・厚生年金保険の保険料が免除され、給付そのものが非課税であるため、給付率80%で休業前の手取りとおおむね同じ水準になります。上乗せの上限は28日分です。
- Q. 社会保険料はいつから免除されますか
- 育児休業等を開始した日の属する月から、終了する日の翌日が属する月の前月までが免除されます。月末時点で育児休業中であればその月が免除になる、と考えると実務に合います。加えて2022年10月1日以降は、同じ月の中に開始と終了がある場合でも、その月に14日以上取得していれば免除されます。免除されるのは本人負担分と会社負担分の両方です。
- Q. 賞与の保険料も免除されますか
- 2022年10月1日以降に開始した育児休業では、賞与月の末日を含んだ連続1か月を超える育児休業を取得した場合に限って免除されます。賞与月の月末に休業していても、連続した期間が1か月以下であれば賞与の保険料は免除されません。短い育児休業を賞与月に合わせて取るという考え方は、現在の制度では成り立ちません。
- Q. 育児休業中に働くと給付は減りますか
- 支給単位期間中の就業日数が10日(10日を超える場合は80時間)以下であれば給付は受けられます。勤務先から支払われた賃金が休業開始時賃金日額×日数の13%以下なら減額されません。13%超80%未満なら、賃金日額×日数×80%から賃金額を引いた額になります。80%以上になると支給されません。
参考資料
- 厚生労働省「育児休業等給付の内容と支給申請手続」(2026年8月1日改訂版)
- 厚生労働省「育児休業等給付について」
- 日本年金機構「従業員が育児休業等を取得・延長したときの手続き」
- 厚生労働省「Q&A〜育児休業等給付〜」
本記事は2026年9月22日時点の公開情報をもとに作成しています。 支給上限額は令和8年8月1日改定後の値で、毎年8月1日に改定されます。 休業開始時賃金日額の上限額・下限額は令和9年7月31日までの額です。 個別の支給可否と金額は、勤務先の事業所を管轄するハローワークおよび年金事務所で確認してください。