65歳が近づくと、日本年金機構から封書が届きます。中には名前も加入記録も印字された用紙が入っていて、一見すると「確認してください」という案内のようです。そのまま引き出しにしまってしまう人も少なくありません。

でも、公的年金は年齢が来れば自動で振り込まれるものではないんです。本人が請求して、初めて支給が決まります。この請求を裁定請求と呼びます。何歳から受け取るかの判断は繰上げ・繰下げの記事に任せて、ここでは、いつ何が届き、いつまでに何を出し、いつ振り込まれるのかを順に追います。

年金請求の手続きを届く書類の順に並べた表。受給開始年齢の3か月前に年金請求書が届き、誕生日の前日以降に提出し、提出から約1〜2か月後に年金証書と年金決定通知書が届き、そこから1〜2か月後に支払いの案内が届いて偶数月15日の振込が始まるという流れを示した図解
書類は届く順に決まっています。届いてから次に何をするかを決めれば迷いません。

この記事で分かること

  • 年金請求書が届く時期と、出せるようになる日
  • 戸籍や住民票を取るタイミングと、添付を減らす方法
  • 提出から初回の振込までにかかる期間
  • 特別支給の老齢厚生年金を受けている人の締切と、5年の時効

結論|請求書は3か月前に届き、出せるのは誕生日の前日以降

年金請求書は受給開始年齢の3か月前に届きますが、受け付けてもらえるのは誕生日の前日以降です。提出から年金証書まで約1〜2か月、そこから初回の振込までさらに1〜2か月。順調でも3〜4か月かかります。

早く出しても早く始まるわけではありませんが、遅れればその分だけ入金が後ろにずれます。請求しないまま5年が過ぎると、権利そのものが時効で消えることもあります。正しい時期は「誕生日の前日以降、できるだけ早く」です。

3か月前に届く「年金請求書」は、まず加入記録を見る

日本年金機構は、受給開始年齢に到達する3カ月前に年金請求書を送るとしています。この年金請求書(事前送付用)には、基礎年金番号、氏名、生年月日、性別、住所、年金加入記録があらかじめ印字されています。

印字された加入記録には必ず目を通してください。就職前のアルバイトの期間や、転職の合間の国民年金の期間が抜けていることがあります。空白がある場合や、基礎年金番号を複数持っていそうな場合は、郵送で済ませず年金事務所に相談してから出すほうが早く片づきます。記録の見方はねんきん定期便の記事で整理しています。

令和8年度に事前送付の対象となるのは、65歳になる昭和36年4月2日から昭和37年4月1日までに生まれた人と、63歳になる女性(昭和38年4月2日から昭和39年4月1日生まれ)で厚生年金と共済組合の加入期間が1年以上ある人です。受給開始年齢は全員が65歳とは限らないので、届いた時期が自分の受給開始年齢の目安になります。

出すのは誕生日の前日以降。添付書類は6か月以内のもの

65歳で初めて請求する人について、日本年金機構は65歳になる前に出された請求書は受付できないと案内しています。受給権は誕生日の前日に発生するので、その日以降が提出できる日です。

提出先は、厚生年金の加入期間がある人は年金事務所か街角の年金相談センター。国民年金の第1号被保険者の期間だけの人は、住んでいる市区町村の窓口です。共済組合等の期間だけの人は、原則として加入していた共済組合等に出します。

添付を減らす方法もあります。年金請求書にマイナンバーを書けば、戸籍謄本等の添付は原則いりません。受け取る口座は、カナ氏名・金融機関名・支店番号・口座番号が載った通帳かキャッシュカードのコピーを付けますが、公金受取口座を使うなら金融機関の証明もコピーもいりません。

提出から初回の振込まで、3〜4か月かかる

日本年金機構によると、提出から約1〜2カ月後に「年金証書・年金決定通知書」が届き、さらに1〜2か月後に支払いの案内が届いて受け取りが始まります。退職してから最初の入金までの数か月を、どのお金でつなぐかは先に決めておきましょう。

支払日は原則、偶数月の15日で、前月と前々月の2か月分がまとめて振り込まれます。15日が土日祝日なら、その直前の平日です。月ごとの家計に直すときは、振込額を2で割って考えます。年金から引かれる税金と社会保険料は年金の税金と社会保険料の記事にまとめました。

金額の目安は、令和8年4月分からの老齢基礎年金の満額が月額70,608円(昭和31年4月2日以後生まれ)、昭和31年4月1日以前生まれは月額70,408円です。令和7年度と比べ、基礎年金は1.9%、厚生年金の報酬比例部分は2.0%の増額改定でした。

特別支給を受けている人と、繰下げを選ぶ人の手続き

60代前半から特別支給の老齢厚生年金を受け取っている人は、65歳でもう一度手続きがいります。65歳になる誕生月の初め頃(1日生まれの方は前月の初め頃)に、ハガキ形式の年金請求書が届きます。

締切は誕生月の末日(1日生まれの方は前月末日)。封書が3か月前に届くのと違い、届いた月の末日までなんです。遅れると年金の支払いが一時保留されることがあります。権利は消えませんが、入金が止まる期間が出ます。働きながら受け取っている人は、収入によって支給が止まる仕組みも関わります。その線引きは在職老齢年金の記事で扱っています。

65歳で受け取らず、後で増やして受け取る繰下げを選ぶ場合、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を遅らせるなら65歳時点の請求手続きは不要です。どちらか一方だけ受け取るなら、請求書の受取方法欄で希望する方法を一つ選んで出します。

繰下げは1か月遅らせるごとに0.7%増え、75歳まで遅らせれば120か月分で84%の増額です。66歳から74歳の間は毎年「繰下げ見込額のお知らせ」が届き、75歳になると年金請求書が送られてきます。損得の比較は損益分岐点の記事で数字を追っています。

年金請求書と一緒に出す2つの書類

年金請求書には、同時に出せる書類が同封されることがあります。代表的なのが次の2つです。

書類内容出さないとどうなるか
年金生活者支援給付金請求書年金収入等が基準額以下の人への上乗せ給付給付が始まらない
扶養親族等申告書年金から源泉徴収される所得税の控除申告配偶者控除等が反映されない

年金生活者支援給付金は、前年の公的年金等の収入金額とその他の所得の合計が926,500円以下(昭和31年4月2日以後生まれ)であることなどが要件です。保険料を納めた期間に基づく額は月額5,620円を基準に納付済期間等に応じて計算し、免除期間に基づく額は11,768円に免除期間を掛けて480月で割ります。これから基礎年金を請求する人は、基礎年金の請求書と一緒に出すよう案内されています。未納や免除が記録にある人は、追納と任意加入の記事も確かめておきましょう。

扶養親族等申告書は、出さなくても税率は変わりません。ただし確定申告をしない限り、障害者控除や配偶者控除等が源泉徴収に反映されず、所得税と翌年の住民税が多く引かれる場合があります。控除の対象になる家族がいる人は、必ず出しておきたい書類です。

請求しないまま5年が過ぎると

年金を受ける権利(基本権)は、権利が発生してから5年を過ぎると時効で消えます。やむを得ない事情で請求できなかった場合は、書面で申し立てて時効消滅を避ける道もありますが、原則は5年です。

平成19年7月7日以降に受給権が発生した年金では、毎月分の支払いを受ける権利(支分権)は5年を過ぎても自動的には消えず、国が個別に時効を援用したときに消える扱いになりました。とはいえ、請求が遅れて得をすることは何もありません。

繰下げを選んだ人も同じです。75歳の案内には、請求した時点から5年以上前の年金は、繰下げ申出したものとみなした年金を除き、時効で受け取れなくなるとあります。先送りを続けると、受け取れない期間が生まれることがあります。

ここは誤解しやすいポイント

  • 戸籍や住民票は、受給権発生日以降に交付され、かつ提出日に6か月以内のものが必要です。準備のつもりで誕生日の半年前に取ると、取り直しになります。集めるのは請求書が届いてからで十分です
  • 請求書が3か月前に届いても、その時点では出せません。65歳になる前に出した分は受け付けられません
  • 特別支給のハガキは、3か月前ではなく届いた月の末日が締切です

まとめ|届いた書類を順に出せば、手続きは終わる

  • 請求書は受給開始年齢の3か月前に届き、出せるのは誕生日の前日以降。提出から初回の振込まで3〜4か月かかる
  • 戸籍や住民票は受給権発生日以降かつ6か月以内のもの。特別支給の人はハガキが届いた誕生月の末日が締切
  • 請求しないまま5年が過ぎると、権利が時効で消えうる。引き出しの封書は今日開ける

よくある質問

Q. 年金請求書はいつ届きますか。届かないときはどうすればよいですか。
日本年金機構は、受給開始年齢に到達する3か月前に年金請求書(事前送付用)を送付するとしています。基礎年金番号・氏名・生年月日・住所と年金加入記録が印字された状態で届きます。受給開始年齢の1か月前になっても届かない場合は、住所の登録内容や加入記録に確認が必要な事情があることが考えられるため、年金事務所またはねんきんダイヤルに問い合わせてください。届いていなくても請求できないわけではありません。
Q. 誕生日より前に年金請求書を出すことはできますか。
できません。65歳で初めて請求する場合について、日本年金機構は「受付は65歳になってからです。65歳になる前に提出された場合は受付できませんのでご注意ください」と案内しています。受給権は誕生日の前日に発生するため、提出できるのはその日以降です。書類が3か月前に届くのは準備のためであり、早く出せば早く受け取れるという仕組みではありません。
Q. 請求してからどのくらいで年金が振り込まれますか。
年金請求書の提出から約1〜2か月後に「年金証書・年金決定通知書」が届き、そこからさらに1〜2か月後に支払いの案内が届いて受け取りが始まります。提出から初回の入金まで、順調に進んでも3〜4か月はかかると見ておくのが現実的です。支払いは原則として偶数月の15日に前月と前々月の2か月分がまとめて振り込まれ、15日が土日祝のときは直前の平日になります。
Q. 繰下げを考えています。65歳のときに何かする必要はありますか。
老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を繰り下げる場合、65歳時点では請求手続きは不要とされています。どちらか一方だけ受け取る場合は、請求書の受取方法欄で希望する受取方法を一つ選んでチェックし、提出します。繰下げは請求を一月遅らせるごとに0.7%増額し、75歳まで繰り下げれば84%の増額になります。66歳から74歳の間は毎年「繰下げ見込額のお知らせ」が届きます。
Q. 何年も請求しないままでした。もう受け取れないのでしょうか。
年金を受ける権利(基本権)は、権利が発生してから5年を経過したときは時効によって消滅すると定められています。ただし、やむを得ない事情で時効完成前に請求できなかった場合は、書面での申し立てによって時効消滅を避けられる取り扱いがあります。まずは年金事務所に事情を伝えて相談してください。放置している期間が長いほど受け取れない分が増えるため、早く動くほど有利です。

参考資料

本記事は2026年9月21日時点の公開情報をもとに作成しています。 年金額や給付基準額は毎年度改定され、事前送付の対象となる生年月日も年度によって変わります。 自分の受給開始年齢と必要な添付書類は、届いた年金請求書および日本年金機構の窓口で必ず確認してください。