ねんきん定期便で年金見込額を確認すると、「これで老後の生活費をどこまでまかなえるか」を考えたくなります。
ただし、年金は額面どおりに使えるわけではありません。

老齢年金には所得税や復興特別所得税がかかる場合があります。さらに、住民税、介護保険料、国民健康保険料、後期高齢者医療保険料などが年金から差し引かれることもあります。

つまり、老後家計で大切なのは「年金額はいくらか」だけではありません。税金と社会保険料を差し引いたあとの手取りで考えることです。

この記事では、年金にかかる税金と社会保険料を、源泉徴収票、年金振込通知書、自治体からの通知を見ながら確認する方法を整理します。前回の年金はいくらもらえるのか|ねんきん定期便で確認すべき3つの数字の続編として読んでください。

この記事でわかること

  • 老齢年金に税金がかかる基本的な考え方
  • 所得税・復興特別所得税の源泉徴収の見方
  • 住民税・森林環境税が年金から引かれる場合
  • 介護保険料、国民健康保険料、後期高齢者医療保険料の見方
  • 年金振込通知書と源泉徴収票で確認すべき数字
  • 老後収入を手取りで考えるチェックポイント
年金の額面から所得税、住民税、社会保険料を差し引いて手取りを確認する流れを整理した図解
▲ 年金は額面だけでなく、税金と社会保険料を差し引いた振込額で見ることが大切です。

先に結論|年金は「額面」ではなく「振込額」で見る

老後収入を考えるときは、年金の額面だけで判断しないようにしましょう。

年金見込額や年金額改定通知書に出てくる金額は、税金や社会保険料が差し引かれる前の金額を含みます。実際に家計で使える金額は、年金振込通知書に記載される振込額に近い数字です。

手取りを考えるときは、主に次の4つを確認します。

  1. 年金の支払額
  2. 所得税および復興特別所得税
  3. 住民税および森林環境税
  4. 介護保険料、国民健康保険料、後期高齢者医療保険料
年金は「もらえる額」ではなく、「振り込まれて使える額」で老後家計に入れるのが基本です。

老齢年金は課税対象、障害年金・遺族年金は原則非課税

まず押さえたいのは、年金の種類によって税金の扱いが違うことです。

日本年金機構は、老齢年金には所得税法により雑所得として所得税および復興特別所得税がかかると説明しています。一方で、障害年金遺族年金には所得税はかかりません。

この記事で主に扱うのは、老齢基礎年金老齢厚生年金など、老後に受け取る老齢年金です。ねんきん定期便で確認する老齢年金の見込額は、実際の生活では税金や社会保険料を考慮して見る必要があります。

年金の種類 税金の扱い 注意点
老齢年金 雑所得として課税対象 源泉徴収や確定申告を確認
障害年金 原則非課税 他の所得や保険料は別に確認
遺族年金 原則非課税 世帯の住民税・保険料は確認
同じ「年金」でも、老齢年金、障害年金、遺族年金では税金の扱いが違います。家計計算では年金の種類を分けて見ましょう。

所得税・復興特別所得税|源泉徴収される場合がある

老齢年金は、一定額以上になると所得税および復興特別所得税の源泉徴収の対象になります。

日本年金機構の説明では、令和8年分以降は、65歳未満でその年の年金の支払額が155万円以上の方、65歳以上で205万円以上の方が、所得税および復興特別所得税の源泉徴収の対象とされています。

源泉徴収される所得税額は、年金額だけでなく、扶養親族等申告書の内容や各種控除によって変わります。所得税の課税対象となる方が各種控除を受けるためには、扶養親族等申告書の提出が関係します。

ただし、源泉徴収されているからといって、必ずそれで税金が完全に終わるとは限りません。医療費控除を受けたい場合、年金以外の所得がある場合、複数の年金や給与がある場合などは、確定申告を検討することがあります。

年金の所得税は、給与の年末調整とは違います。源泉徴収票が届いたら、支払金額と源泉徴収税額を確認しましょう。

住民税・森林環境税|自治体の通知も確認する

年金には、所得税だけでなく、住民税や森林環境税が関係することがあります。

日本年金機構は、65歳以上で老齢または退職を支給事由とする年金を受給しており、年間の受給額が18万円以上の方など、一定の条件に該当する場合、住民税および森林環境税が年金から特別徴収されると案内しています。

住民税は前年の所得をもとに決まるため、退職した直後や年金を受け取り始めた年は、思ったより負担感が出ることがあります。退職金、給与、年金、配当などがある年は、翌年の税金にも注意が必要です。

金額や徴収方法は、市区町村から届く税額通知書などで確認します。年金振込通知書だけでは全体像が見えない場合があるため、自治体の通知も保管しておきましょう。

介護保険料・医療保険料|年金から引かれることがある

老後の手取りを考えるうえで、社会保険料はとても重要です。

日本年金機構は、介護保険料、国民健康保険料または後期高齢者医療保険料が、一定の条件に該当する場合に年金から特別徴収されると説明しています。

たとえば、介護保険料は、65歳以上で、老齢・退職・障害・死亡を支給事由とする年金を受給しており、年間の受給額が18万円以上の方が対象になるとされています。国民健康保険料や後期高齢者医療保険料にも、年齢や年金額などの条件があります。

ただし、実際の保険料額は自治体や所得、世帯、医療保険の種類によって変わります。手取りを正確に見たい場合は、市区町村から届く介護保険料、国民健康保険料、後期高齢者医療保険料の通知を確認してください。

差し引かれる可能性があるもの 確認先 見る書類
介護保険料 市区町村 介護保険料通知、振込通知書
国民健康保険料 市区町村 国保の通知、振込通知書
後期高齢者医療保険料 広域連合・市区町村 保険料通知、振込通知書
住民税等 市区町村 税額通知、振込通知書
年金の手取りは、税金だけでは決まりません。介護保険料や医療保険料まで入れて、毎月使えるお金を考えましょう。

年金振込通知書で見るべき数字

年金の手取りを確認するときに重要なのが、年金振込通知書です。

日本年金機構の年金振込通知書の見方では、年金支払額、介護保険料額、後期高齢者医療保険料または国民健康保険料、所得税額および復興特別所得税額、個人住民税額および森林環境税額、控除後振込額などが示されています。

手取りで老後家計を作るなら、まず「年金支払額」と「控除後振込額」の差を確認します。その差が、税金や社会保険料として差し引かれている金額です。

年金の手取り目安 = 年金支払額 - 税金 - 社会保険料

年金は偶数月にまとめて振り込まれることが多いため、家計では月額に直して考えると管理しやすくなります。通知書の振込額を見て、1か月あたりの生活費に割り戻してください。

「年金額が増えたのに振込額があまり増えない」と感じたら、税金や社会保険料の差し引き額も一緒に見ましょう。

公的年金等の源泉徴収票で1年分を確認する

1年分の年金と税金を確認するときは、公的年金等の源泉徴収票を見ます。

日本年金機構は、老齢または退職を支給事由とする年金を受け取った人に、支払われた年金の金額や源泉徴収された所得税額等を知らせるため、公的年金等の源泉徴収票を送付すると案内しています。

源泉徴収票では、主に次の数字を確認します。

  • 支払金額
  • 源泉徴収税額
  • 社会保険料の金額
  • 扶養親族等の控除に関する情報

確定申告や住民税申告をするとき、医療費控除を使うとき、所得証明を確認するときにも使うことがあります。年金振込通知書とあわせて保管しておきましょう。

確定申告が必要かどうかも確認する

年金受給者は、必ず全員が確定申告をするわけではありません。

国税庁は、公的年金等の収入金額が400万円以下で、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下など、一定の場合には所得税および復興特別所得税の確定申告は必要ないと案内しています。

ただし、確定申告不要制度に該当しても、住民税の申告が必要になる場合があります。また、医療費控除、生命保険料控除、寄附金控除、年金以外の所得、上場株式等の損益、退職金、事業所得などがある場合は、個別に確認が必要です。

「申告しなくてよい」と「申告したほうがよい」は同じではありません。還付を受けられる場合もあれば、申告によって住民税や社会保険料に影響する場合もあります。

確定申告の要否は個人差が大きい領域です。迷う場合は、税務署、自治体、税理士等に確認してください。

老後家計は「年金手取り」と「固定費」で組み立てる

年金の手取りが見えたら、老後家計に落とし込みます。

まず、年金の控除後振込額を月額に直します。次に、住居費、食費、光熱費、通信費、保険料、医療費、介護費、車の維持費、税金、家の修繕費など、毎月または毎年かかる支出と比べます。

ここで足りない部分を、預金、退職金、NISA、iDeCo、働く収入などで補います。年金の額面だけを見ていると、税金や社会保険料を見落として、老後資金の取り崩しが早くなることがあります。

退職後の健康保険は、退職後の健康保険はどう選ぶか|任意継続・国保・家族の扶養の違いも確認してください。

介護費の見方は、親の介護費はいくらかかるのか|公的介護保険と家族負担の考え方も参考になります。

老後資金の全体像は、老後資金は「いくら必要か」より「どう分けて準備するか」が重要で整理しています。

老後収入は、年金の額面ではなく、税金・社会保険料を差し引いた手取りを土台にして考えましょう。

年金手取りを確認するチェックリスト

最後に、年金の手取りを確認するときのチェックリストをまとめます。

  • ねんきん定期便や年金額改定通知書で年金額面を確認する
  • 年金振込通知書で控除後振込額を見る
  • 所得税・復興特別所得税が源泉徴収されているか確認する
  • 住民税・森林環境税が年金から引かれているか確認する
  • 介護保険料がいくら引かれているか確認する
  • 国民健康保険料または後期高齢者医療保険料を確認する
  • 市区町村から届く税額通知・保険料通知を保管する
  • 公的年金等の源泉徴収票で1年分を確認する
  • 確定申告や住民税申告が必要か確認する
  • 夫婦それぞれの年金手取りを別々に確認する

年金額そのものの確認は、年金はいくらもらえるのか|ねんきん定期便で確認すべき3つの数字から始めると整理しやすくなります。

年金の手取りを知ることは、不安になるためではありません。老後の毎月の収入を現実的に把握し、足りない部分を落ち着いて準備するための作業です。

本記事は、2026年5月31日時点で公表されている情報をもとに作成しています。所得税、住民税、森林環境税、介護保険料、国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、確定申告不要制度、源泉徴収の対象額は変更される場合があります。本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務判断、社会保険判断、家計判断を助言するものではありません。実際の判断は、日本年金機構、税務署、市区町村、税理士、社会保険労務士、FP等に確認してください。