住宅情報サイトに並んでいるのは物件の価格です。3,000万円と書いてあれば、頭金と借入額を足して3,000万円を用意すればよさそうに見えます。 ところが契約が近づくと、印紙税、仲介手数料、登記の費用、火災保険料と、聞き慣れない名前の支払いが次々に出てきます。 そして多くは、住宅ローンが振り込まれるより前に現金で必要になります。

結論から書くと、住宅の取得では物件価格のほかに数十万円から百数十万円の支払いが別に発生し、その一部は借入前の現金で用意することになります。 この記事では国税庁・国土交通省・総務省・法務局の公表資料をもとに、何にいくらかかるのか、いつ払うのか、 そして現金が足りないときにどんな選択肢があるのかを、支払いの時期順に整理します。

住宅購入の諸費用について、契約時・引渡し時・引渡し後という支払いの時期ごとに、主な費目と金額の決まり方を整理した図解
金額より先に、いつ現金が要るのかを押さえます。

この記事でわかること

  • 諸費用を「契約時・引渡し時・引渡し後」で分けて考える理由
  • 仲介手数料の上限が法令でどう決まっているか
  • 印紙税・登録免許税不動産取得税の税率と軽減措置の期限
  • 3,000万円の中古住宅で試算した具体的な金額
  • 現金が足りないときの選択肢と、その代償

結論|諸費用は価格の外側にあり、しかも前倒しで来る

諸費用の総額は、一般に物件価格の数%程度とされます。仲介する業者が入る中古住宅では新築より重くなり、 逆に売主から直接買う新築では仲介手数料がかかりません。ただし本当に厄介なのは総額ではなく、支払いの順番です。

住宅ローンが実行されるのは、原則として引渡しを受けて担保の登記ができる日です。 それより前に発生する支払い、たとえば契約時の手付金や印紙税は、借りたお金では払えません。 自己資金がいくら残るかではなく、いつの時点でいくらの現金が手元にあるかで資金計画を組む必要があります。

支払いを時期で3つに分ける

費目の名前で覚えようとすると数が多すぎます。払う時期で3つに束ねると全体像がつかめます。

時期主な費目支払いの性格
契約時手付金、印紙税、仲介手数料の一部現金。住宅ローンより前
引渡し時登録免許税、司法書士報酬、融資事務手数料、保証料、火災保険料、固定資産税等の精算金、仲介手数料の残りローン実行日に精算
引渡し後不動産取得税数か月後に納税通知書が届く

引渡し後に届く不動産取得税は、忘れたころに来ます。引渡しの数か月後に都道府県から納税通知書が送られてくるため、 引越しや家具の購入で手元が薄くなった時期と重なりやすい支払いです。

契約時に現金で必要になるもの

手付金は売買契約のときに買主が売主へ渡すお金で、最終的には売買代金に充当されます。上乗せの負担ではありませんが、 ローン実行前なので現金が要ります。金額に法律上の決まりはなく、売買代金の5〜10%程度で合意されることが多いものの、 当事者の取り決め次第です。売主が宅地建物取引業者である場合は、代金の20%を超えてはならないと宅地建物取引業法で定められています。

売買契約書には印紙税がかかります。国税庁によれば、不動産の譲渡に関する契約書については軽減措置があり、 2014年4月1日から2027年3月31日までに作成されるものが対象です。軽減後の税額は、契約金額1,000万円超5,000万円以下で1万円、 5,000万円超1億円以下で3万円です。一方、住宅ローンの金銭消費貸借契約書はこの軽減措置の対象ではなく、 本則の税額が適用されます。同じ1,000万円超5,000万円以下でも2万円で、売買契約書の倍になります。

仲介手数料の上限は法令で決まっている

仲介する業者が受け取れる報酬には上限があります。国土交通省の告示は、売買の媒介について、 代金の額を区分してそれぞれに割合を掛け、合計した金額以内と定めています。以下は消費税等相当額を含んだ割合です。

代金の額の区分上限の割合3,000万円の場合
200万円以下の部分5.5%11.0万円
200万円超400万円以下の部分4.4%8.8万円
400万円を超える部分3.3%85.8万円
合計105.6万円

読み違えやすい2点

  • これは上限であって定価ではありません。媒介契約を結ぶ前に、報酬額について説明を受け合意することとされています
  • 代金が800万円以下の低廉な空家等については特例があり、媒介では依頼者の一方につき30万円の1.1倍にあたる33万円まで受け取れます

どの業者にどう依頼するかは住宅ローンの金利タイプと同じく、 契約前に条件を書面で確かめる場面です。依頼の形そのものは媒介契約で決まります。

引渡し時に精算するもの

登記にかかる登録免許税は、税率が登記の種類ごとに違います。国税庁の資料によれば、現在の税率は次のとおりです。 課税標準は売買価格ではなく固定資産税評価額で、抵当権の設定登記だけは債権金額が基準になります。

登記の種類本則軽減後適用期限
土地の売買による所有権の移転2.0%1.5%2029年3月31日
住宅用家屋の所有権の保存0.4%0.15%2027年3月31日
住宅用家屋の所有権の移転2.0%0.3%2027年3月31日
住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定0.4%0.1%2027年3月31日

家屋と抵当権の軽減を受けるには条件があります。床面積が50平方メートル以上であることなどを証する市区町村長の証明書を登記申請書に添付し、 新築または取得後1年以内に登記を受ける必要があります。登記そのものは司法書士へ依頼するのが一般的で、その報酬が別に発生します。

借入に伴う費用も引渡し日に精算されます。融資事務手数料は借入額の2.2%といった定率型と、数万円の定額型に分かれ、 定額型では別に保証料がかかることが多くなっています。あわせて火災保険料、 売主が先に納めた固定資産税・都市計画税の日割り精算金が加わります。 火災保険の補償範囲をどう決めるかは火災保険・地震保険の見直し方、 団体信用生命保険と手持ちの生命保険の重なりは団信は生命保険の代わりになるかで扱っています。

引渡し後に届く不動産取得税

不動産取得税は都道府県の税で、取得後しばらくしてから納税通知書が届きます。本則の税率は4%ですが、 国土交通省によれば住宅の取得については3%に軽減されており、適用期限は2027年3月31日です。 課税標準は固定資産税評価額で、住宅を新築した場合は課税標準から1,200万円が控除され、 中古住宅を取得した場合は新築時における控除額と同額が控除されます。 総務省の資料では、宅地を取得した場合に課税標準を2分の1とする特例も設けられています。

控除を適用した結果、税額がゼロになることも珍しくありません。ただし控除の適用には要件があり、 自治体によっては申告が必要です。通知書が届いてから慌てないよう、契約の段階で見込み額を確認しておくのが安全です。

3,000万円の中古住宅で並べてみる

仲介あり、売買代金3,000万円、住宅ローン2,500万円という前提で、金額が確定する費目だけを並べます。

費目計算金額
仲介手数料(上限)区分ごとの合計105.6万円
印紙税(売買契約書)軽減後の税額1万円
印紙税(ローン契約書)本則の税額2万円
登録免許税(抵当権設定)2,500万円×0.1%2.5万円
融資事務手数料(定率型の例)2,500万円×2.2%55万円

ここまでで166.1万円です。これに所有権移転登記の登録免許税、司法書士報酬、火災保険料、固定資産税等の精算金、 引渡し後の不動産取得税が加わります。評価額に連動する費目は物件ごとに変わるため、 金額を確かめるには固定資産税評価額を先に把握することが近道になります。 評価額は売主から取得できる固定資産税の課税明細で確認できます。

現金が足りないときの選択肢と代償

諸費用に充てる借入として、諸費用ローンがあります。物件価格に上乗せする形になるため返済総額は増え、 金利は住宅ローンより高く設定されるのが一般的です。借入残高が物件の担保価値を上回りやすくなり、 将来売却するときに売却代金だけでは残債を返しきれない状態を招きます。 売却時にかかる税の考え方は自宅を売ると税金はいくらかかるかで扱っています。

注文住宅や土地から取得する場合は、建物の完成前に着工金や土地代金の支払いが生じるため、 つなぎ融資が必要になることがあります。無担保のため金利は高めで、期間中の利息と事務手数料は建物代金とは別の出費です。 分割実行に対応した住宅ローンなら不要になることもあるので、資金の受け取り時期を先に金融機関へ確認しておきます。

この記事で扱わない範囲

まとめ|評価額を先に押さえ、現金の谷を埋める

諸費用は物件価格の外側にあり、しかも住宅ローンより前に現金で必要になる部分があります。 仲介手数料の上限、印紙税、登録免許税、不動産取得税はいずれも法令で率や額が決まっているため、 固定資産税評価額と借入額さえ分かれば、見込み額はかなりの精度で計算できます。

やることは3つです。契約前に固定資産税の課税明細で評価額を確かめる。費目を契約時・引渡し時・引渡し後に分けて、 それぞれの時点で必要な現金を書き出す。足りない分を借りるかどうかを、返済総額と手元資金の両方を見て決める。 この順で並べれば、諸費用は予測できない出費ではなく、計算できる費用になります。

参考資料

本記事は2026年8月14日時点の公開情報をもとに作成しています。 税率や軽減措置の適用期限、要件は法令の改正によって変わることがあり、報酬の上限や手数料の体系も改正や金融機関ごとの取り扱いによって異なります。 記載した金額や割合は法令および官公庁の公表資料に示されたもので、個別の取引に当てはめた結果を保証するものではありません。 実際の取引にあたっては、仲介する宅地建物取引業者、金融機関、および各制度の最新の案内をご確認ください。 本記事は制度と費用構造の一般的な説明であり、特定の物件や金融商品を推奨するものではありません。