水回りが古くなった、窓から冷気が入る、親のために手すりを付けたい。工事の必要は感じていても、見積もりの金額を見ると手が止まります。 そこで「補助金が使えるらしい」と聞いて調べ始めると、事業名が並び、締切が違い、申請する人も違う。結局よくわからないまま工事を進めてしまう人は少なくありません。

結論から書くと、リフォームの費用を軽くする仕組みは「国の補助事業」「介護保険の住宅改修」「税の軽減」の3つに分かれ、前の2つは工事の前に動かないと使えません。 この記事では国土交通省・環境省・経済産業省・厚生労働省・国税庁の公表資料をもとに、どの層に何があるのか、いつ動く必要があるのかを整理します。

リフォーム費用を軽くする支援を、国の補助事業・介護保険の住宅改修・税の軽減という3つの層に分け、それぞれの対象工事と申請の主体、動くべき時期を整理した図解
金額の大小より、いつ・誰が申請するのかで使えるかどうかが決まります。

この記事でわかること

  • 国の省エネ関連の補助事業はどう分かれ、いくらが上限か
  • 申請するのが施主ではなく工事事業者である事業があること
  • 介護保険で使える住宅改修の枠と、対象になる工事の種類
  • 所得税固定資産税で受けられる軽減の考え方
  • 契約前に確認しておくべき項目

結論|補助は工事の前、税は工事の後に効く

支援の入口は時期で二分できます。国の補助事業と介護保険の住宅改修は、着工する前に手続きが始まっていなければ対象外になります。 一方で所得税や固定資産税の軽減は、工事が終わったあとに申告して受けるものです。

つまり、工事の順番を決める段階で確認が必要なのは前者だけです。業者を選び、契約を結び、工事を始めてしまってから「補助金はどうなりましたか」と聞いても、そこから戻れる制度はほとんどありません。 逆に税の軽減は、工事内容を証明する書類さえ手元に残しておけば、申告の時期まで判断を持ち越せます。

支援は3つの層に分かれている

制度の名前を個別に覚えようとすると混乱します。誰が何のために出しているお金かで束ねると、自分に関係のある層がすぐに絞れます。

ねらい動く時期
国の補助事業住宅の省エネ性能を上げる工事を後押しする契約・着工の前
介護保険の住宅改修要介護・要支援の人が自宅で安全に暮らせるようにする着工の前
税の軽減一定の性能向上工事を行った住宅の税負担を下げる工事の完了後
自治体の補助地域の事情に応じた工事(耐震・空き家活用など)を支援する自治体の定めによる

自治体の補助は制度も金額も市区町村ごとに違い、年度の途中で受付が終わることもあります。住んでいる自治体の住宅担当課に確認するのが確実です。

国の補助|住宅省エネ2026キャンペーンの中身

国土交通省・経済産業省・環境省の3省が連携して実施しているのが「住宅省エネ2026キャンペーン」です。リフォームに関係するのは主に次の3事業で、いずれも住宅の断熱性能や設備の効率を上げる工事が対象になります。

事業対象となる工事補助の上限
みらいエコ住宅2026事業開口部や躯体の断熱改修、エコ住宅設備の設置など平成3年以前の住宅で100万円/戸、平成4年から平成28年の住宅で80万円/戸(いずれも義務基準相当まで改修した場合)
先進的窓リノベ2026事業ガラス交換、内窓設置、外窓交換、ドア交換1戸あたり100万円(1申請あたりの合計補助額が5万円以上であること)
給湯省エネ2026事業高効率給湯器の設置ヒートポンプ給湯機7万円/台、ハイブリッド給湯機10万円/台、家庭用燃料電池17万円/台

みらいエコ住宅2026事業では、断熱を次世代省エネ基準相当までとした場合の上限は50万円/戸、40万円/戸と下がります。到達させる性能によって金額が変わる設計です。 先進的窓リノベ2026事業の補助額は、製品の性能と大きさ、住宅の建て方に応じた定額の合計として計算されます。給湯省エネ2026事業の対象台数は戸建住宅で2台、共同住宅等で1台までです。

申請するのは施主ではない

これらの事業では、消費者と契約した登録事業者が申請の手続きを行います。裏を返せば、依頼しようとしている業者が登録事業者でなければ、その工事は補助の対象になりません。 見積もりを比べる段階で登録の有無を確認してください。また交付申請の受付は予算の上限に達した時点で終了します。締切の日付だけを見て安心せず、早い時期に動くほうが確実です。

介護保険の住宅改修|20万円の枠をどう使うか

要介護・要支援の認定を受けている人が自宅を改修する場合は、介護保険から住宅改修費が支給されます。厚生労働省の通知により、支給限度基準額は要介護状態区分にかかわらず20万円です。 このうち自己負担は所得に応じて1割から3割で、残りが支給されます。

対象となる工事は、手すりの取付け、段差の解消、滑りの防止や移動を円滑にするための床材の変更、引き戸等への扉の取替え、洋式便器等への便器の取替え、およびこれらに付帯して必要となる工事です。 原則として1人1回ですが、20万円の枠を使い切っていなければ複数回に分けて使えます。

手続きの流れと、着工前に何を出す必要があるかは親の介護とお金|使える公的制度と申請のタイミングで詳しく扱っているため、本記事では制度の位置づけにとどめます。 介護に伴う費用全体の見通しは親の介護費はいくらかかるのか|公的介護保険と家族負担の考え方を参照してください。

税の軽減|所得税と固定資産税の2本立て

一定の性能向上工事を行った場合、税の側からも負担が下がります。国土交通省によれば、対象となるのは耐震、バリアフリー、省エネ、三世代同居対応、長期優良住宅化、子育て対応の6種類の工事です。

制度内容適用期限
リフォーム促進税制(投資型)対象工事の標準的な費用をもとに計算した額を所得税額から控除する。控除額は最大60万円から80万円令和8年1月1日から令和10年12月31日まで
住宅ローン減税(増改築)償還期間10年以上のローンを使い、補助金を差し引いた工事費用が100万円以上の増改築が対象。年末残高の0.7%を最大10年間控除令和8年1月1日から令和12年12月31日まで
固定資産税の減額工事の種類に応じて、翌年度分の固定資産税が3分の1から3分の2相当額まで減額される令和8年4月1日から令和13年3月31日まで

どの制度でも共通するのが、工事内容を証明する増改築等工事証明書の存在です。国税庁は、控除の計算に使う標準的な費用の額はこの証明書で確認できると説明しています。 発行するのは建築士や登録住宅性能評価機関などで、工事後に依頼して取得します。合計所得金額の上限や工事費用の下限といった要件もあるため、申告の前に国税庁の最新の案内を確認してください。

住宅ローンを組んで工事をする場合、繰上返済と控除の関係は新築で購入したときと同じ考え方になります。判断の軸は住宅ローン控除と資産形成|繰上返済と投資はどちらを優先するべきかにまとめています。 なお、自宅を売却したときの譲渡所得の計算でリフォーム費用がどう扱われるかは自宅を売ると税金はいくらかかるか|譲渡所得の計算と3,000万円特別控除で扱っており、本記事では触れません。

契約の前に確認する5つのこと

見積もりを受け取ったら、金額の前に次の項目を確かめてください。あとから取り返しがつかない順に並べています。

確認項目見るポイント
事業者の登録依頼先が補助事業の登録事業者になっているか
着工の時期申請や事前の届出が済む前に工事を始めない段取りになっているか
補助の反映方法補助額が見積もりから差し引かれるのか、後から還元されるのか
証明書の手配税の軽減を使う場合、増改築等工事証明書を誰がいつ取得するか
自治体の制度市区町村独自の補助があるか、国の事業と併用できるか

補助金を受け取ると、税の計算では原則としてその分を差し引いた金額が基礎になります。住宅ローン減税の増改築が「補助金を差し引いた工事費用が100万円以上」と定められているのはその一例です。 補助と減税を単純に足し算して資金計画を立てないでください。

資金の出どころも先に決めておく価値があります。老後の生活費と分けて考える方法は老後資金は「いくら必要か」より「どう分けて準備するか」が重要に、住宅取得時にかかる費用全体の内訳は住宅購入の諸費用はいくらかかるか|税金・手数料の内訳と払う時期にまとめています。

まとめ|制度に工事を合わせない

補助金の上限額を見ると、それに合わせて工事の内容を膨らませたくなります。しかし補助は工事費の一部を負担するものであって、必要のない工事をしてまで取りに行くものではありません。 窓を替える必要がない家で窓を替えれば、補助を受けても手出しの金額は増えます。

順序としては、住まいの困りごとを先に挙げ、その解決に必要な工事を決め、そのうえで使える制度を当てはめます。そこで初めて、断熱の性能をどこまで上げるか、時期を年度内に寄せるかといった調整が意味を持ちます。

そして制度側で決まっているのは、ほとんどが「工事の前」に確認すべきことです。登録事業者かどうか、着工の前に申請が済むか、証明書を誰が手配するか。この3点を契約前に押さえておけば、使えたはずの支援を取り逃す事態は避けられます。

参考資料

本記事は2026年8月17日時点の公開情報をもとに作成しています。補助事業は予算の上限に達した時点で受付を終了し、税制の内容も改正されることがあるため、契約や申告の前に各機関の最新の公表資料をご確認ください。