親の年齢が上がると、病気や介護だけでなく、お金の管理も大きな課題になります。銀行口座、証券口座、保険、不動産、年金、公共料金、介護費の支払い。本人が元気なうちは当たり前にできていたことも、認知症などで判断能力が低下すると、家族だけでは動かせなくなることがあります。
大切なのは、認知症になってから慌てて手続きすることではありません。本人が判断できるうちに、何がどこにあり、誰がどの範囲で支援できるのかを話し合っておくことです。
この記事では、親が認知症になる前に考えたいお金の管理を、口座・保険・不動産・介護費・成年後見・任意後見の入口から整理します。
この記事でわかること
- 認知症前に整理したいお金の情報
- 家族による口座管理で注意すること
- 成年後見制度の基本
- 任意後見と法定後見の違い
- 家族信託や任意代理契約を検討する入口
結論:認知症前に「情報」と「権限」を分けて整理する
親のお金を管理する準備では、まず情報と権限を分けます。
情報とは、どの銀行に口座があるか、証券会社や保険会社はどこか、不動産の名義や固定資産税の通知はどこに届くか、年金や介護費はどの口座で動いているか、という一覧です。
権限とは、家族がどこまで代理できるか、金融機関でどの手続きができるか、判断能力が低下した後に誰が財産管理をするか、という仕組みです。
親が元気なうちは情報整理、判断能力が不十分になった後は権限の仕組みが重要になります。家族の善意だけで財産を動かせるとは考えないことが大切です。まず確認したいお金の一覧
最初から財産の金額を細かく聞く必要はありません。親が抵抗を感じる場合は、「もし入院や介護が必要になったときに困らないように、連絡先だけ整理したい」と伝えると話しやすくなります。
- 銀行口座、ゆうちょ、ネット銀行
- 証券口座、NISA、投資信託、株式
- 生命保険、医療保険、個人年金保険
- 不動産、固定資産税通知書、登記情報
- 年金の振込口座
- 介護費、施設費、医療費の支払い口座
- 公共料金、サブスク、カード決済
- 借入、保証、滞納税金の有無
一覧は、暗証番号やパスワードを共有するものではありません。どこに何があるか、どこへ連絡すればよいかを残すことが目的です。
子どもでも親の口座を自由に使えるわけではない
親子であっても、親の預金は親本人の財産です。家族が介護費や生活費を支払う目的であっても、本人の意思確認や委任、金融機関ごとの手続きが必要になります。
本人の判断能力が低下すると、金融機関での取引や解約、名義変更、投資商品の売却などが制限されることがあります。家族が通帳やカードを持っていても、本人のための支払いなのか、家族の都合なのかを後から説明できる状態にしておくことが大切です。
医療費や介護費の支払いが見込まれる場合は、元気なうちに金融機関へ代理手続きの方法を確認します。代理人カード、委任状、家族信託、成年後見、任意後見など、選択肢は金融機関や家庭の状況によって変わります。
成年後見制度とは
成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な人を保護するための制度です。家庭裁判所が成年後見人等を選任し、本人の財産管理や法律行為を支援します。
裁判所は、後見開始の手続について、精神上の障害によって判断能力が欠けているのが通常の状態の方を保護するための手続と案内しています。成年後見人は、本人の財産に関する法律行為を本人に代わって行うことができます。
ただし、成年後見制度は家族のために財産を自由に使う制度ではありません。本人の生活、医療、介護、財産保全のために使う制度です。相続対策や家族への贈与を自由に進めるための制度ではない点に注意します。
任意後見と法定後見の違い
後見には、大きく法定後見と任意後見があります。
法定後見は、本人の判断能力が不十分になった後に、家庭裁判所へ申立てを行い、成年後見人、保佐人、補助人などが選ばれる制度です。後見人に誰が選ばれるかは、家庭裁判所が本人の状況や財産の状況を踏まえて判断します。
任意後見は、本人に判断能力があるうちに、将来支援してもらう人と契約しておく制度です。判断能力が不十分になった後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任してから、任意後見人が事務を始めます。
任意後見の注意点
任意後見契約を結んだだけで、すぐに将来の代理が始まるわけではありません。実際に効力が生じるには、本人の判断能力が不十分になった後、家庭裁判所による任意後見監督人の選任が必要です。
家族信託や任意代理契約も選択肢になる
家庭によっては、成年後見や任意後見だけでなく、家族信託、任意代理契約、財産管理委任契約、見守り契約などを検討することがあります。
たとえば、不動産を管理したい、介護施設費用を預金から支払えるようにしたい、将来の生活費口座を整理したい、といった目的です。
ただし、これらは制度ごとにできること、できないこと、費用、税金、相続への影響が異なります。ネット上のひな形だけで決めず、司法書士、弁護士、税理士、公証役場などへ相談してください。
家族で話すときの順番
親のお金の話は、いきなり「認知症になったらどうするの」と切り出すと重くなりがちです。相続や介護の話より前に、生活を守るための事務整理として始めると進めやすくなります。
- 入院や介護が必要になったときの支払い口座を確認する
- 金融機関、保険会社、不動産、年金の連絡先を一覧にする
- 通帳や保険証券、固定資産税通知書の保管場所を確認する
- 金融機関で代理手続きの方法を確認する
- 必要に応じて任意後見や家族信託を専門家に相談する
家族のうち誰か一人だけが情報を抱えると、後でトラブルになることがあります。本人の意思を尊重しながら、兄弟姉妹など関係者にも必要な範囲で共有します。
相談先を分ける
親の認知症前のお金管理では、相談先を分けて考えます。
- 介護や生活支援: 地域包括支援センター、自治体
- 成年後見や任意後見: 家庭裁判所、司法書士、弁護士、公証役場
- 不動産管理や相続登記: 司法書士、不動産会社
- 税金や贈与、相続税: 税理士、税務署
- 口座や保険の手続き: 金融機関、保険会社
一つの相談先ですべてが解決するとは限りません。まずは家族で情報を整理し、目的ごとに相談先を選びます。
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まとめ
親が認知症になる前のお金管理では、まず銀行口座、証券口座、保険、不動産、年金、介護費、公共料金を一覧にします。大切なのは、金額をすべて聞き出すことではなく、必要なときに家族が連絡・支払い・相談できる状態にすることです。
判断能力が低下した後は、家族でも自由に財産を動かせないことがあります。成年後見、任意後見、家族信託、任意代理契約などは、それぞれ役割と限界が違います。
本人の意思を確認できるうちに、情報と権限を分けて整理しましょう。迷う場合は、地域包括支援センター、家庭裁判所、司法書士、弁護士、公証役場、金融機関などへ早めに相談してください。
免責事項
本記事は一般的な制度情報を整理したもので、個別の成年後見、任意後見、家族信託、任意代理契約、金融機関手続、税務判断を行うものではありません。具体的な手続きや判断は、家庭裁判所、司法書士、弁護士、税理士、公証役場、金融機関等へ確認してください。