親が75歳を過ぎ、免許更新の案内はがきが届いた。運転を続けてもらうのは心配だが、車がなくなると買い物や通院はどうするのか。 「そろそろ免許を返したら」と切り出す前に、返納の手続きと、車を手放したときのお金の出入りを家族で把握しておきたいと考える人は少なくありません。

先に結論を書くと、免許の自主返納そのものは無料で、本人確認に使える運転経歴証明書が1,150円で受け取れます。お金の差が出るのは、車の手放し方と任意保険の止め方です。 この記事では警察庁・警視庁・国税庁・日本損害保険協会の公表資料をもとに、75歳以上の更新でかかる費用、返納と運転経歴証明書の手続き、車を手放すときに戻るお金を順に整理します。

親の運転免許返納にかかわるお金を整理した図解。75歳以上の免許更新では認知機能検査が1,050円、高齢者講習が2時間で6,600円かかる。自主返納と同時に申請する運転経歴証明書は1,150円で、返納から5年以内なら後から申請できる。車を解体して永久抹消登録をすると、車検の残りが1か月以上ある場合に自動車重量税が残りの期間分だけ還付されることを並べている
手数料は警視庁の案内(東京都)の金額です。教習所で受ける検査・講習の手数料は教習所ごとに異なります。

この記事でわかること

  • 75歳以上の免許更新で受ける検査・講習と、その手数料
  • 返納のほかにある「サポートカー限定免許」という選択肢
  • 自主返納と運転経歴証明書の手続き・手数料・期限
  • 車を手放すときに戻ってくる税金と保険料
  • 任意保険の等級を家族に残す中断証明書の使い方

結論|返納の前に「車をどう手放すか」まで決めておく

免許の自主返納は、正式には「申請による運転免許の取消し」と呼ばれる手続きで、手数料はかかりません。返納と同時に運転経歴証明書を申請すると、東京都では1,150円で、運転免許証に代わる写真付きの証明書が交付されます。

場面手続きお金(東京都の例)
75歳以上の更新認知機能検査・高齢者講習1,050円+6,600円
返納するとき申請による取消し+運転経歴証明書返納は無料、証明書は1,150円
車を解体するとき永久抹消登録+重量税の還付申請車検の残り期間分が戻る
普通車を手放すとき抹消登録自動車税が翌月から月割で減る
任意保険をやめるとき中断証明書の発行等級を最長10年残せる

家計への影響が大きいのは後半の3行です。車を売るのか解体するのか、保険を解約するだけか中断証明書を取るのかで、戻るお金と将来の保険料が変わります。返納の話と一緒に、車の行き先まで決めておくと手続きの漏れを防げます。

75歳からの免許更新|検査と講習で7,650円

免許の更新期間が満了する日に75歳以上の人は、更新の前に認知機能検査と高齢者講習を受けます。警視庁は案内のはがきを「遅くとも有効期間満了日の6か月前までにはお手元に届くように」送るとしています。70歳から74歳の人は、認知機能検査がなく高齢者講習だけです。

検査・講習対象手数料(警察施設)
認知機能検査75歳以上の全員1,050円
高齢者講習(2時間)普通自動車を運転できる免許の人6,600円
高齢者講習(1時間)原付・二輪等のみの人、運転技能検査の対象者2,950円
運転技能検査過去3年間に一定の違反歴がある人教習所ごとに異なる

普通免許を持つ75歳以上の人なら、検査と講習で合計7,650円です。2022年5月13日からは、過去3年間に信号無視など11類型の違反歴がある人に運転技能検査が義務づけられ、合格しないと免許を更新できなくなりました。検査は不合格でも更新期間内なら受け直せますが、そのたびに手数料がかかります。

検査の結果だけで免許がなくなるわけではない

認知機能検査で「認知症のおそれあり」と判定されても、その場で免許が取り消されるわけではありません。医師の診断を受け、認知症と診断された場合に取消し等の対象になります。反対に、認知症でない旨の医師の診断書を出せば検査が免除されます。

返納のほかの選択肢|サポートカー限定免許

運転技能検査の義務化と同時に、運転できる車を「サポートカー」に限る条件付きの免許が設けられました。サポートカーは、衝突被害軽減ブレーキなど一定の要件を満たす安全運転支援装置を備えた普通自動車です。警察庁は、この制度を「より安全なサポートカーに限って運転を継続するという新たな選択肢」と説明しています。

申請は免許の更新時に併せて行えます。通院や買い物で車が欠かせない地域では、いきなり返納するより、限定免許に切り替えて車の買い替え時期に合わせる方法もあります。ただし限定免許でサポートカー以外の車を運転すると条件違反になり、罰則の対象です。車の買い替えにかかるお金の比べ方は車は現金・ローン・残価設定型のどれで買うか|総支払額で比べるで扱っています。

自主返納と運転経歴証明書|手数料は1,150円

免許の有効期間内であれば、運転免許試験場や警察署で返納できます。東京都では、返納と同時に運転経歴証明書を申請する場合の手数料が次のとおりです。2025年3月24日からマイナンバーカードに経歴を記録する「マイナ経歴証明書」も選べるようになりました。

申請するもの手数料
運転経歴証明書のみ1,150円
マイナ経歴証明書のみ900円
両方(2枚持ち)1,250円

持ち物は運転免許証(マイナ免許証も持っている場合は両方)と申請用写真1枚で、代理人による申請もできます。東京都では運転免許試験場なら即日交付、更新センターや警察署では受け取りまで約2週間です。運転経歴証明書は、返納や免許の失効から5年以内であれば後からでも申請できます。

運転経歴証明書は写真付きの身分証として、金融機関の窓口などで本人確認書類として扱われることがあります。また、自治体やバス・タクシー事業者が、提示した人に運賃の割引などを用意している例があります。内容は地域ごとに違うため、住んでいる都道府県の警察や市区町村の案内で確かめてください。

車を手放すと戻ってくるお金|重量税・自動車税・自賠責

免許を返納しても、車を持っている限り税金や保険料はかかり続けます。車を売るか解体するかで、戻ってくるお金が変わります。

自動車重量税は、車を解体して永久抹消登録(軽自動車は解体届出)をすると、車検の残り期間に応じて還付されます。国税庁が示す条件は、「車検残存期間が1か月以上あること。」と、抹消の申請と同時に還付申請書を出すことです。解体業者に任せる場合は、還付申請まで含めて手続きしてもらえるかを確かめておきます。

自動車税(種別割)は普通車なら抹消登録の翌月から月割で減額されますが、軽自動車税には月割の還付がありません。どちらも4月1日の所有者に1年分がかかるため、3月中に手放せば翌年度分はかかりません。税額と月割の仕組みは自動車税と軽自動車税はいくらか|排気量別の年額と13年超の重課で詳しく扱っています。

自賠責保険は、抹消登録をした後に保険会社へ解約を申し出ると、残りの期間に応じて保険料の一部が戻ります。手続きには抹消登録を証明する書類と自賠責保険の証明書が必要です。

任意保険は解約する前に中断証明書を取る

任意の自動車保険は、事故歴に応じた1〜20の「ノンフリート等級」で保険料が決まります。長年無事故の親は高い等級にいることが多く、ただ解約すると、その等級は使えなくなります。

車を廃車・譲渡して契約をやめるときに中断証明書を発行してもらうと、後で再び契約するときに中断前の等級を引き継げます。多くの保険会社では、中断時の等級が7等級以上であることが条件で、証明書は中断日の翌日から10年間有効です。発行を申し出る期限は保険会社によって13か月以内や5年以内などと違うので、解約の手続きと同時に頼むのが確実です。

中断前の等級は、再開するときに記名被保険者を配偶者や同居の親族にして引き継げる場合があります。将来、同居する子が車を持つ可能性があるなら、取っておいて損はありません。等級の仕組みは自動車保険の選び方|自賠責との違いとノンフリート等級の仕組みを参照してください。

車がなくなった後の移動費を見積もる

返納をためらう理由の多くは、移動手段がなくなる不安です。家族で話すときは、車を持ち続ける年間の費用と、タクシーやバスに置き換えたときの費用を並べてみると、感情論になりにくくなります。

車の年間費用は、自動車税(軽自動車なら年10,800円、2019年10月以降に登録した1.5リットル超2リットル以下の普通車なら年36,000円)に、任意保険料、車検費用の半分、燃料代、駐車場代を足したものです。保険料や燃料代は、通帳やカードの明細から実際の金額を拾うと正確です。この合計を月額に直し、通院や買い物で使うタクシー代と比べると、返納後の家計の姿がつかめます。

この記事で扱わない範囲

介護が必要になったときの通院・移動の支援は、介護保険や自治体の福祉サービスの対象になることがあります。介護の公的制度と申請の時期は親の介護とお金|使える公的制度と申請のタイミングで扱っています。

まとめ|返納・車・保険の3つを同じ日に片づける

免許の自主返納は無料で、運転経歴証明書は東京都で1,150円です。75歳以上の更新では検査と講習で7,650円がかかり、違反歴があれば運転技能検査も加わります。続けるか、サポートカーに限るか、返納するかを、更新の案内が届いた時点で家族と話しておくと選択肢が広がります。

返納すると決めたら、車の解体なら重量税の還付申請、普通車なら抹消登録による自動車税の月割減額、任意保険なら中断証明書の発行を、同じ時期にまとめて済ませましょう。

よくある質問

Q. 運転免許の自主返納に手数料はかかりますか?
返納(申請による運転免許の取消し)そのものに手数料はかかりません。返納と同時に運転経歴証明書を申請する場合は、東京都では1,150円、マイナンバーカードに記録するマイナ経歴証明書のみなら900円、両方なら1,250円です。金額は都道府県の案内で確認してください。
Q. 運転経歴証明書は返納した後からでも申請できますか?
返納や免許の失効から5年以内であれば、後からでも申請できます。返納のときに受け取った取消通知書などが必要になる場合があるので、捨てずに保管しておきましょう。代理人による申請ができる都道府県もあります。
Q. 車を廃車にすると税金は戻ってきますか?
車を解体して永久抹消登録(軽自動車は解体届出)をし、車検の残り期間が1か月以上ある場合は、自動車重量税が残りの期間分だけ還付されます。抹消の申請と同時に還付申請書を出す必要があります。普通車の自動車税は抹消登録の翌月から月割で減額されますが、軽自動車税には月割の還付がありません。
Q. 親の自動車保険の等級を子どもが引き継げますか?
車を手放して契約をやめるときに中断証明書を発行してもらうと、再開時に記名被保険者を配偶者や同居の親族にして等級を引き継げる場合があります。多くの保険会社で中断時の等級が7等級以上であることが条件で、証明書は10年間有効です。条件は契約先で確認してください。

参考資料

本記事は2026年10月15日時点の公開情報をもとに作成しています。検査・講習・証明書の手数料は都道府県ごとに異なることがあり、改定されることもあります。 実際の手続きは、お住まいの都道府県警察や運転免許センター、契約先の保険会社でご確認ください。