病気やけがで、前のようには働けなくなった。そんなとき、現役世代でも受け取れる公的年金が障害年金です。
自動では始まらず、自分で請求する必要があるため、請求されないまま終わることも多いんです。確かめる順番は、金額より先に「初診日」です。
この記事で分かること
- 初診日・障害認定日・保険料納付の3つの条件と、初診日の制度で変わる等級
- 令和8年度の年金額と、2級の受取額の計算例
- 請求の仕方で変わる受け取り開始月と、5年の時効
- 働きながらの受給、他の年金との関係、非課税と保険料免除の扱い
結論|2級なら障害基礎年金で年847,300円。会社員だった人は上乗せがある
令和8年度の障害基礎年金は2級で年847,300円、1級で年1,059,125円(昭和31年4月2日以後生まれ)。初診日に厚生年金に入っていれば障害厚生年金が上乗せされ、3級でも受け取れます。例えば2級・報酬比例の年金額600,000円・配偶者と子1人なら、合計は年1,934,900円です。
受給の3つの条件|初診日・障害の状態・保険料
その病気やけがで初めて医師の診療を受けた日を初診日といいます。この日にどの制度へ加入していたかで、年金の種類が決まります。
| 初診日に加入していた制度 | 受け取れる年金 | 対象になる等級 |
|---|---|---|
| 国民年金(自営業・専業主婦など) | 障害基礎年金 | 1級・2級 |
| 厚生年金(会社員・公務員など) | 障害厚生年金 +1級・2級なら障害基礎年金も | 1級・2級・3級 |
3級があるのは厚生年金だけです。同じ状態でも、初診日に会社員だった人は3級を受け取れ、自営業だった人は対象になりません。
2つ目の条件は、障害認定日に等級表の状態にあることです。障害認定日は原則初診日から1年6か月を過ぎた日。それより前に症状が固定し、治療の効果が期待できなくなれば、その日が認定日です。
3つ目は保険料です。初診日がある月の2か月前までの被保険者期間のうち、納付済期間と免除期間を合わせて3分の2以上あることが原則。初診日が令和18年3月末日までにあれば、初診日に65歳未満で直近1年間に未納がないことで満たす特例もあります。20歳前で年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件は問われません。未納期間の扱いは国民年金の未納期間は後から埋められるかで紹介しています。
対象になる病気と、等級の目安
対象は手足の障害だけではありません。日本年金機構は、眼・聴覚・肢体などの外部障害、統合失調症・双極性障害・認知障害・てんかん・知的障害・発達障害などの精神障害、心疾患・腎疾患・糖尿病・がんなどの内部障害の3つに分けています。
| 等級 | 状態の目安 |
|---|---|
| 1級 | 他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできない状態 |
| 2級 | 必ずしも介助は必要でないが、日常生活が極めて困難で、労働により収入を得ることができない状態 |
| 3級 (厚生年金のみ) | 日常生活にはほとんど支障がないが、労働が著しい制限を受ける状態 |
いくら受け取れるか(令和8年度)
障害基礎年金
| 等級 | 年額(昭和31年4月2日以後生まれ) | 年額(昭和31年4月1日以前生まれ) |
|---|---|---|
| 1級 | 1,059,125円 | 1,056,125円 |
| 2級 | 847,300円 | 844,900円 |
1級は2級の1.25倍。定額なので収入に関係なく同じ金額です。これに子の加算が付きます。対象は18歳になった後の最初の3月31日までの子か、20歳未満で障害等級1級・2級の状態にある子。2人目まで1人243,800円、3人目以降は1人81,300円です。
障害厚生年金
| 等級 | 金額 | 配偶者の加給年金 |
|---|---|---|
| 1級 | 報酬比例の年金額 × 1.25 | 243,800円 |
| 2級 | 報酬比例の年金額 | 243,800円 |
| 3級 | 報酬比例の年金額 (最低保障 635,500円) | なし |
報酬比例の年金額は、これまでの標準報酬をもとに計算します。加入期間が300月(25年)未満なら300月とみなすので、若くして障害を負っても極端に少なくはなりません。3級の最低保障額は、昭和31年4月1日以前生まれなら633,700円。配偶者の加給年金は65歳未満の配偶者が対象です。
合計するといくらか(2級の例)
結論の例の内訳です。
| 内訳 | 年額 |
|---|---|
| 障害基礎年金(2級) | 847,300円 |
| 子の加算(1人) | 243,800円 |
| 障害厚生年金(2級) | 600,000円 |
| 配偶者の加給年金額 | 243,800円 |
| 合計 | 1,934,900円 |
初診日に国民年金だけだった場合は、障害基礎年金と子の加算のみで1,091,100円。加入制度の差が、そのまま金額の差になります。
3級より軽い障害が残ったときは、一時金の障害手当金があります。初診日から5年以内に症状が固定していることなどが条件で、額は報酬比例の年金額の2倍、最低保障額は1,271,000円(昭和31年4月1日以前生まれは1,267,400円)。老齢厚生年金を受け取っている人などは対象外です。
いつから受け取れるか|請求の仕方と手続きの流れ
| 請求の種類 | どんなとき | 受け取り開始 |
|---|---|---|
| 障害認定日による請求 | 障害認定日に等級に該当していた | 障害認定日の翌月分から |
| 事後重症による請求 | 認定日には該当せず、その後悪化した | 請求日の翌月分から |
事後重症による請求はさかのぼりません。遅れた月の分は受け取れないんです。認定日による請求は、何年たっていても認定日当時と請求日前3か月以内の診断書があればできますが、5年より前の分は時効です。請求書は原則、65歳の誕生日の前々日までに出します。
年金事務所などで納付要件と診断書などの書類を確かめ、「年金請求書」を出します。3か月程度で年金証書が届き、約1〜2か月後から偶数月に2か月分ずつ振り込まれます。提出先は年金事務所・街角の年金相談センターで、障害基礎年金は市区町村の窓口でも出せます。
最初の病院が廃院していても、合理的に推定できる書類で初診日が認められることがあります。受給が決まった後も、誕生月の3か月前の月末に障害状態確認届(診断書)が届き、誕生月の末日までに出します。悪化したときの額の改定請求は原則65歳の誕生日の前々日までですが、過去に障害基礎年金の受給権を持ったことがある人は65歳以降もできます。
働きながら受け取れるか|他の給付・年金との関係
収入が多いと年金が止まる在職老齢年金の仕組みは、障害年金にはありません。例外は20歳前の傷病による障害基礎年金で、保険料を納めていないことを踏まえて所得制限があります。
20歳前傷病の障害基礎年金の所得制限
- 前年所得が4,918,000円を超えると全額支給停止
- 3,858,000円を超えると2分の1が支給停止
- 扶養親族がいる場合は1人につき38万円(老人控除対象配偶者・老人扶養親族は48万円、特定扶養親族等は63万円)が加算される
- 支給停止となる期間は10月分から翌年9月分まで
日本年金機構の2026年10月1日更新の案内による、扶養親族等がいない場合の金額です。
海外居住や矯正施設への入所でも全額停止され、労災保険などとの調整もあります。また障害の程度は診断書で定期的に確かめられ、就労の状況が判断材料になることもあるので、「絶対に止まらない」とは考えないでください。
傷病手当金と同じ傷病で障害厚生年金をさかのぼって受けると、傷病手当金が調整され返還が生じることもあります。
公的年金は「一人一年金」が原則です。ただし65歳以後は、障害基礎年金と自分の老齢厚生年金、または障害基礎年金と遺族厚生年金を合わせて受け取れます。障害基礎年金と老齢基礎年金の両方は受け取れず、組み合わせを選ぶには年金受給選択申出書を出します。遺族年金を受けている人も同じ考え方です。
税金と保険料の扱い
障害年金は所得税・復興特別所得税が非課税で、源泉徴収票も届きません。この点は年金にかかる税金と社会保険料で扱う老齢年金と大きく違います。
障害基礎年金(2級以上)を受けている間は、国民年金保険料が法定免除になります。自動ではなく「国民年金保険料免除事由(該当・消滅)届」の提出が必要で、認定された日を含む月の前月分から免除されます。
所得が一定以下なら障害年金生活者支援給付金もあります。令和8年度は1級で月額7,025円、2級で月額5,620円。前年所得が「4,918,000円+扶養親族の数×38万円」以下であることが要件です(令和8年10月分から令和9年9月分までは令和7年の所得で判定)。
ここは誤解しやすいポイント
- 初診日は、転院していても「いちばん最初に診療を受けた日」です。退職後に悪化しても、初診日が会社員時代なら障害厚生年金の対象になり得ます
- 納付要件は初診日の前日で判定します。診断の後に未納分を納めても反映されないので、健康なうちに手を打っておきましょう
- 身体障害者手帳の等級と障害年金の等級は別物です。手帳がないから対象外、手帳が何級だから年金も同じ級、という関係にはなりません
- 法定免除の期間は、将来の老齢基礎年金の計算で平成21年4月以降の期間は1か月を2分の1として扱います。その分将来の年金は減るので、余裕があれば追納も選択肢です
まとめ|まず初診日、次に納付要件、最後に金額
- 初診日に厚生年金なら1〜3級、国民年金なら1・2級が対象
- 納付要件は初診日の前日で判定され、後から納めても間に合わない
- 請求しなければ始まらない。該当しそうなら早めに年金事務所へ
よくある質問
- Q. 障害年金は手足の障害がないと受け取れませんか?
- 手足などの外部障害だけが対象ではありません。統合失調症、双極性障害、てんかん、知的障害、発達障害といった精神障害や、呼吸器疾患、心疾患、腎疾患、肝疾患、糖尿病、がんなどの内部障害も、障害の状態によって対象になります。病名ではなく、生活や仕事にどの程度の制限が出ているかで判断されます。
- Q. 障害者手帳を持っていないと請求できませんか?
- 障害者手帳の有無や等級と、障害年金の等級は別の制度です。手帳を持っていなくても請求でき、逆に手帳が何級だから年金も同じ級になる、という関係でもありません。障害年金は年金独自の障害認定基準で判定されます。
- Q. 働きながら障害年金を受け取れますか?
- 障害年金には、老齢厚生年金の在職老齢年金のような賃金による支給停止の仕組みはありません。ただし20歳前の傷病による障害基礎年金には所得制限があり、扶養親族等がいない場合、前年所得が4,918,000円を超えると全額、3,858,000円を超えると2分の1が支給停止となります(日本年金機構の2026年10月1日更新の案内による)。また、障害の状態は診断書によって定期的に確認されます。
- Q. 障害認定日から何年も経っていますが、今から請求できますか?
- 請求できます。障害認定日当時の障害の状態がわかる診断書と、請求日前3か月以内の状態がわかる診断書をそろえることで、さかのぼって請求できる場合があります。ただし5年より前の年金は時効により受け取れません。なお、認定日には該当せず後から悪化した場合の事後重症による請求は、請求日の翌月分からとなり、さかのぼりません。
- Q. 障害年金に税金はかかりますか?
- 障害年金は所得税および復興特別所得税の課税対象ではなく、非課税です。老齢年金と異なり、公的年金等の源泉徴収票も送付されません。また、障害基礎年金(2級以上)を受けている間は、届出により国民年金保険料が法定免除になります。ただしその期間は将来の老齢基礎年金の計算で減額されるため、追納の可否もあわせて確認してください。
参考資料
- 日本年金機構「障害年金」
- 日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」
- 日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」
- 日本年金機構「20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等」
- 日本年金機構「障害年金ガイド 令和8年度版」(PDF)
- 日本年金機構「障害年金生活者支援給付金の概要」
- 日本年金機構「国民年金保険料の法定免除制度」
本記事は2026年8月5日時点の公開情報をもとに作成しています。20歳前傷病の所得制限と障害年金生活者支援給付金の所得要件は、2026年11月1日に日本年金機構の案内(2026年10月1日更新)で確認して改めました。障害年金ガイド(PDF)は改定前の金額のため、年金額の出典としてのみ掲げています。 年金額は年度ごとに改定され、受給の可否は個別の事情によって判断されます。 実際の請求にあたっては、日本年金機構の最新の案内をご確認のうえ、年金事務所または街角の年金相談センターにご相談ください。