公的年金は老後に受け取るものだと思われがちですが、それだけではありません。 病気やけがで生活や仕事に制限が出たとき、現役世代でも受け取れるのが障害年金です。

「障害」という言葉から手足の障害を思い浮かべる人が多いのですが、対象はそれだけではありません。 がん、糖尿病、心疾患、腎疾患、うつ病や統合失調症といった精神の病気も、状態によっては対象になります。 それでも請求されないまま終わるケースが多いのは、制度が自動で始まらず、自分で請求する必要があるからです。

障害年金の受給条件を初診日、障害認定日、保険料納付要件、等級と金額の順に整理した図解
障害年金は「初診日にどの制度へ加入していたか」から確認します。

この記事でわかること

  • 初診日・障害認定日・保険料納付という3つの条件がそろって初めて対象になること
  • 初診日に加入していた制度で、受け取れる等級と金額が変わること
  • 令和8年度の年金額と、3級・障害手当金の最低保障額
  • 請求の仕方によって受け取り開始月が変わること
  • 傷病手当金・老齢年金との調整、非課税や保険料免除の扱い

結論|「初診日にどの制度に入っていたか」で受け取れる年金が決まる

障害年金でいちばん重要なのは、症状の重さより先に、その病気やけがで初めて医師の診療を受けた日(初診日)です。 この日にどの年金制度へ加入していたかで、受け取れる年金の種類が決まります。

初診日に加入していた制度受け取れる年金対象になる等級
国民年金(自営業・専業主婦など)障害基礎年金1級・2級
厚生年金(会社員・公務員など)障害厚生年金
+1級・2級なら障害基礎年金も
1級・2級・3級

ここに実務上の大きな差があります。3級があるのは厚生年金だけです。 同じ状態でも、初診日に会社員だった人は3級の障害厚生年金を受け取れる一方、自営業だった人は対象になりません。

ポイント

初診日は、転院していても「いちばん最初に診療を受けた日」です。 退職後に症状が悪化した場合でも、初診日が会社員時代であれば障害厚生年金の対象になり得ます。 まず初診日がいつだったかを特定してください。

受給には3つの条件がすべて必要

条件内容
初診日要件初診日に、対象となる年金制度に加入していたこと
障害状態の要件障害認定日に、障害等級表に定める状態にあること
保険料納付要件初診日の前日時点で、保険料を一定以上納めていること

障害認定日は、原則として初診日から1年6か月を過ぎた日です。 ただし1年6か月以内に症状が固定し、治療の効果が期待できない状態になった場合は、その日が障害認定日になります。

納付要件は「初診日の前日」で判定される

保険料納付要件は、初診日がある月の2か月前までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と免除期間を合わせた期間が3分の2以上あることが原則です。

初診日が令和18年3月末日までにある場合は、初診日に65歳未満で、直近1年間に未納がなければ要件を満たすという特例もあります。

注意したいのは、この判定が「初診日の前日」時点で行われることです。 診断を受けてから慌てて未納分を納めても、納付要件の判定には反映されません。 未納が気になる人ほど、健康なうちに手を打っておく意味があります。 未納期間の扱いは「国民年金の未納期間は後から埋められるか」で整理しています。

なお、20歳前で年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件は問われません。

対象になるのは手足の障害だけではない

日本年金機構は、対象となる病気やけがを大きく3つに分けています。

区分主な例
外部障害眼、聴覚、音声・言語機能、肢体(手足など)の障害
精神障害統合失調症、双極性障害、認知障害、てんかん、知的障害、発達障害など
内部障害呼吸器疾患、心疾患、腎疾患、肝疾患、血液・造血器疾患、糖尿病、がんなど

もう一つ誤解が多いのが、身体障害者手帳の等級と障害年金の等級は別物だという点です。 手帳を持っていないから対象外、手帳が何級だから年金も同じ級、という関係にはなりません。判定は年金独自の基準で行われます。

障害等級のおおよその目安

等級状態の目安
1級他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできない状態
2級必ずしも介助は必要でないが、日常生活が極めて困難で、労働により収入を得ることができない状態
3級
(厚生年金のみ)
日常生活にはほとんど支障がないが、労働が著しい制限を受ける状態

いくら受け取れるか(令和8年度)

障害基礎年金

等級年額(昭和31年4月2日以後生まれ)年額(昭和31年4月1日以前生まれ)
1級1,059,125円1,056,125円
2級847,300円844,900円

1級は2級の1.25倍です。障害基礎年金は定額なので、収入が多かった人も少なかった人も同じ金額になります。

これに子の加算が付きます。対象は18歳になった後の最初の3月31日までの子、または20歳未満で障害等級1級・2級の状態にある子です。 加算額は2人目まで1人につき243,800円、3人目以降は1人につき81,300円です。

障害厚生年金

等級金額配偶者の加給年金
1級報酬比例の年金額 × 1.25243,800円
2級報酬比例の年金額243,800円
3級報酬比例の年金額
(最低保障 635,500円)
なし

報酬比例の年金額は、これまでの標準報酬をもとに計算されます。 ただし加入期間の合計が300月(25年)未満の場合は300月とみなして計算されるため、若くして障害の状態になった人でも極端に少額にはなりません。

3級の最低保障額は635,500円(昭和31年4月1日以前生まれは633,700円)です。配偶者の加給年金額は65歳未満の配偶者が対象で、3級には付きません。

合計するといくらか(2級の例)

たとえば、初診日に会社員で、障害等級2級、報酬比例の年金額が年600,000円、65歳未満の配偶者と対象になる子が1人いる場合は次のようになります。

内訳年額
障害基礎年金(2級)847,300円
子の加算(1人)243,800円
障害厚生年金(2級)600,000円
配偶者の加給年金額243,800円
合計1,934,900円

同じ2級でも、初診日に国民年金だけだった場合は障害基礎年金と子の加算のみとなり、合計は1,091,100円です。 初診日の加入制度による差が、そのまま金額の差になります。

障害手当金(一時金)

3級より軽い障害が残った場合には、障害手当金という一時金の制度があります。 初診日から5年以内に症状が固定していることなどが条件で、額は報酬比例の年金額の2倍、最低保障額は1,271,000円(昭和31年4月1日以前生まれは1,267,400円)です。

ただし、老齢厚生年金を受け取っている人などは障害手当金を受け取れません。

いつから受け取れるか|請求の仕方で開始月が変わる

請求の種類どんなとき受け取り開始
障害認定日による請求障害認定日に等級に該当していた障害認定日の翌月分から
事後重症による請求認定日には該当せず、その後悪化した請求日の翌月分から

この違いは金額に直結します。事後重症による請求はさかのぼりません。 請求が1か月遅れれば、その1か月分は受け取れません。該当する状態になったら早く請求するほど有利です。

一方、障害認定日から何年も経っている場合でも、認定日当時の障害の状態がわかる診断書と、請求日前3か月以内の診断書をそろえれば請求できます。 ただし5年より前の分は時効で受け取れません

なお、請求書は原則として65歳の誕生日の前々日までに提出する必要があります。

働きながら受け取れるか

老齢厚生年金には、働いて一定以上の収入があると年金が止まる在職老齢年金の仕組みがあります。 障害年金には、これと同じ賃金による支給停止の仕組みは設けられていません。

ただし例外があります。20歳前の傷病による障害基礎年金には、保険料を納めていないことを踏まえた所得制限があります。

20歳前傷病の障害基礎年金の所得制限

  • 前年所得が4,794,000円を超えると全額支給停止
  • 3,761,000円を超えると2分の1が支給停止
  • 支給対象期間は10月分から翌年9月分まで

令和8年4月時点、扶養親族等がいない場合の金額です。

また、海外に居住したときや矯正施設に入所したときも全額支給停止となります。 労災保険の給付や労働基準法による障害補償との調整もあります。

所得制限がない場合でも、障害の程度は診断書によって定期的に確認されます。就労の状況が判断材料になることもあるため、「働いていれば必ず止まる/絶対に止まらない」と単純化しないでください。

傷病手当金・老齢年金との関係

傷病手当金との調整

健康保険の傷病手当金を受けていた期間について、同じ病気やけがで障害厚生年金をさかのぼって受給できることになった場合は、受給済みの傷病手当金が調整されます。 返還が生じることもあるため、両方に該当しそうなときは早めに確認してください。

老齢年金・遺族年金との関係

公的年金は「一人一年金」が原則です。65歳前に支給事由の異なる2つ以上の年金を受けられるようになったときは、どれか1つを選びます。

ただし65歳以後は例外があり、障害基礎年金と自分の老齢厚生年金、または障害基礎年金と遺族厚生年金を合わせて受け取ることができます。 障害基礎年金と老齢基礎年金の両方を受け取ることはできません。組み合わせを選ぶには年金受給選択申出書の提出が必要です。

遺族年金を受けている方が障害基礎年金を受けられるようになったときも同じ考え方です。

税金と保険料の扱い

障害年金は所得税・復興特別所得税が非課税です。老齢年金と違い、公的年金等の源泉徴収票も送付されません。 この点は「年金にかかる税金と社会保険料」で扱う老齢年金の手取りとは大きく異なります。

さらに、障害基礎年金(2級以上)を受けている間は、国民年金保険料が法定免除になります。自動ではなく「国民年金保険料免除事由(該当・消滅)届」の提出が必要で、認定された日を含む月の前月分から免除されます。

見落としやすい点

法定免除を受けた期間は、将来の老齢基礎年金の計算では平成21年4月以降の期間で1か月を2分の1として扱われます。 保険料の負担は消えますが、その分、将来の老齢基礎年金は減ります。追納もできるため、家計に余裕があるなら選択肢として押さえておいてください。

なお、所得が一定以下の場合は障害年金生活者支援給付金も受け取れます。令和8年度は障害等級1級で月額7,025円、2級で月額5,620円です。 前年所得が「4,794,000円+扶養親族の数×38万円」以下であることが要件です。

受給が決まった後も確認がある

障害年金は一度決まれば終わりではありません。障害の状態に応じて、障害状態確認届(診断書)が誕生月の3か月前の月末に送られてきます。 医師に記載してもらい、誕生月の末日までに提出します。

逆に、症状が悪化した場合は年金額の改定を請求できます。請求書は65歳の誕生日の前々日までに提出するのが原則ですが、 過去に一度でも障害基礎年金の受給権を持ったことがある人(2級以上に該当したことがある人)は、65歳を過ぎても改定を請求できます。

請求手続きの流れ

  1. 初診日がいつか、そのとき何の制度に加入していたかを確認する
  2. 年金事務所などで保険料納付要件と必要書類(診断書など)を確認する
  3. 「年金請求書」を提出する
  4. 提出から3か月程度で年金証書・年金決定通知書が届く
  5. 年金証書が届いてから約1〜2か月後に振り込みが始まる(偶数月に2か月分)

提出先は、障害基礎年金なら年金事務所・街角の年金相談センター・市区町村の窓口、障害厚生年金と障害手当金なら年金事務所・街角の年金相談センターです。

最初に受診した病院が廃院になっているなど、初診日を証明する書類が用意できないこともあります。 その場合でも、初診日を合理的に推定できる書類によって本人の申し立てた日が初診日と認められることがあります。書類がそろわないという理由だけであきらめないでください。

まとめ|まず初診日、次に納付要件、最後に金額

障害年金は、老後を待たずに受け取れる公的年金です。対象は手足の障害に限らず、がんや糖尿病、精神の病気も状態によって含まれます。

確認の順番は、金額からではありません。初診日はいつか、そのとき何の制度に加入していたか、初診日の前日時点で納付要件を満たしているか。この3つがそろって初めて金額の話になります。

そして請求しなければ支給は始まりません。事後重症による請求はさかのぼらないため、1か月の遅れがそのまま受け取れない1か月になります。 該当しそうだと感じた時点で、年金事務所に相談してください。

参考資料

本記事は2026年8月5日時点の公開情報をもとに作成しています。 年金額は年度ごとに改定され、受給の可否は個別の事情によって判断されます。 実際の請求にあたっては、日本年金機構の最新の案内をご確認のうえ、年金事務所または街角の年金相談センターにご相談ください。