夏の検針票を見て、去年より高いと感じた。ニュースでは電気やガスの会社を変えれば安くなると言われているが、 勧誘の電話がかかってくると身構えてしまうし、手続きで家の工事が要るのか、停電するのかも分からない。 そのまま何もせずに引き出しへ入れてしまった、という方は少なくありません。

結論から書くと、見直しの入口は会社選びではなく、いま届いている検針票の内訳を読むことです。 内訳のうち、会社を変えても動かない部分と動く部分ははっきり分かれています。 この記事では、資源エネルギー庁と電力・ガス取引監視等委員会の公表資料をもとに、 何が下がりうるのか、切り替えで実際に何が起きるのかを順に整理します。安さの比較ランキングは扱いません。

電気とガスの料金見直しを、検針票の確認から内訳の把握、再エネ賦課金の位置づけ、年間総額での比較、契約条件の確認、切り替え手続きまで6段階に分け、それぞれで見ることと判断の目安を並べた図解
会社を選ぶ前に、いまの契約で何にいくら払っているかを確かめます。

この記事でわかること

  • 電気料金の内訳のうち、会社を変えても下がらない部分
  • 再エネ賦課金が家計にいくら乗っているか
  • 切り替えで工事や停電が起きるのかどうか
  • 都市ガスの切り替えが電気と違う点
  • 比べるときに見落としやすい契約条件
  • 訪問販売や電話勧誘への対処と相談先

結論|下げられるのは電力量料金の部分だけ

電気料金は複数の要素の合計で、会社を変えて動くのは基本料金と電力量料金の単価です。 そこに加わる再生可能エネルギー発電促進賦課金は国が決める単価で、どの会社と契約していても同じです。 燃料費調整の仕組みも、輸入燃料の価格を反映させる点はどの会社にも共通しています。

したがって現実的な判断は、年間の使用量を把握したうえで、電力量料金の単価とセット割の条件を年額で比べ、 解約金の有無を確認してから決めるという順序になります。 月額の見かけの差ではなく、1年分の総額で比べてください。使用量は季節で大きく変わるため、 夏や冬の1か月だけを見て判断すると、実際には得にならない選び方をしてしまいます。

電気とガスの料金は何でできているか

一般的な家庭向けの電気料金は、契約容量に応じた基本料金または最低料金、使った量に応じた電力量料金、 燃料価格の変動を反映する燃料費調整額、そして再生可能エネルギー発電促進賦課金を合計して請求されます。 都市ガスも構造は似ており、基本料金と従量料金に、原料費調整の分が加減されます。

このうち会社ごとの競争が働くのは、基本料金と従量部分の単価、そして各社が独自に設けている割引です。 検針票を見るときは、合計額ではなく、この2つの行がいくらかを先に確かめてください。

総務省の家計調査によれば、二人以上の世帯の2025年平均の光熱・水道支出は月24,547円で、 前年から名目で6.2パーセント、物価の影響を除いた実質でも2.5パーセント増えています。 金額としては小さくない固定的支出であり、家計全体のどこから手をつけるかを整理したい場合は 家計改善で先に見直すべき固定費|投資の前に整えるお金の土台もあわせてご覧ください。

再エネ賦課金は会社を変えても下がらない

再生可能エネルギー発電促進賦課金は、再生可能エネルギーの買取費用を電気の使用量に応じて広く負担する仕組みで、 単価は毎年度、経済産業大臣が設定します。2026年3月19日の公表によると、2026年度の単価は 「1kWh当たり4.18円」で、2026年5月の検針分から2027年4月の検針分まで適用されます。

同じ公表資料は、1か月の電力使用量が400kWhの需要家モデルで 「月額1,672円、年額20,064円」の負担になると示しています。年間で2万円を超える金額が、 どの小売電気事業者と契約していても同じように上乗せされている、ということです。

押さえておきたい点

「電気代が高いのは電力会社のせい」とは限りません。賦課金と燃料費調整の部分は会社を変えても変わらないため、 切り替えで動くのは請求額全体ではなく、その一部です。期待値を先に正しておくと、 切り替え後に「思ったほど下がらなかった」という失望を避けられます。使用量そのものを減らす工夫も、同じだけ効きます。

切り替えで実際に起きること、起きないこと

電気の小売業への参入は2016年4月1日に全面自由化され、資源エネルギー庁の説明では 「家庭や商店も含む全ての消費者が、電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになりました」とされています。 電力・ガス取引監視等委員会によれば、小売電気事業の登録件数は2026年3月末時点で808件です。

心配されやすい点については、同庁が明確に否定しています。工事については 「今ある送配電網を使うので新たに電線を引くことにはなりません」とされ、 電気そのものの品質や停電の可能性も、どの会社から買っても同じです。 手続きは原則として切り替え先の事業者に申し込むだけで、いまの会社への解約連絡も通常は不要です。

住まいの形による制約はあります。賃貸住宅でも、電力会社との契約名義が本人であれば切り替えられます。 一方、マンションで管理組合が建物全体の電気をまとめて購入している場合は、規約で制限されることがあるため、 管理組合への確認が先になります。

都市ガスの切り替えは電気と少し違う

都市ガスの小売全面自由化は2017年4月1日で、電力より1年遅れて始まりました。 ガス小売事業の登録件数は2026年3月末時点で1,330件です。手続きの流れは電気と似ていますが、 切り替えにかかる期間には目安が示されています。

確認したいこと都市ガスの場合
自由化の開始2017年4月1日
登録事業者数1,330件(2026年3月末時点)
切り替えまでの期間大手4社の管内では申込みから5営業日以降の定例検針日が原則
ガスメーターの取替え都市ガス事業者間の切替えでは不要
ガス器具の取替え都市ガス事業者からの切替えでは不要
供給の一時停止都市ガス事業者間の切替えだけなら停止しない

電力・ガス取引監視等委員会の説明では、都市ガス事業者間の切り替えについて 「ガス栓の開閉栓は行わないので、ガス供給が停止することはありません」とされています。 検針も引き続き導管を持つ事業者が行い、そのデータが切替先へ渡ります。

ただし、プロパンガスからの切り替えや、オール電化から都市ガスへ変える場合は事情が異なります。 配管の敷設やメーターの設置、ガス器具の調整や取替えが必要になることがあり、 その費用は自己負担となるうえ、工事中は供給が止まります。この2つは別の話として切り分けて考えてください。

比べるときに見落としやすい3つの条件

単価の比較だけで決めると、後から効いてくる条件を見落とします。契約前に確認したいのは次の3点です。

第一に解約金です。資源エネルギー庁も、料金プランによっては解約金が発生することがあるため契約締結前に確認するよう促しています。 2年契約のような期間の縛りがあるプランでは、途中で別の会社に移ると費用が発生します。

第二に割引の適用条件です。他のサービスとまとめることを条件とするセット割は、 そのサービスを解約すると電気側の割引も消えます。通信とのセットを検討している場合は、 通信費の見直しと格安SIM|乗り換えの費用と失うものを先に数えるで扱った考え方と同じで、 組み合わせを増やすほど後で動かしにくくなります。同じ論点は ポイント経済圏はどこまで寄せるか|集中して得るものと失うものでも整理しています。

第三に事業者の撤退です。契約先が事業をやめる場合は事前に通知が届き、期日までに次の会社と契約する必要があります。 都市ガスには導管を持つ事業者が最終的な供給を行う最終保障供給という安全網が用意されていますが、 そのまま放置してよいという意味ではありません。物価上昇局面での家計全体の備えは インフレに負けない家計と資産形成|物価上昇時代のお金の守り方でも扱っています。

勧誘によるトラブルと相談先

国民生活センターに寄せられた電力の自由化に関する相談は、2025年度で4,508件、 ガスの自由化に関する相談は534件でした(2026年5月31日現在)。件数は横ばいで推移しており、 自由化から年数が経った今も一定数が続いています。

相談の例として挙げられているのは、アパート全体で切り替えると勘違いして契約書を書いてしまった、 訪問してきた代理店から長時間の勧誘を受けて不要な契約をした、契約書の控えを受け取っていない、といった内容です。 同センターは2026年2月10日にも、電気・ガス以外のサービスを併せて勧誘されるケースについて注意を呼びかけています。

訪問販売や電話勧誘販売で契約した場合は、特定商取引法に基づくクーリング・オフの対象になります。 期間は法定の事項を記載した契約書面を受け取った日から起算して8日間です。 ただし、経過措置として残っている規制料金メニューや最終保障供給は適用除外とされています。 その場で決めず、書面を持ち帰って比較する。これだけで大半のトラブルは避けられます。

まとめ|検針票を1枚読むところから始める

電気とガスの見直しは、比較サイトを開くところからではなく、手元の検針票を読むところから始まります。 合計額ではなく、基本料金と従量料金の単価、そして賦課金の行を見る。それだけで、 何が下げられて何が下げられないのかが分かります。

そのうえで年間の使用量をもとに総額で比べ、解約金と割引の条件を確かめてから決めれば、 切り替えは工事も停電も伴わない、事務手続きだけの作業です。 逆に、その場の勧誘に押されて決めることだけは避けてください。判断の材料は、すべて手元の書面のなかにあります。

参考資料

本記事は2026年8月21日時点の公開情報をもとに作成しています。料金単価や制度の運用は改定されることがあるため、 申し込みや変更の前に、各機関および各社の最新の公表資料をご確認ください。