50代・60代で家を建て替える、実家を二世帯住宅にする。そう考えて住宅ローンを調べると、多くの場合「完済時80歳まで」という上限にぶつかります。60代前半で借りると返済期間は20年足らずになり、毎月の返済額が重くなります。そこで候補に挙がるのが、子どもに返済を引き継ぐ「親子リレー返済」です。

先に結論を書くと、親子リレー返済は返済期間を延ばして毎月の負担を軽くする代わりに、子どもが借入当初から借金の全額に責任を負う仕組みです。住宅金融支援機構の【フラット35】の公表条件をもとに、使える人の要件、返済期間の決まり方、そして子ども側が負う責任と相続・税金の注意点を整理します。

フラット35の親子リレー返済について、後継者の要件、借入期間の決まり方、団信、子どもの責任、税金、相続の6項目を、内容と注意点に分けて並べた図解
返済期間が延びる利点と引き換えに、子ども側の責任と家族間の調整が増えます。

この記事でわかること

  • 【フラット35】の親子リレー返済で後継者になれる人の3つの要件
  • 返済期間が「80歳-後継者の年齢」で決まる仕組みと試算例
  • 子どもが借入当初から連帯債務者になることの意味
  • 団信に加入できるのが1人だけである点と、その選び方
  • 贈与税・住宅ローン控除・相続で気をつけること

結論|返済期間は延びるが、子どもは最初から全額の連帯債務者になる

親子リレー返済を使うと、親の年齢ではなく子ども(後継者)の年齢で返済期間を決められます。60代の親でも最長35年で借りられる場合があり、毎月の返済額は下がります。一方で、子どもは借入当初から連帯債務者になり、親が返している間も含めて全額の返済義務を負います。 利用を決める前に、①子どもが自分の家を買う予定があるか、②兄弟姉妹がいるか、③名義と返済の負担をどう分けるか、の3点を家族で話し合っておくことが欠かせません。

この記事で扱う範囲

ここで扱うのは、親子2世代で1本のローンを返していく仕組みです。年齢・年収・返済負担率といった審査全般は 住宅ローンの審査では何を見られるか|事前審査と本審査・返済負担率の目安で、 固定金利と変動金利の選び方は 住宅ローンは固定金利と変動金利のどちらを選ぶべきかで扱っています。

後継者になれる人の3つの要件

住宅金融支援機構は親子リレー返済を「お申込みご本人とその後継者が2世代で住宅ローンを返済していく制度」と説明しています。後継者には次の3つの要件がすべて求められます。

要件内容
続柄と収入申込本人の子・孫など(直系卑属)またはその配偶者で、定期的収入がある人
年齢申込時の年齢が満70歳未満
立場連帯債務者になる人(1名のみ)

通常の【フラット35】は申込時に満70歳未満であることが条件ですが、親子リレー返済で後継者の要件を満たせば、申込本人が満70歳以上でも申し込めます。子の配偶者も後継者になれるため、娘の夫や息子の妻が後継者になる形も制度上は可能です。 なお、連帯債務者は後継者1名に限られ、ほかの家族を連帯債務者に加えることはできません。

返済期間はどう決まるか|試算で比べる

【フラット35】の借入期間の上限は、「80歳-申込時の年齢」と35年の短いほうです。親子リレー返済では、この「申込時の年齢」に後継者の年齢を使えます。機構が示す例では、申込本人が60歳3か月、後継者が30歳3か月のとき、80歳-31歳=49年となり、上限の35年が適用されます(1年未満の端数は切り上げて数えます)。

この違いが毎月の返済額にどう効くかを、借入額2,000万円・金利年2.0%(全期間固定・元利均等返済)と仮定して試算しました。金利は説明のための仮の数字です。

借り方返済期間毎月の返済額利息の総額
親が単独で借りる(61歳で計算)19年約10万5,500円約406万円
親子リレー返済(後継者31歳で計算)35年約6万6,300円約783万円

毎月の返済額は約4万円下がりますが、利息の総額は約2倍に増えます。親が退職して収入が減る時期に子どもへ返済を引き継ぐ前提なので、「親が何歳まで払い、そのとき残高がいくら残るか」を返済予定表で確かめておくことが大切です。

子どもが負う責任|借入当初から連帯債務者になる

機構は注意事項として「借入当初から親子リレー返済の後継者が連帯債務者になります」と明記しています。「親が払えなくなったら子が引き継ぐ」というイメージとは違い、子どもは最初から借金の全額について返済義務を負う当事者です。 民法第436条により、金融機関は連帯債務者の誰に対しても全額の返済を求めることができます。親の返済が滞れば、親が存命で返済中であっても、子どもに請求が来ます。

もう一つ見落としやすいのが、子ども自身の住宅ローンへの影響です。連帯債務は子どもの借入として扱われるため、後に子どもが自分の家を買うとき、審査で返済負担率に算入される可能性があります。【フラット35】の総返済負担率の基準は、年収400万円未満で30%以下、400万円以上で35%以下です。子どもが近い将来に家を持つ予定なら、先に話し合っておきます。

団信に入れるのは原則1人だけ

【フラット35】の新機構団信は、債務者が2人いる場合(親子リレー返済を含む)、どちらか1人しか加入できません。夫婦2人で入れる「デュエット」は夫婦の連帯債務が対象で、親子では使えません。 保障は加入者の満80歳の誕生日の属する月の末日に終わります。親が加入すれば親の死亡時に残高が弁済されますが、子どもに万一があっても残高は残ります。子どもが加入すれば逆になります。誰が加入するかで家族の備え方が変わるため、生命保険と合わせて考えます。団信と生命保険の関係は 住宅ローンの団信は生命保険の代わりになるか|保障の重複を整理するで解説しています。

名義と返済の負担がずれると贈与税の問題が出る

税金で注意したいのは、家の名義(持分)と、実際に誰がいくら返したかの対応です。国税庁は共働き夫婦の例で、夫名義の家のローンを夫婦の連帯債務として共働きの収入から返す場合について、「ローン返済の年ごとに妻から夫に贈与があったものとされます」と回答しています。 親子でも同じ考え方で、親の単独名義の家のローンを子どもが返していけば、子から親への贈与と見られるおそれがあります。

連帯債務の負担割合について、国税庁は「所得金額等に応じて合理的に定める必要があり」としています。持分を返済の負担に合わせて共有名義にする、返済を引き継ぐ時期に名義の扱いを見直すなど、借りる前に税理士や税務署へ相談しておくと安心です。 また、住宅ローン控除は自分が住む家の借入金が対象です。子どもが別の家に住んでいる場合、子どもが払った分について控除は受けられません。

相続で起きやすいこと

親が亡くなると、家は親の遺産として相続人全員で分けることになります。一方で、ローンを払い続けるのは後継者の子どもです。兄弟姉妹がいる家庭では、「返済してきたのは自分なのに、家は兄弟と分けるのか」という不公平感が生まれやすくなります。

  • 親の生前に、家を誰が引き継ぐかを家族で共有しておく
  • 遺言書で家を後継者に相続させる意思を残しておく
  • 親の持分に対応する債務は相続の対象になり、相続税の計算では債務控除の対象になりうる

分け方の選択肢や期限は 遺産分割協議でもめないための準備|4つの分け方と3つの期限で扱っています。返済の途中で家計が苦しくなった場合の手順は 住宅ローンが払えなくなりそうなとき|返済条件の変更・任意売却・個人再生の順番を参照してください。

民間の住宅ローンでの親子リレー

銀行などの民間住宅ローンにも、親子で返済を引き継ぐ商品があります。ただし、後継者の年齢の上限、同居の要否、団信の扱いは金融機関ごとに異なります。【フラット35】の要件をそのまま当てはめず、商品概要説明書で次の点を確認します。

  • 後継者の年齢上限と、返済期間の計算方法
  • 後継者が同居している必要があるか
  • 団信に加入できる人と、保障が終わる年齢
  • 後継者が連帯債務者か連帯保証人か

まとめ|毎月の軽さと、子どもの責任を同じ天秤にかける

親子リレー返済は、60代以降でも返済期間を最長35年まで延ばせる仕組みです。2,000万円・年2.0%の仮定では毎月の返済額が約4万円下がる一方、利息の総額は約2倍になります。 後継者の子どもは借入当初から連帯債務者で、団信に入れるのは1人だけです。名義と負担のずれによる贈与、兄弟姉妹との相続の調整まで含めて、借りる前に家族で合意しておくことが、この制度を使ううえでいちばんの準備になります。

よくある質問

Q. 親子リレー返済の後継者になれるのは誰ですか
フラット35では、申込本人の子・孫など(直系卑属)またはその配偶者で、定期的収入があり、申込時の年齢が満70歳未満の人です。後継者は連帯債務者になり、1名に限られます。
Q. 親が70歳以上でも住宅ローンを借りられますか
フラット35の親子リレー返済では、後継者の要件を満たせば申込本人が満70歳以上でも申し込めます。借入期間は後継者の年齢をもとに「80歳-申込時の年齢」と35年の短いほうで決まります。
Q. 親が返済している間、子どもに責任はありますか
あります。後継者は借入当初から連帯債務者になるため、親が返済中であっても全額について返済義務を負います。親の返済が滞れば、子どもに請求が来ることがあります。
Q. 団信には親子の両方が入れますか
フラット35の新機構団信は、債務者が2人いる場合はどちらか1人しか加入できません。夫婦で入れるデュエットは親子では使えないため、誰が加入するかを生命保険と合わせて決めます。
Q. 子どもが返済すると贈与税はかかりますか
家の名義と実際の返済の負担がずれると、贈与と見られるおそれがあります。国税庁は夫婦の連帯債務の例で、返済の年ごとに贈与があったものとすると示しています。持分と負担割合を事前に税理士などへ相談しておくと安心です。

参考資料

本記事は2026年10月6日時点の公開情報をもとに作成しています。返済額の試算は借入額2,000万円・金利年2.0%の仮定によるもので、実際の金利や返済額は申込時の条件と金融機関によって異なります。 贈与税・相続税の扱いは個別の事情で変わるため、具体的には税務署や税理士、借入先の金融機関にご確認ください。