住宅の契約を前に、金融機関へ申し込む段になって手が止まる。 年収は足りているのか、転職したばかりでも通るのか、カードの支払いが遅れた記憶が引っかかる—— 審査は「落ちても理由を教えてもらえない」ため、不安だけが先に大きくなりがちです。
ただ、金融機関が何を見ているかは公表されています。 国土交通省は毎年、住宅ローンを扱う全国の金融機関に審査項目を尋ねて集計しており、 どの項目を何割の機関が見ているか、基準はどのあたりに置かれているかまで数字で出ています。 ここでは令和7年度の調査とフラット35の利用条件をもとに、事前審査と本審査の違い、 返済負担率の目安、年齢や勤続年数の扱い、信用情報の記録を順に整理します。 金利タイプの選び方と借り換えの判断は扱いません。
この記事でわかること
- 事前審査と本審査で見られるものがどう変わるか
- 金融機関が実際に見ている項目と、その割合
- 返済負担率の目安が30〜40%に集まる理由
- 年齢は「借りるとき」より「返し終わるとき」で見られること
- 勤続1年でも申し込める機関が多数派だという実態
- 信用情報に記録が残る期間と、自分で確かめる方法
結論|重いのは年齢・年収・返済負担率・健康状態の4つ
審査項目は20を超えますが、9割以上の機関が共通して見ている項目は限られます。 国土交通省「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査」(回答994機関)では、 完済時年齢98.4%、借入時年齢96.2%、健康状態96.1%、年収94.2%、勤続年数93.9%、 担保評価91.0%、返済負担率90.9%の順に高くなっています。
裏を返すと、家族構成39.1%、所有資産35.6%、雇用先の規模35.6%、性別24.9%は、 多数派の判断材料ではありません。 同調査は完済時年齢・健康状態・借入時年齢などについて 「引き続き9割以上の機関が融資を行う際の審査項目としている」と述べています。 準備する順番は、この割合に合わせるのが合理的です。
事前審査と本審査は何が違うのか
事前審査(仮審査)は、申込書に書いた年収・勤務先・借入希望額と、信用情報の照会結果で判断します。 数日で結果が出るのはこのためです。物件が決まる前でも申し込めます。
本審査は、源泉徴収票や課税証明書、売買契約書、登記関係の書類で申告内容を裏づけ、 さらに団体信用生命保険の告知と、物件そのものの担保評価を加えます。 事前審査を通っても本審査で覆ることがあるのは、この2つが後から入るためです。 担保評価を「融資判断に影響する」と答えた機関は498、参考にする程度が342で、 影響しないと答えたのは22にとどまります。
点数だけで決まるわけではない
申込者を点数化して判定する方式について、同調査では 「スコアリング方式では審査を行っていない」が59.9%で最も多く、 中心に据えているのは15.7%、一部で使うのが24.4%でした。 数値が基準をわずかに外れても、個別の事情を見る余地は残っています。
返済負担率は何%までか
返済負担率は、年収に占める年間返済額の割合です。 住宅金融支援機構のフラット35は基準を公表しており、 年収400万円未満は30%以下、年収400万円以上は35%以下と定めています。 この割合には、住宅ローン以外の借入の返済額も含めて計算します。
民間の金融機関は基準を個別に定めていますが、分布は公表されています。 返済負担率を審査項目とした機関のうち、 40%以内が74機関、35%以内が58機関、30%以内が39機関で、 45%以内は4機関、50%以内は2機関しかありません。上限は30〜40%に集まっています。
注意したいのは、この分母が手取りではなく額面の年収だという点です。 額面600万円で負担率35%なら年210万円、月17.5万円まで借りられる計算になりますが、 手取りは470万円前後です。実際の手取りに対しては45%近くを返済に充てることになります。 借りられる額と、無理なく返せる額は別ものです。 住まいにかかるお金は返済だけではないため、 住宅購入の諸費用や 固定資産税・修繕費まで含めて考えてください。
年齢・勤続年数・雇用形態はどこまで問われるか
年齢は「借りるとき」より「返し終わるとき」で見られます。 完済時年齢を審査項目とした機関の内訳は、80歳未満が716機関と圧倒的で、 85歳未満が65機関、75歳未満が42機関と続きます。 フラット35も申込時は満70歳未満、完済時は80歳が上限です。 50歳で35年返済を組むと完済時85歳となり、多くの機関の枠から外れます。
勤続年数は誤解の多い項目です。基準を定めている機関の内訳は 1年以上が612機関で最多、3年以上は128機関、2年以上は53機関でした。 3年勤めないと申し込めない、というのは多数派の運用ではありません。
雇用形態を審査項目とした機関は70.6%で、内訳は派遣社員を対象外とするのが368機関、 契約社員を対象外とするのが312機関。一方で自営業者を対象外とするのは10機関にとどまります。 自営業は不利と語られがちですが、門前払いになるわけではなく、確定申告書での所得確認が中心になります。
他の借入と信用情報の記録
カードローン等の他の債務の状況や返済履歴を審査項目とした機関は72.5%です。 借入残高そのものが返済負担率を押し上げるうえ、返済の遅れは記録として残ります。
全国銀行協会が運営する全国銀行個人信用情報センターの登録期間は公表されています。 ローンやクレジットの取引情報は契約期間中および契約終了日から5年、 官報情報は7年、照会記録は会員への提供が6か月です。 返済に遅れた記録も、この取引情報の一部として残ります。
自分の記録は本人開示で確認できます。手数料は800円で、 マイナンバーカードを使えばインターネットから申し込め、最短3〜5営業日で開示されます。 申し込む前に一度見ておくと、心当たりの有無をはっきりさせられます。 借入が重なっているなら、 カードローンとリボ払いから抜ける順番を先に片づけるほうが、 負担率にも記録にも効きます。
健康状態と団信の位置づけ
健康状態を審査項目とした機関は96.1%で、その中身はほぼ団体信用生命保険です。 内訳は団信加入が必要が834機関、選択可能が89機関、不要はわずか2機関でした。 団信に加入できなければ、借入そのものができない構図になっています。
持病があると告知で引っかかることがありますが、引受基準を緩めたワイド団信を扱う機関や、 団信加入を任意とするフラット35という選択肢もあります。 なお団信は審査の関門であると同時に保険でもあるため、 既存の生命保険との重複を 同じタイミングで見直しておくと無駄がありません。
通らなかったときに確かめること
否決の理由は開示されません。ただ、公表データから逆算して確かめる順序はあります。
| 順 | 見るところ | 打てる手 |
|---|---|---|
| 1 | 完済時年齢が80歳を超えていないか | 返済期間を短くする |
| 2 | 他の借入を含めた返済負担率 | 車やカードの残債を先に返す |
| 3 | 信用情報に遅れの記録がないか | 本人開示で確認する |
| 4 | 団信の告知に該当がないか | ワイド団信・フラット35を検討 |
| 5 | 物件の担保評価と融資率 | 頭金を積む・物件を見直す |
国土交通省「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査」の審査項目をもとに作成。
営業エリアを審査項目とした機関も89.2%あり、内訳は エリア内に居住が811機関、エリア内に勤務が565機関です。 地方銀行や信用金庫に申し込むなら、勤務地でも条件を満たす場合があります。 1行で断られても、条件の置き方が違う機関なら結論が変わることは珍しくありません。 金利の水準だけで申込先を絞らず、 金利タイプの検討とは分けて、 審査条件の合う機関を並行して当たるのが現実的です。
まとめ|公表データに合わせて準備の順番を決める
- 9割以上の機関が見るのは完済時年齢98.4%・借入時年齢96.2%・健康状態96.1%・年収94.2%・勤続年数93.9%・担保評価91.0%・返済負担率90.9%
- 返済負担率の上限は30〜40%に集中。フラット35は年収400万円未満30%以下、400万円以上35%以下
- 完済時年齢は80歳未満が716機関と最多。返済期間の設定がここに効く
- 勤続年数は1年以上が612機関で最多。3年必須は多数派ではない
- 信用情報の取引情報は契約終了から5年、官報情報は7年。本人開示は800円
- 健康状態はほぼ団信。加入必須が834機関で、通らなければ借入自体が難しい
審査は不透明に見えますが、判断材料の大半は公表されています。 年齢と期間、他の借入、信用情報、団信の4点を先に整えておけば、 申し込みの段階で慌てる場面はかなり減らせます。 すでに借りている人が条件を見直すときの判断軸は 住宅ローンの借り換えで整理しています。
よくある質問
- Q. 返済負担率は何%まで認められますか
- フラット35は年収400万円未満で30%以下、400万円以上で35%以下と公表しています。民間では、返済負担率を審査項目とした機関のうち40%以内が74機関、35%以内が58機関、30%以内が39機関で、上限は30〜40%に集まっています。分母は手取りではなく額面の年収で、住宅ローン以外の借入の返済額も含めて計算します。
- Q. 勤続年数は3年ないと申し込めませんか
- 多数派ではありません。国土交通省の令和7年度調査では、勤続年数の基準を定めた機関の内訳は1年以上が612機関で最も多く、3年以上は128機関、2年以上は53機関でした。勤続年数そのものを審査項目とする機関は93.9%と多いものの、求める年数は1年以上に集中しています。
- Q. 事前審査に通れば本審査も通りますか
- 必ずしも通るとは限りません。事前審査は申告した年収・勤務先・借入希望額と信用情報の照会で判断しますが、本審査ではこれに団体信用生命保険の告知と物件の担保評価が加わります。担保評価を融資判断に影響すると答えた機関は498あり、この2つが後から入るため結果が覆ることがあります。
- Q. 信用情報の記録はどのくらい残りますか
- 全国銀行個人信用情報センターの場合、ローンやクレジットの取引情報は契約期間中および契約終了日から5年、官報情報は7年、照会記録は会員への提供が6か月です。返済の遅れも取引情報の一部として残ります。自分の記録は手数料800円の本人開示で確認でき、マイナンバーカードを使えば最短3〜5営業日で開示されます。
- Q. 持病があると住宅ローンは借りられませんか
- 健康状態を審査項目とする機関は96.1%で、内訳は団信加入が必要が834機関、選択可能が89機関、不要が2機関でした。団信に加入できないと借入が難しくなりますが、引受基準を緩めたワイド団信を扱う機関や、団信加入を任意とするフラット35という選択肢もあります。
参考資料
- 国土交通省 住宅局「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」(令和8年3月)
- 国土交通省「民間住宅ローンの実態に関する調査」
- 全国銀行協会「全国銀行個人信用情報センター センターの概要」
- 全国銀行協会「本人開示の手続き」
- 住宅金融支援機構「フラット35 ご利用条件」
本記事は2026年9月3日時点の公開情報をもとに作成しています。 審査の基準は金融機関ごとに異なり、同じ機関でも商品や時期によって運用が変わります。 実際の申し込みにあたっては、各金融機関および住宅金融支援機構の最新の公表資料をご確認ください。