投資の話を持ちかけられたとき、多くの人は「その話は本当にもうかるのか」を考えます。 しかし、内容の当否を素人が見抜くのは簡単ではありません。相手は説明の準備を整えていますし、 資料も画面も、それらしく作られています。
見分ける手がかりは、話の中身ではなく別のところにあります。日本で投資に関する勧誘や売買の仲介を行うには、 法律上の登録が必要です。そして登録を受けている業者の名前は、だれでも当局の一覧で確かめられます。 この記事では、警察庁と金融庁が公表している資料をもとに、実際の手口がどう進むのかと、 相手の登録を自分で確認する手順を整理します。
この記事でわかること
- SNS型投資詐欺の被害が2025年にどれだけ増えたか
- 被害の中心が40代から60代であること
- 広告やダイレクトメッセージから始まり、LINEへ移る流れ
- 未公開株を売れる相手が法律上限られていること
- 登録業者かどうかを自分で確かめる具体的な手順
結論|話の中身ではなく、登録の有無で判断する
投資に関する勧誘や売買の仲介を業として行うには、金融商品取引業の登録が必要です。 登録を受けた業者には、顧客の知識や資産に見合わない勧誘をしない、確実にもうかると言い切らない、 預かった資産を自社の資産と分けて管理する、といった義務が課されます。
登録のない相手には、この義務がひとつも及びません。 金融庁は無登録業者との取引について、投資者保護の態勢が確保されているか当局では確認できないこと、 出金の拒否や法外な出金手数料の請求、急に連絡が取れなくなるといったトラブルが報告されていることを挙げています。
つまり、判断すべきは「もうかるか」ではなく「相手が登録を受けているか」です。 これは相場観も専門知識も要らず、一覧を検索するだけで確かめられます。
被害はどれだけ起きているか
警察庁が2026年5月に公表した確定値によると、2025年のSNS型投資詐欺の認知件数は9,523件、 被害額は1,288.0億円でした。前年に比べて件数は48.5%、被害額は47.9%増えています。 恋愛感情や親近感を利用するSNS型ロマンス詐欺と合わせると、15,168件・1,834.3億円になります。
| 区分 | 認知件数 | 被害額 | 前年比(件数) |
|---|---|---|---|
| SNS型投資詐欺 | 9,523件 | 1,288.0億円 | +48.5% |
| SNS型ロマンス詐欺 | 5,645件 | 546.4億円 | +47.6% |
| 合計 | 15,168件 | 1,834.3億円 | +48.2% |
被害者の年齢層は幅広い年代に及びますが、男女ともに40代から60代が多数を占めています。 男性では60代が1,393件、50代が1,383件、女性では50代が1,176件、60代が857件でした。 若い世代がSNSに不慣れな高齢者をだます構図ではなく、 資産形成に取り組んでいる働き盛りから退職前後の層が中心である点が、この統計の要点です。
SNS型投資詐欺はこう始まる
同じ資料から、接触の経路もわかります。最初の接触手段は、バナー等の広告が3,785件で全体の39.7%、 ダイレクトメッセージが3,549件で37.3%と、この2つで約8割を占めます。 最初に接触したツールはInstagramが1,934件、YouTubeが1,229件、LINEが1,211件、投資のサイトが1,071件と分散しています。
一方で、被害に遭った時点の連絡ツールはLINEが8,906件と全体の93.5%に達します。 入口はばらけているのに、出口はほぼ一本に集約されるという形です。 金融庁も、偽広告やURLから LINEのグループへの参加や詐欺サイトへ誘導される流れを注意喚起しています。
警察庁は、広告のなかに著名人の画像や動画を無断で使用したものが確認され、 「必ずもうかる」「元本保証」といった文言を含む広告も見られたとしています。 被疑者が詐称した職業は投資家が3,288件、著名人が692件でした。
「必ず」「元本保証」は、それ自体が違反の合図
不確実な利益を確実であるかのように示して勧誘する行為は、金融商品取引法で禁止されています。 登録を受けた業者は、この言い方ができません。 つまり断言が出てきた時点で、相手は登録業者ではないか、規制に違反しているかのどちらかです。 内容を検討する必要はなく、そこで確認に移れば足ります。
資金の渡し方にも特徴があります。交付形態は振込型が7,135件で74.9%、暗号資産送信型が1,898件で19.9%でした。 暗号資産による送金は前年から約2.5倍に増えています。
未公開株詐欺は別の入口から来る
SNSを使わない類型もあります。電話や訪問で、上場していない会社の株式の購入を持ちかける手口です。 「上場間近」「値上がり確実」「あなただけに特別に譲渡する」「後で高値で買い取る」といった説明が使われます。
ここには、確認だけで足りる明確な線引きがあります。 未公開株の販売等を行えるのは、その株式の発行会社か、第一種金融商品取引業の登録を受けた金融商品取引業者に限られます。 証券会社を名乗らない相手が未上場株を売りに来た時点で、その取引は成り立ちません。 上場予定が本当かどうかは、発行会社に直接確認したり、 金融庁のEDINETで有価証券届出書が提出されているかを調べたりして確かめられます。
日本証券業協会は、この類型に付随する手口として、複数の業者が登場して信用させる劇場型、 他人名義での購入を持ちかけたうえで違法行為だと迫る名義貸し型、 そして過去の被害を取り戻すと持ちかけて手数料を重ねて取る被害回復型を挙げています。 最後のものは、一度被害に遭った人が再び狙われる二次被害にあたります。
登録業者かどうかを自分で確かめる
手順は3つです。所要時間は数分で、専門知識は要りません。
| 順番 | やること | 見るもの |
|---|---|---|
| 1 | 登録業者の一覧に名前があるか調べる | 金融庁「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」 |
| 2 | 警告を受けた業者として公表されていないか調べる | 金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」 |
| 3 | 連絡先を自分で調べ直して照合する | 相手から教えられた番号ではなく、検索して出てきた正規の連絡先 |
3番目を省かないでください。実在する金融機関の名前を借りるのは、この種の手口の定番です。 相手が送ってきたリンクや電話番号は、相手が用意したものです。照合する意味を持つのは、自分で調べた連絡先だけです。
一覧に無いことと、載っていることの意味は違う
金融庁は、無登録業者の公表リストについて、警告書を発出した時点で無登録営業が確認できた者に限られ、 掲載されていない無登録業者が存在する可能性があると注記しています。 リストに無いことは安全の証明にはなりません。判断の基準はあくまで、 登録業者の一覧に名前があるかどうかです。
投資を始めること自体は、登録を受けた金融機関を通せば普通の手続きです。 口座をどこに作るかは証券口座の選び方、 商品をどう選ぶかは投資信託の選び方で扱っています。 一つの話に資金を集中させない考え方は分散投資とは何かが入口になります。
気づいたときにどうするか
出金しようとしたら手数料や税金の名目で入金を求められた。この段階で、追加の入金はいったん止めてください。 金融庁は、こうした要求に応じて入金した直後に連絡が取れなくなる流れを注意喚起しています。 払えば戻るという説明は、被害を回復するための条件ではなく、被害を増やすための手順です。
次に、家族など利害のない相手に事実だけを話してください。判断を自分ひとりの内側で完結させないことが、 先送りを断ち切る現実的な方法になります。そのうえで、公的な窓口に相談します。
| 窓口 | 連絡先 | 扱う内容 |
|---|---|---|
| 金融庁 金融サービス利用者相談室 | 0570-016811(IP電話 03-5251-6811)/平日10時〜17時 | 金融商品・業者に関する相談。ウェブ受付は24時間 |
| 証券取引等監視委員会 情報提供窓口 | 0570-00-3581(IP電話 03-3581-9909) | 無登録営業などの情報提供 |
| 消費者ホットライン | 188 | 身近な消費生活センターへの案内 |
| 警察相談専用電話 | #9110 | 犯罪被害の相談 |
高齢の家族が同じ話を持ちかけられている場合は、お金の管理そのものを整えておく必要があります。 判断能力が落ちてからでは選べる手段が減るため、 親が認知症になる前に考えるお金の管理を早めに読んでおいてください。
まとめ|確認は数分で終わる
2025年のSNS型投資詐欺は9,523件・1,288.0億円で、前年から約1.5倍に増えました。 被害の中心は40代から60代です。入口は広告とダイレクトメッセージで、その後LINEへ移る流れが9割を占めます。 未公開株の類型では、そもそも売れる相手が発行会社と第一種金融商品取引業者に限られています。
やることは3つです。断言が出てきたら内容の検討をやめる。金融庁の登録業者一覧で名前を照合する。 連絡先は自分で調べ直す。そして、出金時に追加の入金を求められたら、そこで止めて第三者に話す。 もうかるかどうかを見抜く必要はありません。相手が登録を受けているかを調べるだけで、判断の大半は片が付きます。
参考資料
- 警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」(令和8年5月22日)
- 金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」
- 金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」
- 金融庁「SNS・マッチングアプリ等で知り合った者や著名人を騙る者からの投資勧誘等にご注意ください!」
- 金融庁「未公開株購入の勧誘にご注意!~一般投資家への注意喚起~」
- 日本証券業協会「『株や社債をかたった投資詐欺』の手口」
- 金融庁「金融サービス利用者相談室」
本記事は2026年8月11日時点の公開情報をもとに作成しています。 統計は警察庁が公表した令和7年の確定値によるもので、暫定値として先に公表された数値とは異なります。 相談窓口の電話番号・受付時間、および各一覧の掲載内容は変更されることがあります。 実際に確認する際は、各機関の最新の公表資料をご参照ください。 本記事は制度と手口の一般的な説明であり、個別の事案についての法的助言ではありません。