親から子へ、祖父母から孫へ、お金を渡す場面は珍しくありません。入学金や授業料を支援する、住宅購入の頭金を助ける、将来のために少しずつ渡す。家族の中では自然な支援でも、金額や渡し方によっては贈与税の確認が必要になります。

ただし、贈与税は「親子間でお金を動かしたらすぐ税金」という単純な制度ではありません。教育費や生活費として必要な都度渡すお金、住宅取得等資金の特例、暦年課税の基礎控除110万円など、目的や時期によって見るポイントが変わります。

大切なのは、相続対策だけを目的にすることではありません。教育費、住宅資金、老後資金を同じ家計の中で見て、親世代が無理をしない範囲で支援することです。

この記事では、贈与税の基本を、教育資金、住宅資金、暦年贈与の3つから整理します。個別の税額計算ではなく、家族でお金を動かす前に確認したい入口として読んでください。

この記事でわかること

  • 贈与税を考えるときの基本の見方
  • 教育費を親や祖父母が出すときの注意点
  • 教育資金の一括贈与制度が2026年3月31日で終了したこと
  • 住宅取得等資金の非課税特例の入口
  • 暦年贈与の110万円を誰単位で見るか
  • 親世代の老後資金を崩しすぎない考え方
贈与税の基本として教育費、住宅資金、暦年贈与、親の老後資金を目的と注意点で整理した図解
▲ 贈与税は、誰から誰へ、何の目的で、いつ、いくら渡すかを分けて確認します。

先に結論|贈与税は「目的」と「受け取る人」で整理する

贈与税の基本は、次の3つに分けると理解しやすくなります。

  1. 教育費や生活費として必要な都度渡すお金
  2. 住宅取得等資金のように、要件を満たすと非課税になる特例
  3. 暦年課税として、1年間に受け取った贈与を合計して見るお金

贈与税は、原則として財産をもらった人側で考える税金です。国税庁は、暦年課税では、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与で取得した財産の価額を合計し、そこから基礎控除額110万円を差し引いて計算すると案内しています。

つまり、「父から100万円、母から100万円なら、それぞれ110万円以下だから大丈夫」と単純には考えません。1年間にもらった人の合計で確認します。

贈与税は、渡す人の気持ちではなく、受け取る人が1年間に何をいくら受け取ったかで整理するのが出発点です。

教育費は「必要な都度、直接使う」が基本

教育費の支援でまず押さえたいのは、親や祖父母が子や孫の教育費を出すこと自体が、すべて贈与税の対象になるわけではないという点です。

国税庁は、夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から、生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるものは贈与税がかからないと説明しています。教育費には、学費、教材費、文具費などが含まれます。

ただし、ここで重要なのは「必要な都度、直接その費用に充てる」ことです。教育費の名目でまとまったお金を受け取り、使わずに預金したり、株式投資信託などの買付資金にしたりすると、贈与税の対象になることがあります。

渡し方 考え方 注意点
入学金を支払う 必要な教育費 支払い時期と領収書を残す
授業料を支払う 必要な都度の支援 使途を説明できるようにする
数年分を先に渡す 贈与として確認 預金に残ると課税対象になり得る
教育費の支援は、「いくら渡すか」だけでなく、「いつ必要で、何に使ったか」を説明できる形にしておくと安心です。

教育資金の一括贈与制度は、2026年3月31日で終了

教育資金については、以前から「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」がありました。一定の要件を満たすと、1,500万円まで非課税になる制度です。

ただし、ここは最新の注意点があります。国税庁は、この特例について、令和8年3月31日までとされていた適用期限が延長されずに終了したため、令和8年4月1日以後は新たに特例の適用を受けることはできないと案内しています。

一方で、令和8年3月31日までにこの特例の適用を受けた信託受益権や金銭等については、引き続きこの特例が適用されます。すでに契約している人と、これから新たに始めたい人では扱いが違います。

2026年5月27日時点では、教育資金の一括贈与非課税制度を新規で使う前提にしないでください。教育費支援は、必要な都度の支払いと、暦年贈与の確認を分けて考えます。

住宅資金は、特例の要件と申告を確認する

住宅購入や増改築のために、父母や祖父母から資金援助を受ける場合には、住宅取得等資金の贈与税の非課税特例を確認します。

国税庁は、令和6年1月1日から令和8年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受け、一定の要件を満たす場合、省エネ等住宅は1,000万円まで、それ以外の住宅は500万円まで非課税になると案内しています。

ただし、住宅資金の特例は、金額だけを見ればよい制度ではありません。受け取る人の年齢、所得、住宅の床面積、居住時期、住宅性能、過去の適用状況など、複数の要件があります。

さらに、特例を受けるには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、贈与税の申告書へ必要書類を添付して提出する必要があります。「非課税だから申告しなくてよい」と思い込まないことが大切です。

項目 入口の確認 注意点
期間 令和6年1月1日から令和8年12月31日 制度変更の可能性を確認
非課税限度額 省エネ等住宅1,000万円、それ以外500万円 住宅性能の証明が必要な場合あり
申告 翌年2月1日から3月15日 必要書類を添付する

住宅ローンとの関係は、住宅ローン控除と資産形成|繰上返済と投資はどちらを優先するべきかもあわせて確認してください。

暦年贈与の110万円は「受け取る人」単位で見る

暦年贈与でよく知られているのが、年間110万円の基礎控除です。ただし、この110万円は「贈与する人ごと」ではなく、「贈与を受ける人ごと」に1年間で見る点に注意が必要です。

国税庁は、1年間に複数の人から贈与を受けた場合でも、控除できる基礎控除額は贈与者の人数にかかわらず110万円と説明しています。

たとえば、子どもが父から80万円、母から80万円を同じ年に受け取った場合、合計160万円です。110万円を超える部分について、贈与税の申告が必要になる可能性があります。

贈与税の申告と納税は、原則として財産をもらった人が、もらった年の翌年2月1日から3月15日までに行います。家族内のお金でも、日付、金額、目的、振込記録、支払い先を残しておくと、あとで説明しやすくなります。

暦年贈与は「1人から110万円」ではなく、「もらう人が1年間に合計110万円」と覚えるのが基本です。

親世代は、老後資金を崩しすぎない

贈与税の記事では、どうすれば税金を減らせるかに話が寄りがちです。しかし、家計の視点では、税金より先に確認したいことがあります。それは、渡す側の親世代の老後資金です。

教育費や住宅資金の支援は、子や孫にとって大きな助けになります。ただ、親世代が生活防衛資金や老後資金を削りすぎると、将来の医療費、介護費、住まいの修繕費、年金だけでは足りない生活費への対応力が落ちます。

支援を考えるときは、次の順番で確認してください。

  1. 親世代の生活防衛資金を残す
    急な医療費、家の修繕、収入減に備えるお金は先に分けます。
  2. 年金見込額と毎月支出を確認する
    ねんきん定期便やねんきんネットで、老後の収入の土台を見ます。
  3. 教育費や住宅資金の支援額を決める
    子や孫の必要額ではなく、親世代が無理なく出せる額から考えます。
  4. 贈与か貸付かを曖昧にしない
    返してもらうつもりなら、家族間でも記録を残します。

教育費と老後資金の両立は、教育費と老後資金を両立する家計の考え方でも整理しています。

贈与は、渡した後に簡単に戻せるお金ではありません。節税よりも、親世代の生活が長く続くことを前提に考えましょう。

よくある勘違い|名目だけでは決まらない

贈与税で間違いやすいのは、「教育費と書けば非課税」「110万円以下なら何でも安全」「住宅資金なら必ず特例が使える」といった思い込みです。

実際には、使途、時期、受け取る人、支払いへの充当、申告書類、制度の適用期限などを組み合わせて確認します。

勘違い 確認したいこと
教育費なら全部非課税 必要な都度、直接使っているか
110万円は親ごとの枠 受け取る人の年間合計で見る
住宅資金なら申告不要 特例を使うには申告と書類が必要
相続対策として先に渡せば安心 親の老後資金が不足しないか

会社員が使える税制全体の入口は、会社員が使える節税の基本|iDeCo・NISA・ふるさと納税・生命保険料控除の違いも参考にしてください。

家族でお金を動かす前のチェックリスト

最後に、親から子・孫へお金を渡す前に確認したい項目をまとめます。

  • 誰から誰へ渡すお金か
  • 教育費、住宅資金、生活費、資産形成など、目的は何か
  • 必要な都度の支払いか、まとまった贈与か
  • その年に受け取る贈与の合計額はいくらか
  • 110万円を超える場合、申告が必要か
  • 住宅資金の特例など、使う制度に期限や書類があるか
  • 親世代の老後資金、医療費、介護費を残せているか
  • 振込記録、領収書、契約書、申告書類を残せるか

教育資金そのものの準備は、教育資金はいくら必要か|積立額の目安と準備の考え方を整理するで詳しく整理しています。

老後資金の土台は、老後資金は「いくら必要か」より「どう分けて準備するか」が重要もあわせて確認してください。

贈与税の基本は、「目的」「時期」「受け取る人の年間合計」「記録」の4つをそろえることです。家族を助けるお金だからこそ、渡す前に整理しておきましょう。

本記事は、2026年5月27日時点で公表されている情報をもとに作成しています。税制、特例の適用期限、申告要件、必要書類は変更される場合があります。本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務判断、贈与、相続対策、住宅取得等資金の特例適用を助言するものではありません。実際の判断は、国税庁、税務署、税理士等の最新情報を確認して行ってください。