株式や投資信託を持っていると、配当金や分配金を受け取ることがあります。お金が入ってくるのは嬉しい一方で、「税金はどうなっているのか」「NISAなら本当に非課税なのか」「確定申告した方がよいのか」で迷う人も少なくありません。
配当金の税金は、単に「税率が何%か」だけで決まるものではありません。NISA口座で受け取るのか、特定口座で受け取るのか、源泉徴収ありなのか、確定申告するのかによって、手続きと考え方が変わります。
さらに、確定申告をする場合には、総合課税、申告分離課税、配当控除、損益通算といった言葉が出てきます。ここから先は中上級のテーマですが、入口の地図があるだけでかなり理解しやすくなります。
この記事では、配当金と税金を「NISA・特定口座・確定申告」の3つに分けて整理します。個別の税務判断ではなく、自分が何を確認すればよいかを持つための基礎ガイドです。
この記事でわかること
- 配当金に税金がかかる基本的な仕組み
- NISA口座で配当金を非課税にするための注意点
- 特定口座の源泉徴収あり・なしの見方
- 確定申告不要、総合課税、申告分離課税の入口
- 配当控除や損益通算を考える前に確認したいこと
先に結論|配当金の税金は「口座」と「申告」で分ける
配当金と税金で迷ったら、最初に次の4つに分けます。
- NISA口座で受け取る配当金・分配金
- 特定口座の源泉徴収ありで受け取る配当金
- 確定申告しない配当金
- 確定申告する配当金
通常、上場株式などの配当金には税金がかかります。国税庁は、上場株式等の配当等について、所得税および復興特別所得税15.315%と地方税5%が源泉徴収されると案内しています。合計すると20.315%です。
ただし、NISA口座で一定の条件を満たす場合は非課税になります。また、特定口座の源泉徴収ありを使っている場合は、証券会社が税金計算や源泉徴収を行うため、確定申告しない選択がしやすくなります。
一方で、配当控除を使いたい、上場株式等の譲渡損失と損益通算したい、といった場合には確定申告が関係します。ここは有利不利が人によって変わるため、「なんとなく申告」ではなく、何のために申告するのかを先に決めることが大切です。
配当金の税金は、まず「どの口座で受け取ったか」と「確定申告するか」を分けて見るのが入口です。NISA口座|非課税だが、受取方式に注意する
NISAは、投資で得た売却益や配当・分配金が非課税になる制度です。金融庁も、通常は株式や投資信託の売却益や配当に税金がかかる一方で、NISA口座で投資した金融商品から得られる利益は非課税になると説明しています。
ただし、国内上場株式、ETF、REITなどの配当金・分配金には重要な注意点があります。NISA口座で買った上場株式等の配当金を非課税で受け取るには、配当金の受取方式として「株式数比例配分方式」を選んでいる必要があります。
国税庁のNISA制度の説明でも、非課税となる配当等は、非課税口座を開設している金融商品取引業者等を経由して交付されるもの、つまり株式数比例配分方式を選んだものに限られると案内されています。日本証券業協会も、銀行口座で受け取る方式などではNISA口座で買った上場株式等の配当金が課税扱いになる場合があると注意喚起しています。
NISAで個別株やETF、REITを買う人は、配当金の受取方式を証券会社の画面で確認しましょう。投資信託の分配金とは扱いが異なる点にも注意が必要です。NISAの制度全体は、新NISAとは何か|はじめる前に知っておきたい仕組みと使い方でも整理しています。
特定口座|源泉徴収ありなら手続きはかなりシンプル
課税口座で配当金を受け取る場合、多くの人が関係するのが特定口座です。特定口座は、上場株式等の売却損益や配当金などの管理をしやすくするための口座です。
特定口座には、源泉徴収ありと源泉徴収なしがあります。源泉徴収ありを選んでいる場合、証券会社が税金を計算し、原則として源泉徴収します。そのため、配当金だけを見ると、確定申告しなくても納税が完結しやすい仕組みです。
一方、源泉徴収なしの場合は、年間取引報告書などをもとに自分で確定申告が必要になることがあります。自分で申告を管理したい人には選択肢になりますが、初心者にとっては手続きが増えやすい点に注意が必要です。
| 口座区分 | 税金の扱い | 確認したいこと |
|---|---|---|
| NISA口座 | 条件を満たせば非課税 | 受取方式、非課税枠 |
| 特定口座・源泉徴収あり | 証券会社が源泉徴収 | 申告する目的があるか |
| 特定口座・源泉徴収なし | 申告が必要になる場合あり | 年間取引報告書、申告要否 |
| 一般口座 | 自分で計算が必要 | 取引記録、取得費 |
証券口座の基本は、証券口座の選び方|初心者が迷わないためのチェック項目も参考にしてください。
確定申告不要制度|手続きを増やさない選択肢
上場株式等の配当等は、一定の場合に確定申告しない選択ができます。国税庁は、上場株式等の配当等について、金額にかかわらず確定申告を要しない制度があると案内しています。
確定申告不要を選ぶと、源泉徴収された税金で納税関係を終えるイメージです。手続きが少なく、給与所得者や少額投資の人にとってはシンプルです。
ただし、確定申告不要を選んだ配当については、源泉徴収税額をその年分の所得税額から差し引くことはできません。また、配当控除や損益通算を使うために申告する選択とは違います。
「何もしなくてよいから楽」という面はありますが、「申告したら有利だったかもしれない」ケースもあります。配当金や損失が大きい年は、一度整理してから判断しましょう。確定申告する場合|総合課税と申告分離課税を選ぶ
配当金を確定申告する場合、入口として大きく「総合課税」と「申告分離課税」があります。ここが中上級への橋渡しです。
総合課税は、給与所得など他の所得と合算して税額を計算する方式です。国税庁は、総合課税を選んだ一定の配当所得について、配当控除を受けられる場合があると案内しています。
申告分離課税は、上場株式等の配当等を他の所得と分けて、原則20.315%の税率で計算する方式です。申告分離課税を選んだ配当所得については配当控除は使えませんが、上場株式等の譲渡損失との損益通算が関係します。
| 申告方法 | 主な特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 申告不要 | 源泉徴収で完結しやすい | 配当控除や損益通算は使わない |
| 総合課税 | 一定の配当控除を検討できる | 所得や社会保険料等への影響に注意 |
| 申告分離課税 | 譲渡損失との損益通算を検討できる | 配当控除は使えない |
配当控除|総合課税を選んだ一定の配当で検討する
配当控除は、一定の配当所得があるときに税額控除を受けられる制度です。国税庁は、国内法人から受ける一定の配当などで、確定申告において総合課税を選んだ配当所得が対象になると案内しています。
ここで大切なのは、配当控除は「配当金なら何でも使える」制度ではないことです。外国法人からの配当、REITの分配金、申告不要を選んだ配当、申告分離課税を選んだ配当などは対象外になる場合があります。
また、総合課税を選ぶと、配当所得が合計所得金額などに影響することがあります。所得税だけを見て有利に見えても、住民税、国民健康保険料、扶養判定、各種控除に影響する可能性があります。
配当控除は便利な制度ですが、低い税率の人なら必ず得、高い税率の人なら必ず損、という単純な話ではありません。家計全体と税務上の影響を合わせて見ます。損益通算|損失がある年は申告分離課税が関係する
配当金の確定申告を考えるもう一つの理由が、上場株式等の譲渡損失との損益通算です。
たとえば、特定口座で株式や投資信託を売却して損失が出ている年に、配当金も受け取っている場合、申告分離課税を選ぶことで、一定の範囲で配当所得と譲渡損失を通算できることがあります。
ただし、NISA口座で出た損失は、税務上ないものと扱われます。国税庁も、NISA口座で生じた譲渡損失は、特定口座や一般口座の配当等・譲渡益との損益通算や繰越控除ができないと説明しています。
つまり、NISAは利益が非課税になる代わりに、損失も税務上使えません。ここは、NISAと特定口座の大きな違いです。
損益通算や繰越控除は便利ですが、申告書作成が必要になります。証券会社の年間取引報告書、国税庁の確定申告書等作成コーナー、税務署への相談を活用しましょう。投資信託の分配金は、商品ごとの性質も見る
投資信託では、配当金ではなく「分配金」という言葉が使われます。分配金にも税金が関係しますが、普通分配金と元本払戻金など、性質が分かれる場合があります。
この記事では入口として、NISA口座、特定口座、確定申告の違いを中心に整理しています。実際には、投資信託の分配金の内訳、国内外の資産、上場投資信託かどうか、外国税額控除の有無などで確認点が増えます。
分配金の多さだけで商品を選ぶと、元本を取り崩しているだけだったり、税金やコストを見落としたりすることがあります。投資信託を選ぶときは、投資信託の選び方|初心者が最初に見るべき5つのポイントもあわせて確認してください。
まとめ|配当金は「受け取った口座」から整理する
配当金と税金は、最初から総合課税や配当控除の細かい計算に入ると難しく見えます。まずは、どの口座で受け取ったのかを確認しましょう。
NISA口座なら、非課税の対象か、配当金の受取方式が合っているかを確認します。特定口座の源泉徴収ありなら、申告しない選択がしやすい一方、配当控除や損益通算を使うなら確定申告が関係します。確定申告するなら、総合課税と申告分離課税の違いを見ます。
税金は、同じ配当金でも人によって結果が変わる分野です。この記事を入口に、自分が「確認すべき場所」を見つけ、必要に応じて税務署や税理士に相談してください。
次に読むなら
参考にした公的情報
- 国税庁「配当金を受け取ったとき(配当所得)」
- 国税庁「上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」
- 国税庁「配当所得があるとき(配当控除)」
- 国税庁「特定口座制度」
- 国税庁「NISA制度」
- 金融庁「NISAを知る」
- 日本証券業協会「NISA口座における上場株式の配当金等受取方式に関する注意事項」
本記事は、2026年5月25日時点で公表されている情報をもとに作成しています。税制、NISA制度、証券会社の取扱いは変更される場合があります。本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務判断、確定申告、金融商品選択を推奨するものではありません。実際の申告や税務判断は、国税庁・税務署・税理士・証券会社等に確認してください。