確定拠出年金やNISAの商品一覧を開くと、「バランス」という名前の投資信託と、「2050」「2060」といった数字がついた投資信託が並んでいます。どちらも1本で分散投資ができると説明されますが、中身の考え方はまったく違います。名前が似ているせいで、違いが分からないまま片方を選んでいる人は少なくありません。

結論を先に言うと、この2つは資産配分を誰が決めるか」と「その配分を時間とともに変えるか」で分かれます。バランスファンドは配分を固定し、ターゲットイヤーファンドは年齢に合わせて配分を動かします。この記事では、両者の仕組みと、実際に選ぶときに見る3つの数字を整理します。

バランスファンドとターゲットイヤーファンドを、資産配分の変化・選ぶ基準・信託報酬・向いている人・注意点の5つの観点で比べた図解
どちらも1本で完結しますが、配分を固定するか動かすかが違います。

この記事でわかること

  • バランスファンドとターゲットイヤーファンドの設計上の違い
  • 確定拠出年金の資産のうち、バランス型が占める割合
  • 選ぶときに見る3つの数字(信託報酬・資産配分・到達後の扱い)
  • 8資産均等型が「中立な配分」ではない理由
  • 他の投資信託と併せ持つと何が起きるか

結論|配分を自分で決めたいかどうかで分かれる

選び方の分かれ目は単純です。自分で資産配分を決めて、そのまま維持したい人はバランスファンド。配分を考えたくない、年齢に合わせて自動で調整してほしい人はターゲットイヤーファンド。この2つを併せ持つ意味はほとんどありません。

バランスファンドは「どの配分にするか」を自分で選ぶ商品です。株式多めの成長型、債券多めの安定型、8資産を均等に持つ型などがあり、選んだ配分は何年たっても変わりません。一方のターゲットイヤーファンドは、目標年に近づくにつれて株式を減らし債券を増やすため、10年後に持っている中身は今とは別物になっています。

なお、資産配分そのものをどう決めるかは老後に向けた資産配分の考え方|増やす資産と守る資産をどう分けるかで扱っています。この記事は「配分をファンドに任せる商品」の選び方に絞ります。

バランスファンドとは|配分を固定して1本で分散する

資産運用業協会は、バランス型について「バランス型とは、国内外の株式、債券など複数の資産に投資する投資信託。このバランス型の投資信託1本だけで複数の種類の資産に分散投資したのと同じ効果が得られます」と説明しています。複数の資産をあらかじめ決めた比率で組み入れ、比率がずれたらファンドの中で自動的に戻す仕組みです。

代表的なのが8資産均等型です。国内株式・先進国株式・新興国株式・国内債券・先進国債券・新興国債券・国内リート・先進国リートの8つを、それぞれ12.5パーセントずつ持ちます。たとえばeMAXIS Slim バランス(8資産均等型)の信託報酬は年0.143パーセント(税込)で、単一資産のインデックスファンドと大きくは変わらない水準です。

最大の利点は、自分でリバランスをしなくてよいことです。株式が上がって配分がずれても、ファンドの中で調整されます。自分で複数のファンドを持つ場合の手順はポートフォリオのリバランスはいつ・どうやるか|頻度と方法の決め方で扱っています。

ターゲットイヤーファンドとは|年齢で株式を減らしていく

資産運用業協会の用語集は、ターゲットイヤー型を「ライフサイクルファンドの一種類で、事前にある年(ターゲットイヤー)を定め、ターゲットイヤーが近づいてくるに連れて組み入れ資産の比率を変更する投資信託のこと」と定義しています。若いうちは株式を多く持ち、目標年が近づくにつれて債券や短期資産へ移していきます。この配分の推移をグライドパスと呼びます。

商品名についている数字が目標年です。野村アセットマネジメントの「マイターゲット」であれば2030から2070まで5年刻みでラインナップされており、信託報酬はターゲットイヤー到達5年前までが年0.242パーセント、それ以降は年0.198パーセント(いずれも税込)とされています。

目標年に着いたら現金になるわけではない

よくある誤解が、ターゲットイヤーに達すると運用が終わって元本が確保される、というものです。実際には運用は続きます。前出のマイターゲットは、ターゲットイヤー到達5年前以降も株式比率を30パーセントに保ちながら無期限で運用を継続する設計です。目標年は「株式を減らし終える年」であって、「使い切る年」でも「運用をやめる年」でもありません。

数字で見る|DC資産の2割、つみたて投資枠の4割強

実際にどれくらい使われているのでしょうか。運営管理機関連絡協議会がまとめた確定拠出年金統計資料(2025年3月末)によると、企業型確定拠出年金の資産のうちバランス型が占める割合は20.9パーセントでした。外国株式型が25.2パーセント、国内株式型が14.3パーセント、預貯金が21.8パーセント、保険が8.5パーセントですから、バランス型は資産クラス別で2番目に大きい塊です。

年代バランス型外国株式型預貯金
20〜29歳25.3%30.0%19.0%
30〜39歳20.2%35.3%17.7%
40〜49歳20.7%30.6%17.8%
50〜59歳21.5%22.0%23.4%
60歳以上18.4%16.9%28.1%

バランス型の比率は20代の25.3パーセントから60歳以上の18.4パーセントまで、どの世代でもおおむね2割前後で安定しています。外国株式型が30.0パーセントから16.9パーセントへ大きく下がるのと対照的です。なお、元本確保型だけで運用している人の割合は2021年3月末の32.1パーセントから2025年3月末には21.2パーセントまで下がりました。

商品の供給側も見ておきます。金融庁が公表しているつみたて投資枠対象商品の分類(2026年8月18日時点)では、対象363本のうち公募投信の資産複合型が157本(国内5本・内外149本・海外3本)を占めます。全体の4割強がバランス型ということです。株式型は197本、ETFは9本でした。

選び方①|信託報酬は年0.14パーセントから年0.6パーセント台まで開く

同じ「1本で分散」でも、コストの幅は大きいと考えてください。金融庁の同じ資料によれば、つみたて投資枠の指定インデックス投資信託の信託報酬率の平均は、投資先を国内とするもので年0.27パーセント、内外・海外とするもので年0.34パーセント(いずれも税抜き)です。法令上の上限は国内型が0.5パーセント、内外・海外型が0.75パーセントと定められています。

低コストのインデックス型は年0.14パーセント台からありますが、アクティブ運用のバランスファンドやターゲットイヤーファンドは年0.5パーセントを超えるものも珍しくありません。30年積み立てるなら、信託報酬の差0.4パーセントは無視できない金額になります。

なお、同統計によれば、確定拠出年金のバランス型のうちパッシブ運用が79.9パーセント、アクティブ運用が20.1パーセントでした。コストで選んだ結果が数字に表れていると読めます。投資信託を選ぶときに見るべき項目全般は投資信託の選び方|初心者が最初に見るべき5つのポイントにまとめています。

選び方②|8資産均等は「中立な配分」ではない

バランスファンドを選ぶときにいちばん見落とされるのが、中身の配分です。8資産均等型は名前のとおり8つに均等配分しますが、これは市場の規模を反映した配分ではありません。世界の株式市場に占める日本の比率は数パーセントですが、8資産均等型では国内株式が12.5パーセント、国内債券が12.5パーセント、国内リートが12.5パーセントで、合計37.5パーセントが日本の資産です。

これは欠陥ではなく、設計思想の違いです。円で生活する人にとって円建て資産を厚めに持つことには意味があります。ただし、「均等だから偏りがない」と考えるのは誤りです。均等配分もひとつの積極的な判断であることは押さえておいてください。分散の考え方そのものは分散投資とは何か|「たくさん買うこと」と「リスクを分けること」は違うで扱っています。

リートを2割以上組み入れている点も確認どころです。リートは株式に近い値動きをすることが多く、下落局面で期待したほど分散が効かないことがあります。債券や預金にどんな役割を持たせるかは債券・預金・現金の役割|老後資金を守る資産の置き場所を参照してください。

選び方③|ターゲットイヤーは「引退年」と一致しない

ターゲットイヤーファンドを選ぶとき、多くの人は自分が65歳になる年を目標年にします。しかし、その年に資産を全部使うわけではありません。65歳から30年生きるなら、資産の大半はその後も運用され続けます。目標年に向けて株式を減らしすぎると、退職後の長い期間に物価上昇へ対抗する力が足りなくなります。

だからこそ、目標年到達後の設計を確認する必要があります。到達後も株式を3割程度残す商品もあれば、さらに下げていく商品もあります。同じ「2050」という名前でも中身は違うので、交付目論見書でグライドパスの図を見てください。50代からの確定拠出年金の考え方はiDeCoは50代からでも意味があるか|節税・運用期間・受け取り方を整理で扱っています。

もうひとつ、確定拠出年金では自分で商品を選ばないまま置いておくと、指定運用方法として規約で定められた商品に掛金が振り向けられます。2018年5月1日施行の改正で導入された仕組みで、確定拠出年金法第23条の2は指定運用方法について「長期的な観点から、物価その他の経済事情の変動により生ずる損失に備え、収益の確保を図るためのものとして厚生労働省令で定める基準に適合するものでなければならない」と定めています。指定運用方法がターゲットイヤーファンドになっている制度では、選んだつもりがなくても持っていることがあります。

よくある失敗|他のファンドと混ぜて配分が壊れる

いちばん多い失敗が、バランスファンドやターゲットイヤーファンドを、外国株式インデックスなど他のファンドと一緒に持ってしまうことです。バランスファンドは1本で完結する設計なので、外国株式を別に足せば、全体の株式比率は自分が想定した水準を超えます。「分散のために2本買った」つもりが、実際にはリスクを上げているという状態です。

確定拠出年金の画面で見るべき2か所

加入者サイトには「掛金の配分割合」と「資産の構成割合」という別々の表示があります。掛金の配分を変えても、すでに積み上がった残高は動きません。残高の中身を変えるには、預け替え(スイッチング)の指図が別に必要です。配分を直したつもりで残高は昔のまま、という取り違えが起こりやすいところです。

確定拠出年金の外にある資産を勘定に入れていないケースもよく見かけます。企業型でバランス型を選び、NISAでも別のバランス型を持ち、さらに預金が厚い。この状態では全体の株式比率が思っているより低くなります。制度をまたいで、家計全体の配分で見てください。

まとめ|3つの問いに答えれば決まる

選ぶときに答えるべき問いは3つだけです。第一に、資産配分を自分で決めたいか。決めたいならバランスファンドの中から配分を選び、決めたくないならターゲットイヤーファンドを選ぶ。第二に、信託報酬は納得できる水準か。年0.14パーセントの選択肢がある一方で年0.6パーセント台の商品もあります。第三に、その1本だけで完結させられるか。他のファンドと混ぜるなら、全体の配分を自分で計算しなおす覚悟が要ります。

確定拠出年金の資産の2割がバランス型に置かれ、つみたて投資枠の対象商品363本のうち157本が資産複合型であることを考えれば、これは特殊な選択ではありません。ただし「1本で分散できる」という説明だけで選ぶと、中身の偏りやコストの差を見落とします。目論見書で配分表とグライドパスの図を開く。それだけで、選び方の精度はかなり上がります。

参考資料

本記事は2026年8月29日時点の公開情報をもとに作成しています。商品の信託報酬や資産配分、制度の要件は改定されることがあるため、購入や商品変更の前に交付目論見書および各官公庁の最新の公表資料をご確認ください。特定の金融商品の購入を勧めるものではありません。