「職務分掌」とは
1つの仕事の流れを複数の人に分担させ、1人だけで最初から最後まで完結できないようにすること。ミスや不正を防ぐ内部統制の基本的な手法。
📌 投資判断のポイント
1つの仕事の流れを承認・実行・記録・照合などに分け、複数の人に分担させること。1人で完結できない形にしてミスや不正を防ぐ、内部統制の基本の手法。
職務分掌はどういう仕組み?
お金に関わる仕事は、取引を決める(承認)、お金や物を実際に動かす(実行)、帳簿に付ける(記録)、残高を確かめる(照合)といった段階に分けられる。これらを同じ人が担うと、間違いがあっても誰も気付かず、不正があっても隠せてしまう。そこで段階ごとに担当者を分け、ある人の仕事を別の人の仕事が自然に確かめる形にする。会社の規程では、部署や役職ごとの仕事の範囲と権限を定めた「職務分掌規程」としてまとめられることが多い。
職務分掌の具体例と注意点は?
仕入れの代金を払うとき、発注する人、品物を受け取って確認する人、支払いを承認する人、銀行で振込をする人を分ければ、架空の請求書で払わせるような不正は1人では成り立たない。ただし人数の少ない会社では完全な分担は難しい。その場合は、社長が月に1回、預金通帳と帳簿を自分で照合するなど、別の確認で補うのが現実的である。複数の担当者が共謀すれば防げない点も、職務分掌の限界として知っておきたい。
家計での職務分掌
家族でお金を管理するときにも同じ考え方は使える。カードの明細を、使った本人とは別の家族が毎月見るだけでも、使いすぎや身に覚えのない請求に早く気付ける。米国ユタ州の高校向け会計科目の基準も、現金を守るための内部統制として、レジと金庫の使用、毎日の入金と並べて職務の分担を教えている。
ITの時代の職務分掌
会計ソフトや銀行のネットバンキングを使う会社では、システムの権限の分け方も職務分掌の一部になる。例えば、振込のデータを作る権限と、それを承認して実行する権限を別の人に割り当てる。会計ソフトでも、仕訳を入力する人と承認する人、締めた月の数字を後から直せる人を限っておく。パスワードを共有して1つのアカウントを複数の人が使うと、誰が何をしたかが記録に残らず、分担の意味がなくなる。人数が2〜3人の会社でも、権限の設定を見直すだけで不正やミスのリスクを大きく下げられる。
例えば社員が10人の会社でも、支払いの承認を社長、振込の実行を経理担当、月1回の通帳と帳簿の照合を別の役員と、3つの役割に分けるだけで、1人で完結できる仕事はなくなる。分担を決めたら規程や手順書に書き、担当者が交代しても続くようにし、少なくとも1年に1回は分担が守られているかを見直す。
関連用語
ミスや不正を防ぎ、仕事を正しく進めるために社内に組み込む仕組みや手順の全体。上場会社は財務報告に関わる部分を経営者が評価し、内部統制報告書で開示する。
不正は「動機」「機会」「正当化」の3つがそろったときに起きるという考え方。会社が直接減らしやすいのは機会で、内部統制の多くはそのために置かれている。
財務報告の作成体制が機能しているかを経営者が自己評価する書類。有効でないという結論が続く企業は、決算数値以前に経営管理の質を疑う材料になります。
少額の支払いのために会社が手元に置く現金。定額を前渡しし、使った分を領収書と引き換えに補充する定額資金前渡法が一般的で、管理と照合の仕組みが欠かせない。
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