「不正のトライアングル」とは
人が不正に手を染めるのは、「動機」「機会」「正当化」の3つの条件がそろったときだ、という考え方。会社の不正を防ぐ仕組みづくりの土台として広く使われている。
📌 投資判断のポイント
不正は「動機」「機会」「正当化」の3つがそろったときに起きるという考え方。会社が直接減らしやすいのは機会で、内部統制の多くはそのために置かれている。
不正のトライアングルはどういう仕組み?
米国の犯罪学者ドナルド・クレッシーが1950年代に横領犯への聞き取りをもとに示した説が元になっている。動機(プレッシャー)は、借金や厳しい売上目標のように不正をしたくなる事情。機会は、1人でお金の出し入れと記録を任されているなど、不正ができてしまう環境。正当化は、「一時的に借りるだけ」「会社のためだ」のように自分を納得させる理屈である。3つのうち会社が直接手を入れやすいのは機会で、仕事の分担や承認の手順、定期的な照合といった内部統制は、主にこの機会を減らすために置かれている。
不正のトライアングルの具体例と注意点は?
小さな店で、売上の現金の受け取り、帳簿付け、銀行への入金を1人の店員がすべて担当していると、記録を書き換えて現金を抜いても気付かれにくい。ここに家計の苦しさという動機と、「残業代が出ないぶんの埋め合わせ」という正当化が加わると、不正の条件がそろう。動機や正当化は外から見えにくいので、まず機会を減らすのが現実的な対策になる。
学校の授業での扱い
米国ユタ州の高校向け会計科目の基準では、現金の管理の単元で、不正のトライアングルの3要素と内部統制との関係を説明することが求められている。レジと金庫の使用、毎日の入金、職務の分担と並べて教えられ、会計の記録を作る力と、記録を守る仕組みを一緒に学ぶ構成になっている。
投資家が気を付けたい兆候
会社の不正会計も、同じ3つの条件で説明されることが多い。厳しい業績目標や、借入れの条件を守らなければならない事情は、経営者にとっての動機になる。経営者に権限が集中して取締役会や監査の目が届かない状態は、機会にあたる。決算の訂正が続く、監査人が短い期間で何度も交代する、利益は増えているのに営業キャッシュフローがマイナスのまま、といった兆候が重なる会社は、慎重に見たほうがよい。いずれも不正の証拠ではないが、決算書の数字をそのまま信じてよいかを考える手がかりになる。
公認不正検査士協会(ACFE)など不正の調査に関わる団体も、この3要素を不正の予防と発見の基本的な枠組みとして紹介している。後の研究では、能力を加えた4つの要素で説明する考え方も出ている。
関連用語
ミスや不正を防ぎ、仕事を正しく進めるために社内に組み込む仕組みや手順の全体。上場会社は財務報告に関わる部分を経営者が評価し、内部統制報告書で開示する。
1つの仕事の流れを承認・実行・記録・照合などに分け、複数の人に分担させること。1人で完結できない形にしてミスや不正を防ぐ、内部統制の基本の手法。
利益を良く見せるために決算書の数字をゆがめる行為。利益は増えても現金は増えないため、利益と営業キャッシュフローの差が広がり続ける会社には注意したい。
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