「逆選択」とは
売り手と買い手の間に情報の差(情報の非対称性)があるとき、質の悪い商品や、リスクの高い取引相手ほど市場に残ってしまう現象のことです。
📌 投資判断のポイント
取引する両者の持つ情報に差があるとき、条件の悪い相手ほど取引に集まってしまう現象。保険ではリスクの高い人ほど加入しやすくなる。告知義務や強制加入はこれを防ぐための仕組みである。
逆選択はどういう仕組み?
経済学者ジョージ・アカロフは1970年の論文で、中古車市場を例にこの現象を説明しました。売り手は自分の車の状態を知っていますが、買い手には見分けがつきません。そのため買い手は平均的な品質を前提に値段を付けます。すると、状態の良い車の持ち主は安すぎると感じて売らなくなり、市場には状態の悪い車(レモン)ばかりが残ります。この論文は「レモン市場」として知られ、アカロフは2001年にノーベル経済学賞を受けました。
保険でも同じことが起きます。加入する人は自分の健康状態をよく知っていますが、保険会社は完全には分かりません。平均的なリスクで保険料を決めると、健康に不安のある人ほど加入し、健康な人は割高だと感じて加入しなくなります。支払いが増えて保険料が上がると、さらに健康な人が抜けるという悪循環が起きます。
逆選択の具体例と注意点は?
生命保険や医療保険の加入時に健康状態の告知が求められるのは、この逆選択を防ぐためです。告知の内容に偽りがあれば、契約が解除されたり保険金が支払われなかったりすることがあります。公的医療保険や公的年金が全員加入を原則にしているのも、リスクの低い人だけが抜けて制度が成り立たなくなることを防ぐ意味があります。
逆選択を和らげるもう一つの方法は、情報を持つ側に自分の質を示させることです。中古車の販売店が保証を付けるのは、状態の良い車であることを買い手に伝えるためで、経済学ではシグナリングと呼ばれます。保険会社が健康診断の結果に応じて保険料を割り引く商品も、同じ考え方に立っています。
金融では、高い金利を提示する貸し手に、返済能力の低い借り手が集まりやすいことも逆選択の例です。
モラルハザードとの違い
逆選択は契約を結ぶ前の情報の差から起きる問題で、「どんな相手が集まるか」に関わります。モラルハザードは契約を結んだ後に相手の行動が変わる問題で、「契約後にどう振る舞うか」に関わります。保険でいえば、健康に不安のある人ほど加入するのが逆選択、加入した後に健康への注意がおろそかになるのがモラルハザードです。
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