モラルハザード

リスク管理
よみ:もらるはざーど
監修:所得向上委員会 編集部(編集責任者:加藤 寛) 編集方針
🗂 投資戦略・リスクを管理する ★★ 標準

「モラルハザード」とは

契約や制度によって損失の一部を他人が負担してくれるようになった結果、当事者の注意が緩んだり、より大きなリスクを取ったりするようになる現象のことです。日本語の「倫理の欠如」とは意味が異なり、経済学ではインセンティブ(動機づけ)の問題として扱います。

📌 投資判断のポイント

契約によって損失を負わなくてよくなった側が、注意を怠ったり、より大きなリスクを取ったりする現象。保険の自己負担や、銀行への自己資本規制はこれを抑えるために置かれている。

モラルハザードはどういう仕組み?

もとは保険の用語です。火災保険に入った人が、火の元への注意を以前ほど払わなくなると、保険会社が想定していたより事故が起きやすくなります。保険会社は加入者の日々の行動を監視できないため、この変化を保険料に反映しきれません。

金融の世界では、経営が行き詰まっても政府や中央銀行が救済してくれると期待される大手金融機関が、より高いリスクを取る問題として論じられます。2008年の金融危機の後、「大きすぎて潰せない」問題への対応として、大手金融機関に上乗せの自己資本を求めるなどの規制が国際的に強化されました。

モラルハザードの具体例と注意点は?

モラルハザードを抑える方法の基本は、損失の一部を本人に残すことです。

  • 自動車保険の免責金額や、医療保険の自己負担:事故や受診の費用の一部を本人が負う
  • 自動車保険の等級制度:事故を起こすと翌年以降の保険料が上がる
  • 銀行の自己資本規制:損失をまず株主の資本で吸収させる
  • 預金保険の上限:元本1,000万円とその利息までに保護を限る

預金保険の上限は、預金者にも預け先の銀行を選ぶ注意を残すための仕組みでもあります。

医療保険の分野では、窓口での自己負担が1割、2割、3割と年齢や所得で分かれています。自己負担をゼロにすると受診が必要以上に増えるおそれがあるため、一定の負担を残して受診の判断を本人に委ねているとも説明されます。一方で、負担が重すぎると必要な受診まで控えてしまうため、高額療養費制度で月ごとの上限を設けています。モラルハザードを完全に無くすことはできないため、制度の設計では、保護の手厚さと本人の注意を残すことの釣り合いが常に問われます。

逆選択との違い

逆選択は、契約の前に情報の差があるため、リスクの高い相手ほど集まる問題です。モラルハザードは、契約の後に相手の行動が変わる問題です。逆選択への対策は加入時の審査や告知、モラルハザードへの対策は自己負担や監視というように、打つべき手も異なります。

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