親の介護が施設を考える段階に入ると、最初に出てくるのが費用の話です。 ところが調べ始めると、月6万円と書いてある施設もあれば、入居時に数百万円と書いてある施設もあります。

これは施設によって値段が違うという話ではありません。 費用の決まり方そのものが違う2つの仕組みが、同じ「老人ホーム」という言葉でまとめられているためです。 そこを分けて見れば、比べられるようになります。

高齢者施設の費用を、介護保険施設と民間の住まいに分けて、初期費用・居住費・食費・介護費の決まり方の順に整理した図解
まず「公的な施設」か「民間の住まい」かを分けます。

この記事でわかること

  • 公的な介護保険施設と民間の住まいでは、費用の決まり方が根本的に違うこと
  • 2026年8月から食費・居住費の負担限度額が引き上げられたこと
  • 所得が低い世帯は同じ部屋でも月額が半分近くになること
  • 入居一時金には返還のルールがあり、90日以内なら原則戻ること
  • 介護費の払い方が定額制と使った分だけの2通りあること

結論|「介護保険の施設」か「民間の住まい」かで分ける

高齢者向けの住まいは大きく2つに分かれます。この線引きが費用の構造を決めます。

区分主な施設費用の決まり方
介護保険施設
(公的)
特別養護老人ホーム(特養)
介護老人保健施設(老健)
介護医療院
居住費・食費に国が決めた基準額がある。所得が低いと補助が入る。入居一時金なし
民間の住まい 介護付き有料老人ホーム
住宅型有料老人ホーム
サービス付き高齢者向け住宅
グループホーム
事業者と入居者の契約で決まる。入居一時金がある場合とない場合がある

特養は原則として要介護3以上

公的な施設のうち最も費用が抑えられる特養は、2015年4月から入所が原則要介護3以上に限られています。 要介護1・2でも、認知症の症状で在宅生活が著しく困難といった事情があれば特例入所の対象になり得ますが、 判断は市町村と施設が行います。「安いから特養」と決めても、入れるとは限りません。

介護保険施設の費用は4つの費目に分かれる

費目中身軽減のしくみ
施設サービス費介護サービスの対価。1〜3割が自己負担高額介護サービス費で月額に上限
居住費部屋代・光熱水費負担限度額認定(補足給付)
食費1日3食分同上
日常生活費理美容・おむつ・レクリエーション等軽減なし

介護費全体の考え方は「親の介護費はいくらかかるのか」で扱っています。ここでは施設に絞ります。

2026年8月から食費・居住費の基準が変わった

居住費と食費には、国が定めた標準額(基準費用額)があります。 2026年8月1日から食費の基準費用額が1日あたり100円引き上げられました。

費目・居室日額月額の目安
食費1,545円約4.7万円
ユニット型個室2,066円約6.3万円
ユニット型個室的多床室1,728円約5.3万円
従来型個室(特養等)1,231円約3.7万円
多床室(特養等)915円約2.8万円
多床室(老健・医療院/室料を徴収しない場合)437円約1.3万円

同じ特養でも、相部屋(多床室)と個室(ユニット型)では居住費だけで月3.5万円ほど違います。 施設を選ぶとき、まず見るのは施設名ではなく居室のタイプです。

所得が低い世帯は負担限度額認定で下がる

市町村民税が非課税の世帯などは、申請して認定を受けると居住費と食費が下がります。 段階は所得と預貯金額で決まります。

段階主な要件預貯金(夫婦)
第1段階生活保護受給者など1,000万円(2,000万円)以下
第2段階世帯全員が非課税で、年金収入+合計所得が82.65万円以下650万円(1,650万円)以下
第3段階①同 82.65万円超〜120万円以下550万円(1,550万円)以下
第3段階②同 120万円超500万円(1,500万円)以下
第4段階世帯に課税者がいる対象外(基準費用額どおり)

2026年8月からは、この段階を分ける年金収入等の基準が80.9万円から82.65万円に見直され、 第3段階①・②の食費が1日30〜60円、居住費が一部を除き1日100円引き上げられました。

段階食費(日額)多床室・特養等(日額)ユニット型個室(日額)
第1段階300円0円880円
第2段階390円430円880円
第3段階①680円430円1,370円
第3段階②1,420円530円1,470円

預貯金額も要件に入る

この認定は所得だけで決まりません。単身で第2段階なら預貯金650万円以下という資産要件があります。 通帳の写しの提出を求められ、虚偽の申告には加算金があります。 また申請しなければ適用されません。施設に入ってから気づく家族が多い制度です。 申請のタイミングは「親の介護とお金」で整理しています。

同じ部屋でも月額はここまで変わる

特養の多床室・要介護5で、1か月30日として概算すると次のようになります。

費目第4段階(課税世帯)第2段階
施設サービス費(1割)約26,000円約24,600円※
居住費27,450円12,900円
食費46,350円11,700円
日常生活費約10,000円約10,000円
合計約11.0万円約5.9万円

※非課税世帯は高額介護サービス費の上限(世帯24,600円)が効きます。地域や施設の体制加算により実際の金額は変わります。

民間の住まいは初期費用と月額の組み合わせで決まる

民間の施設には国が決めた居住費の基準がありません。家賃・管理費・食費を事業者が設定します。 そのぶん幅が大きく、同じ地域でも月額が2倍以上違うことがあります。

入居一時金は「前払家賃」であって預り金ではない

有料老人ホームの入居一時金(前払金)は、想定居住期間の家賃などを前払いする性質のものです。 入居時に一定割合を初期償却として差し引き、残りを月数で割って毎月取り崩していく契約が一般的で、 退去時には未償却分が返還されます。

前払金に関する法律上のルール

  • 短期解約特例(90日ルール)/入居後おおむね90日以内に契約を解除した場合、実費相当額を除いて前払金が返還される
  • 保全措置/事業者が倒産しても一定額が返還されるよう、銀行の保証等を講じることが義務づけられている
  • 算定根拠の明示/想定居住期間・初期償却の割合・返還金の計算方法を契約書で示す必要がある

つまり、入居してすぐ体調が変わって退去することになっても、90日以内なら原則として戻ります。 逆に想定居住期間を過ぎると返還はありません。何年分の前払いなのかを必ず確認してください。

サービス付き高齢者向け住宅は「住宅」である

サービス付き高齢者向け住宅は、高齢者住まい法に基づいて都道府県等に登録された賃貸住宅です。 登録の基準として、床面積は原則25平方メートル以上、廊下幅・段差解消・手すりのバリアフリー構造、 そして状況把握サービスと生活相談サービスの提供が求められます。

費用の面で重要なのは、契約基準として敷金・家賃・サービス対価以外の金銭を徴収しないと 定められている点です。権利金のような名目の一時金は取れません。長期入院を理由に事業者から一方的に 解約できないことも登録の条件です。入居できるのは60歳以上の人、または要支援・要介護認定を受けた人です。

介護費の払い方が2通りある

民間施設を比べるとき、月額表示だけを見ると判断を誤ります。介護費の払い方が施設によって違うためです。

方式該当する施設介護費の決まり方
定額(特定施設入居者生活介護) 介護付き有料老人ホーム、介護型のサービス付き高齢者向け住宅 要介護度ごとの定額。使う量が増えても自己負担は変わらない
使った分だけ(外部サービス利用) 住宅型有料老人ホーム、一般型のサービス付き高齢者向け住宅 訪問介護等を必要な分だけ契約。使う量に応じて増える

後者には上限があります。介護保険で使えるサービスの量は要介護度ごとに区分支給限度基準額として決まっており、 要介護5なら1か月36,217単位(1単位はおおむね10円)です。これを超えて使った分は全額自己負担になります。

入居時に要介護1で月額が安く見えても、介護度が上がると外部サービスの利用が増え、 限度額を超えた分がそのまま上乗せされます。今の介護度ではなく、重くなったときの月額を試算してください。

自己負担には月額の上限がある

施設サービス費や介護サービスの自己負担(1〜3割)が高額になったときは、高額介護サービス費で払い戻されます。 居住費・食費・日常生活費は対象外です。

区分負担の上限(月額)
課税所得690万円以上140,100円(世帯)
課税所得380万円〜690万円未満93,000円(世帯)
市町村民税課税〜課税所得380万円未満44,400円(世帯)
市町村民税非課税世帯24,600円(世帯)
生活保護受給者など15,000円(個人)

医療費も多い年は、高額医療・高額介護合算療養費もあります。医療側のしくみは 「高額療養費制度とは」で扱っています。

見学のときに必ず確認すること

  1. 月額表示に介護費が含まれているか(定額か、使った分だけか)
  2. 入居一時金がある場合、想定居住期間と初期償却の割合、返還金の計算方法
  3. 介護度が重くなったとき、住み続けられるか(退去要件)
  4. 医療的なケアが必要になったときの対応(看護職員の配置時間)
  5. 月額に含まれない費用(おむつ代・通院付き添い・レクリエーション費)

支払いは長期にわたります。親名義の預金から払うのか子が立て替えるのかを先に決めておかないと、 途中で口座が使えなくなって止まります。「親の口座が凍結される前と後にできること」も合わせて確認してください。

まとめ|居室のタイプ・所得段階・介護費の払い方で決まる

施設の費用は、施設名で決まるのではありません。公的か民間か、居室が個室か相部屋か、 世帯の所得段階がどこか、介護費が定額か従量か。この4つで決まります。

公的な施設なら、負担限度額認定を申請するかどうかで月額が半分近く変わります。 民間の施設なら、入居一時金の償却条件と、介護度が重くなったときの月額が判断の分かれ目になります。

まずは地域包括支援センターに相談し、要介護認定の区分と、使える軽減制度を確認するところから始めてください。 金額の比較はそのあとです。

参考資料

本記事は2026年8月7日時点の公開情報をもとに作成しています。 金額は制度改正や地域区分、施設の体制によって変わり、軽減制度の適用可否は世帯の状況によって判断されます。 実際の検討にあたっては、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口または地域包括支援センターにご確認ください。