退職の日が決まって、人事から書類の束を渡された。その中に「企業型確定拠出年金」の案内が入っていたら、後回しにしないでください。会社で積み立ててきた年金のお金は、退職金のように自動で銀行口座へ振り込まれるわけではないんです。

転職先の制度やiDeCoなど、受け入れてくれる制度へ自分で移す必要があります。これを移換といいます。資格を失ってから原則6カ月以内に手続きをしないと、お金は国民年金基金連合会へ自動で移され、運用されないまま手数料が引かれていきます。

企業型DCの転職・退職時の移換先と6カ月放置による自動移換を整理した図解
▲ 企業型DCは転職・退職後の移換手続きを放置しない

この記事で分かること

  • 企業型DCとiDeCoの違いと、転職・退職後の移換先
  • 原則6カ月以内に手続きしないと起きる自動移換の不利益
  • 退職前にそろえておきたい書類と情報

結論|期限は資格喪失から原則6カ月。退職前に移換先を決めておく

企業型DCの資格を失ったら、まず転職先の企業年金制度を確かめます。転職先に企業型DCがあればそこへ、なければ加入資格を確かめたうえでiDeCoへ移すのが基本です。期限は資格喪失から原則6カ月以内。退職前に残高・資格喪失日・移換先・提出書類の4つを確かめておけば、自動移換は防げます。

企業型DCとiDeCoは、どこが違うのか

どちらも確定拠出年金です。決められた掛金を積み立て、加入者が自分で運用商品を選び、その結果で将来受け取る金額が変わります。違うのは、誰が制度を用意し、誰が掛金を出し、誰が手続きをするかです。

項目 企業型DC iDeCo
制度の実施 勤務先 個人で加入
掛金 事業主拠出が基本 本人が拠出
金融機関・窓口 勤務先が選定した制度 本人が運営管理機関を選ぶ
転職・退職時 移換手続きが必要 働き方変更時に登録変更等を確認

勤務先の規約によっては、企業型DCに本人が掛金を上乗せできたり、iDeCoと併用できたりする場合もあります。ただ、掛金の上限や条件は勤務先の制度や法改正で変わるので、個別の金額は勤務先とiDeCo公式情報で確かめてください。iDeCoの仕組みはiDeCoとは何かで紹介しています。

退職しても、お金は自動で受け取れない

確定拠出年金は、原則60歳まで自由に引き出せない老後資金の制度です。退職で加入資格を失っても、積み立てた分が退職金として支払われることはありません。受け入れてくれる別の制度へ移す手続きが要ります。

見落としやすいのは、退職金の手続きと企業型DCの移換手続きが別だという点です。人事や総務から届く案内は、分けて保管しておきましょう。

転職・退職後、どこへ移すか

転職・退職後の状況 主な確認先 確認する移換先
転職先の企業型DCへ加入 転職先の人事・運営管理機関 転職先の企業型DC
転職先に企業型DCがない 選択するiDeCo運営管理機関 iDeCo等
自営業・無職等になる iDeCo運営管理機関 加入資格を確認しiDeCo等
他の企業年金制度がある 転職先の人事・制度窓口 受入可否を確認

転職先に企業型DCがあっても、資産が自動で移るとは限りません。加入手続きと資産移換の書類が別になっていることがあるので、前職の資産を移す手続きを転職先の人事に確かめてください。

iDeCoへ移す場合は、新たに掛金を出す「加入者」になるか、掛金を出さず運用だけ続ける「運用指図者」になるかを選びます。どちらになれるかは、加入資格と希望で変わります。

6カ月を過ぎると、何が困るのか

期限を過ぎると、お金は国民年金基金連合会へ自動移換されます。消えるわけではありませんが、安全に預かって運用してくれる仕組みでもないんです。

  • お金が運用されない
  • 自動移換・管理・再移換などの手数料がかかる
  • 自動移換中の期間は通算加入者等期間に数えられず、老齢給付金を受け取れる時期が遅れる場合がある

あとからiDeCoや転職先の企業型DCへ移せる場合もありますが、書類・手数料・処理時間が増えます。退職後すぐに動いたほうが、手間は少なくて済みます。

退職前にそろえたい情報と、iDeCoへ移す流れ

退職後にゼロから調べるより、在職中に次の情報をそろえておくと進めやすくなります。

  • 企業型DC制度の名称・運営管理機関・加入者口座番号
  • 資格喪失日、現在の残高と運用商品
  • 転職先に企業型DCや他の企業年金があるか、資産を受け入れるか

iDeCoへ移すなら、加入資格を確かめ、手数料や商品を比べて運営管理機関を選び、資産移換を含む書類を出します。完了したら、掛金を出すかどうか、運用商品、残高と完了通知を確かめましょう。住所や氏名が変わる場合は登録情報の変更も必要です。書類は手続きが終わるまで保管してください。

50代以降で移す場合は、受給開始までに必要な通算加入者等期間や、退職金との受け取り時期も確かめておきたいところです。50代からのiDeCoも参考になります。

ここは誤解しやすいポイント

  • 保有していた商品をそのまま持ち運べるとは限りません。一般には商品を売って現金にしたうえで移し、移換先で選び直します。売却時の値動きや、移換中・商品を指定する前に運用されない期間が生じることがあるので、書類が届いたら早めに移換先の商品を確かめましょう。期限が迫っていても、手数料や商品の説明を比べずに急いで選ぶ必要はありません
  • 移換は老後資産を別の制度へ引き継ぐ手続きで、現金を受け取る手続きではありません。将来、一時金で受け取れば退職所得、年金形式なら公的年金等に係る雑所得の考え方が関係し、退職金との受け取り時期で扱いが変わる場合があります。詳しくは退職金と税金で確かめてください

まとめ|退職の書類と一緒に、移換先を決める

  • 企業型DCの資産は退職しても自動では受け取れず、転職先の企業型DCやiDeCoなどへ移す手続きが要る
  • 資格喪失から原則6カ月以内に手続きしないと自動移換になり、運用されず手数料が引かれる
  • 移換が終わったら、残高と運用商品の指定まで確かめ、自動移換になっていないかを見る

よくある質問

Q. 企業型DCとiDeCoは何が違いますか?
企業型DCは勤務先が実施し、事業主が掛金を拠出するのが基本です。iDeCoは個人が加入手続き、金融機関選び、掛金拠出、運用を行います。どちらも加入者が運用商品を選ぶ確定拠出年金で、原則60歳まで自由に引き出せません。
Q. 会社を退職したら企業型DCの資産はどうなりますか?
通常は自動で現金支給されません。転職先の企業型DC、iDeCo、その他受入可能な企業年金制度等へ資産を移す手続きが必要です。移換先は転職先の制度、年齢、加入資格等で変わるため、退職前に勤務先と運営管理機関へ確認してください。
Q. 企業型DCの移換手続きをしないとどうなりますか?
資格喪失後、原則6カ月以内に手続きをしないと、資産が国民年金基金連合会へ自動移換されます。自動移換中は資産が運用されず、管理手数料等が差し引かれ、通算加入者等期間へ算入されないため受給開始可能時期が遅れる場合があります。
Q. 転職先に企業型DCがない場合はどうしますか?
iDeCoへ資産を移換することが主な選択肢になります。掛金を拠出して加入者となるか、掛金を出さず運用だけを続ける運用指図者となるかは、本人の加入資格や希望で変わります。iDeCoの運営管理機関へ確認してください。
Q. 企業型DCで持っていた商品をそのままiDeCoへ移せますか?
一般には企業型DC内の商品を売却して現金化した資産を移換し、移換先で改めて運用商品を選びます。移換中は運用されない期間が生じる場合があるため、書類到着後は早めに商品を指定してください。

参考資料

本記事は2026年10月26日時点の公開情報をもとに作成しています。本記事は一般的な制度情報を整理したもので、特定の移換先・金融機関・運用商品を推奨するものではありません。移換先、加入資格、掛金上限、期限、手数料、受給要件は勤務先制度・年齢・法改正等で異なります。最新情報は旧勤務先・転職先、運営管理機関、iDeCo公式サイト、国民年金基金連合会、厚生労働省等へご確認ください。