優待クロス

株式投資
よみ:ゆうたいくろす
監修:所得向上委員会 編集部(編集責任者:加藤 寛) 編集方針
🗂 株価・企業を分析する ★★ 標準

「優待クロス」とは

株主優待の権利を得るために、権利付最終日に現物株を買うと同時に、同じ銘柄・同じ株数を信用取引で売っておき、株価変動の影響を抑えながら優待を受け取る手法。「つなぎ売り」「クロス取引」とも呼ばれる。

📌 投資判断のポイント

権利付最終日に現物買いと同株数の信用売りを同時に行い、値動きを相殺しながら株主優待を得る手法。逆日歩や貸株料、配当にかかる税金の差がコストになる。

優待クロスはどういう仕組み?

権利付最終日の取引終了時点で株を持っていれば、権利確定日に株主名簿に載る。そこで、現物の買いと信用の売りを同じ値段で約定させておく。権利落ち日以降は、持っている現物株を信用売りの返済にあてる現渡しで、両方の建玉を解消する。株価が下がっても現物の損失と信用売りの利益が相殺され、差し引きで残るのは手数料と信用売りのコストになる。

日本株の受渡しは2019年7月から約定日の2営業日後になったため、権利確定日の2営業日前が権利付最終日になる。

優待クロスの具体例と注意点は?

コストは主に3つある。制度信用で売ったときに株不足が生じるとかかる逆日歩、一般信用で売ったときの貸株料、そして売買手数料である。逆日歩は事前に金額がわからず、人気の優待銘柄では優待の価値を上回ることもある。一般信用なら逆日歩はかからないが、売り建てている日数分の貸株料がかかり、売れる株数にも限りがある。

配当の扱いにも注意がいる。現物株で受け取る配当には20.315%の税金がかかる一方、信用売りの側は税引前の配当に相当する配当落調整額を支払うため、差額が持ち出しになる。

空売りとの違い

通常の空売りは値下がりで利益を狙う取引だが、優待クロスの信用売りは、現物の値動きを打ち消すためのヘッジである。株価の予想は必要ないかわりに、売り建てる期間の長さと信用売りのコストが損益を決める。優待の価値とコストを事前に比べ、コストが上回る銘柄は見送る判断が大切になる。

例えば3,000円相当の優待を得るために、一般信用で売り建てて貸株料と手数料が合計800円かかれば、差し引きの手取りは2,200円相当になる。これに配当の税金の差が加わる。制度信用で売り建てた場合は、権利付最終日をまたぐ受渡しの関係で逆日歩が数日分まとめて課されることがあり、同じ銘柄でも年によって損益が大きく変わる。

また、優待の条件に長期保有を求める会社が増えており、権利確定日の前後だけ株を持つ優待クロスでは受け取れない優待もある。株主名簿に連続して記載されることを条件にしている場合は、優待クロスの対象にならないことを事前に確かめておきたい。

関連用語

株主優待

企業が株主に提供する特典で、日本では広く普及している制度。配当とは異なる形のリターンだが、投資判断は総合的に行う必要がある。

権利確定日(権利付き最終日)

配当・優待の権利が確定する基準日。実際に得るには2営業日前の権利付き最終日までに保有が必要。権利落ち日は配当分だけ株価が下がりやすく、権利取りだけの短期売買は下落で相殺されやすい。

逆日歩

逆日歩は株不足時に売り方が払う追加コスト。優待クロスでも重要な注意点。

貸株料

信用取引の売りで株式を借りている売り方が、売付代金に年率をかけて日割りで支払う費用。株不足のときだけ発生する逆日歩とは別で、建玉を長く持つほど積み上がり、値下がりで得た利益を削る。

一般信用取引

返済期限や対象銘柄を証券会社が個別に定める信用取引で、無期限とする会社が多い。金利は制度信用取引より高めで、売り建ては在庫次第。期限がない分、撤退の水準は自分で決めておく必要がある。

制度信用取引

取引所のルールに沿った信用取引で、返済期限は最長6か月、対象は制度信用銘柄に限られる。金利は低めだが、売り建てには逆日歩が発生することがあり、金額は事前にわからない。期限が来れば含み損でも決済が必要になる。

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