「ヘルシュタットリスク」とは
外国為替の取引で、異なる通貨の受け渡しが時差によってずれるため、自分は通貨を渡したのに相手からは受け取れない、という事態が起きるリスク。1974年に破綻したドイツのヘルシュタット銀行の事件に由来する名前である。
📌 投資判断のポイント
外国為替の取引で、通貨の受け渡しが時差でずれ、片方だけ支払って相手から受け取れないリスク。1974年のヘルシュタット銀行破綻に由来し、2002年稼働のCLS銀行がこの対策の柱となった。
ヘルシュタットリスクはどういう仕組み?
ドルと円を交換する取引では、円は日本の決済システムで、ドルは米国の決済システムで受け渡される。両国の営業時間は重ならないため、片方の通貨を先に支払い、数時間後にもう片方を受け取る形になる。その間に取引相手が破綻すると、支払った分だけが失われる。1974年6月26日、西ドイツ当局は営業時間の終了後にヘルシュタット銀行の業務を停止させ、ドイツマルクを受け取ったあとでドルを支払う予定だった取引が履行されず、相手の銀行が損失を被った。
この事件をきっかけに、主要国の中央銀行と銀行監督当局は1974年末にバーゼル銀行監督委員会を設け、国際的な銀行監督の協調を始めた。銀行の自己資本比率規制として知られるバーゼル規制も、この委員会で議論されたものである。一つの銀行の破綻が時差を通じて他国の銀行に損失を広げうることが、国際協調の必要性を示した。
ヘルシュタットリスクの具体例と注意点は?
日本の銀行が朝に1億円を支払い、同じ日の夜にニューヨークで約67万ドルを受け取る取引で、その間に相手が破綻すれば1億円がそのまま戻らないおそれがある。この問題に対処するため、2002年に複数の通貨の受け渡しを同時に行うCLS銀行の仕組みが稼働し、主要通貨の取引の多くはここを通じて決済されるようになった。
決済リスク・カウンターパーティリスクとの関係
決済リスクは、取引の受け渡しが予定どおり行われないリスクの総称で、ヘルシュタットリスクはその代表例にあたる。カウンターパーティリスクは取引相手の信用全般にかかわる広い概念である。個人がFXや外貨預金で直接負うことは少ないが、金融システムの安定を考えるうえで欠かせない概念とされる。
日本でも、外国為替取引の円の受け渡しは日本銀行の当座預金を使う外国為替円決済制度を通じて行われており、主要な銀行はCLS銀行にも参加している。
CLS銀行では、2つの通貨の受け渡しを同時に行う「PVP(Payment versus Payment)」という方式がとられ、片方だけが支払われる事態を防いでいる。
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