「全部原価計算」とは
全部原価計算とは、製品を作るためにかかった材料費・労務費・経費を、変動費か固定費かを問わずすべて製品の原価に含めて計算する方法である。外部に公表する決算書は、この考え方で作られる。
📌 投資判断のポイント
固定費も含めて製造にかかった費用をすべて製品の原価に入れる計算方法。公表する決算書の基本で、作りすぎると在庫に固定費が残り、利益が大きく見えることがある
全部原価計算はどういう仕組み?
全部原価計算では、工場の家賃や設備の減価償却費のように作る量に関係なくかかる固定費も、製品1個ずつに割り振って原価に入れる。そのため、売れ残って在庫になった製品には固定費の一部も含まれたまま、次の期に持ち越される。これに対して、変動費だけを製品の原価とし、固定費はその期の費用として処理するのが直接原価計算である。全部原価計算は決算書の作成に、直接原価計算は社内での利益計画や判断にと、使い分けられることが多い。
全部原価計算の具体例と注意点は?
例えば固定費が月100万円の工場で、1,000個作って800個売った場合、全部原価計算では固定費のうち200個分にあたる20万円が在庫に含まれて翌月へ持ち越される。そのため、売れる以上に多く作ると、その月の利益が大きく見えることがある。在庫が急に増えている会社では、利益の中身を在庫の動きと合わせて確かめたい。
直接原価計算との使い分け
直接原価計算では、売上から変動費を引いた限界利益をもとに、売上がどれだけ増えれば利益がいくら増えるかを見通しやすい。全部原価計算は外部への報告に、直接原価計算は損益分岐点の分析や値決めの判断にと、目的によって使い分けるのが一般的である。両方の数字を比べることで、在庫が利益に与えている影響も見えてくる。
決算書を読むときの注意点
在庫が前の期より大きく増えている会社では、全部原価計算の仕組みによって、売上が伸びていなくても利益が増えて見えることがある。例えば売上高が前の年と同じなのに営業利益が10%増え、棚卸資産も大きく増えている場合は、作りすぎによって固定費が在庫に移っている可能性を考えたい。棚卸資産回転率や回転日数の変化を合わせて見ると、在庫が売れ残りの兆しなのか、需要に備えた計画的な積み増しなのかを考える手がかりになる。利益の数字だけでなく、在庫の動きとセットで読むことが大切である。
関連して知っておきたいこと
あわせて押さえたいのは、変動費と固定費の区別、売上から変動費を引いた限界利益、そして棚卸資産回転率である。全部原価計算の利益を読むときは、在庫が増えたのか減ったのかを合わせて確かめると、数字の意味をつかみやすくなる。
関連用語
製品原価に変動費だけを含め、固定費は発生した期の費用として処理します。限界利益が表に出るため計画づくりに向きますが、外部公表用の決算には使えません。
固定費は売上に関係なく発生しやすい費用。利益の振れ幅を大きくする要因になる。
変動費は売上に応じて増減する費用。利益率と損益分岐点を左右する。
販売のために持つ商品・製品・仕掛品・原材料などの総称で、貸借対照表の流動資産に計上される。期末の評価額が売上原価と利益を左右する。売上が伸びないのに増えているなら売れ残りを疑う。
製品ごとにいくらかかったか直接たどれない、工場の光熱費や設備の減価償却費などの共通費。作業時間などの基準で各製品に割り振って原価に入れる
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