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下げ相場をレバレッジで取り返そうとしない――田中泰輔氏が数字で示す逆複利効果と長居しない持ち方

田中 泰輔
田中 泰輔
グローバル金融市場アナリスト
🗓 開催 2026年8月4日 📅 公開

持ち株が急落すると、早く損を取り返したいという気持ちが強くなります。そこで目に入りやすいのが、値動きが指数の何倍にもなるレバレッジ型の商品です。反発すれば一気に取り戻せる、という計算は分かりやすい。しかし田中泰輔氏は、下げ相場でこそこの計算が逆に働くと注意を促します。

2026年8月4日開催の田中泰輔のマーケットゼミ月例セミナーでは、AI株の急落局面を題材に、レバレッジ商品の逆複利効果と、下げ相場で取り返そうとするときの構え方が語られました。

何が落ちたのかを先に見きわめる

2026年の4月以降、米日のAI株、なかでもメモリー・半導体株は急騰しました。データセンターが急増するなかでメモリーが品不足になり、価格が上がったことが背景です。そのメモリー株が6月にピークを打ち、7月はさまざまな取引の巻き戻しで下げが止まらない展開になりました。

田中氏自身は、5月半ば、6月初旬、6月下旬から7月初めと、取引高が細っているのに価格だけが伸びるといった相場のリズムの崩れを見て、その都度ポジションを降りたとゼミで案内してきました。この見方は、急落は雪崩現象で起きるで取り上げた取引高のシグナルとも重なります。それでも実際の下落は想定の倍に及び、ほかの銘柄も巻き込んだ。田中氏は落ち方を見て「全治数ヶ月」とし、普通なら3〜6か月はかかるとの見方を示しています。

一方で、ダウは底堅く推移し、台湾株も相対的には崩れていません。田中氏は今回の動きを、株式相場全体のバブルが破裂して金融政策で支えなければならない局面ではなく、メモリーを軸にした一部のAI株が急騰して急落した展開だと位置づけました。どこが、どの程度落ちたのかを分けて見ることが、次の判断の出発点になります。

下げの局面で、レバレッジ商品に資金が集まった

田中氏が受講生に注意喚起したいとして示したのが、半導体株のETF(SOXX)と、その値動きの3倍を目指すレバレッジ型ETF(SOXL)を並べたチャートです。上に跳ね上がって落ちてきた形は似て見えますが、SOXXが100日移動平均線あたりでとどまっているのに対し、SOXLはそれを大きく割り込んでいました。

3倍で動くのだから当然、と思うかもしれません。田中氏が問題にしたのは、今回の下げの途中で、レバレッジのかかった商品で早期にやられを挽回しようという動きが多く、資金流入がすごいと報じられた点です。田中氏は、長丁場になるほど、レバレッジ商品は下げ相場で不利になると指摘します。

レバレッジが下げを増幅する例として、田中氏は韓国株にも触れました。サムスンとSKハイニックスのメモリー2社が、一時は韓国株式市場の65%ほどを占めていた時期がある。そこへレバレッジをかけたETFで個人もプロも群がったため、いざ下がると売りが売りを呼び、日本株や米国株まで巻き込む展開が繰り返されたと見ています。

10%の下落が2回続くと、どれだけ差がつくか

上昇相場では複利効果でどんどん増え、すごいという話になります。ところが下がっていくときには、逆複利効果が出てくる。田中氏はこれを簡単な数字で説明しました。

100まで上がった相場が、翌日10%下がるとします。通常のETFは90になり、3倍のレバレッジ型は30%下がって70になります。さらに翌日も10%下がると、通常のETFは90から9下がって81、レバレッジ型は70から30%、つまり21下がって49になる。同じ下落が2回続いただけで、残る元本は81と49にまで開きます。

そのあと相場が10%戻っても、81から10%増えるのと、49から30%増えるのとでは、出発点の大きさが違います。元本が小さくなった分だけ、元の水準に戻るまでの道のりは長くなる。下落が3日、4日、5日と続けば元本はどんどん小さくなり、2日、3日と反発したのに全然元の水準に届かない、ということが起こりうると田中氏は説明しています。

取り返すなら、長居をしない

この性質から田中氏が導いたのは、下げ相場で取り返そうとするなら、あまり長居をしてはいけない、という原則です。ただ買って、相場が反発するまで我慢する。その持ち方こそ、レバレッジ商品では逆複利で不利になります。

長居せざるを得なくなった場合の対応も示されました。途中で戻る場面があれば、部分的にでもポジションを外して軽くしておく。また落ちてきたら、外した分の一部か全部を買い直して平均コストを下げていく。こうした手当てをしないと、後々ものすごく厳しいことになる、というのが田中氏の警告です。

上にも下にも振れる相場では、持ち方を分ける

レバレッジ商品の話は、相場全体の見通しともつながっています。田中氏は、8月はメモリー株の調整がどう収束するかを模索する段階とし、上がったと思ったらまた下がることを何度か繰り返すと見ています。9月に上を試す展開があっても、強く上がればその後の反落もそれなりに大きく、こうした動きが年末にかけて残るのではないか、という見立てです。

田中氏は、上にも下にも変動しうること自体がリスクだと強調します。そのうえで、大きく落ちた半導体・メモリー株の反発を狙うのか、AI装置関連のように比較的落ち着いたものを選ぶのか、銀行や景気バリュー株、S&P500などの非AI系にするのか、という複数の道を並べました。どれかが生きるときには別のものが圧迫されやすいことを頭に入れつつ、短期勝負のものと中期以上ホールドするものを見分けることが重要だとしています。

質疑では、好決算でも売られる銘柄が多かった7月から流れが変わったのでは、という問いも出ました。田中氏は、レバレッジをかけたようなリスク投資が処分され、売り手が減って身軽になるにつれ、好決算を素直に反映しやすい下地が徐々に出てくると答えています。

この記事のまとめ

  • 今回の急落は、相場全体のバブル破裂ではなく、メモリーを軸にした一部AI株の急騰・急落と田中氏は見ている。
  • 下げの途中で、レバレッジ型ETFで早く挽回しようとする資金流入が目立った。
  • 10%の下落が2回続くと、通常のETFは81、3倍型は49。元本が小さくなるほど回復の道のりは長くなる。
  • 取り返すなら長居をしない。持ち続けるなら、戻りで軽くし、押したところで買い直してコストを下げる。
  • 上下に振れる相場では、短期勝負のものと中期以上ホールドするものを分けて考える。

損を早く取り戻したいときほど、増え方の計算ばかりが頭に浮かびます。同じ下げが続いたら手元に何が残るのかを先に確かめておくことが、焦りから持ち方を誤らないための確かな物差しになります。

本記事は、2026年8月4日開催「田中泰輔のマーケットゼミ 月例セミナー」で語られた考え方を抜粋・整理したものです。1テーマに絞っており、セミナー全体の内容は講座でご覧いただけます。

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⚠️ 本記事のご利用にあたって

本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資判断は最終的にご自身の責任で行ってください。

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本記事は講義コンテンツの特別抜粋版です。 データ分析の詳細・具体的な銘柄・ポートフォリオ構築法など、 投資判断に直結するコアコンテンツは 「田中泰輔のマーケットゼミ」の完全版にてご覧いただけます。

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この記事の著者
田中 泰輔
田中 泰輔
グローバル金融市場アナリスト

グローバル金融市場の最前線で戦い続けるプロフェッショナル。為替・株式・金利を横断するマクロ分析に定評があり、投資家の心理と市場構造を読み解く相場解説の第一人者。田中泰輔のマーケットゼミ・サイクル投資マスター講座を主宰。

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