「ナッジ」とは
人に強制や金銭的な誘導をせずに、選択肢の示し方を工夫して望ましい行動をとりやすくする手法です。英語で「ひじで軽くつつく」という意味で、行動経済学の考え方から生まれました。
📌 投資判断のポイント
強制や金銭的な誘導をせず、選択肢の示し方を工夫して望ましい行動をとりやすくする手法。年金の自動加入で加入率が大きく上がった例が有名。初期設定のまま放置されるリスクもある。
ナッジはどういう仕組み?
経済学者リチャード・セイラーと法学者キャス・サンスティーンが2008年の著書で広めた概念で、セイラーは2017年にノーベル経済学賞を受けました。人は将来の利益より目先の手間を重く見たり、初めに設定された選択肢をそのまま受け入れたりする傾向があります。ナッジはこの傾向を逆手に取り、選ぶ自由は残したまま、初期設定や情報の並べ方を変えて行動を後押しします。日本でも環境省が2017年に日本版ナッジ・ユニットを立ち上げ、省エネや健康診断の受診率向上などに応用しています。金融の分野では、確定拠出年金の初期設定商品(指定運用方法)や、給与からの自動積立がナッジの代表例です。いったん決めた積立を変えずに続けやすいことは、長期の資産形成では利点にもなります。
ナッジの具体例と注意点は?
よく知られるのが、企業年金の自動加入です。米国の401(k)の研究では、加入を自分で申し込む方式から、申し出なければ加入する方式に切り替えたところ、新入社員の加入率が37%から86%に上がったと報告されています(マドリアンとシェイ、2001年)。給与天引きの積立や、つみたて設定の自動継続も同じ仕組みです。反面、初期設定の掛金率や商品が低すぎると、そのまま放置されて老後資金が足りなくなるおそれがあります。
デフォルト効果との違い
デフォルト効果は、人が初期設定をそのまま選びやすいという心理の傾向そのものを指します。ナッジは、その傾向を含むさまざまな心理を利用して行動を変える手法の総称で、デフォルトの設計のほか、他の人の行動を示す、期限を設ける、手続きを簡単にするといった方法も含みます。投資では、自分がナッジされている場面に気づき、初期設定が自分に合っているかを確かめることが大切です。反対に、売り手が自社に有利な初期設定を置いて消費者を誘導する手法はスラッジやダークパターンと呼ばれ、ナッジと区別されます。契約時に最初から付いているオプションや、解約手続きが分かりにくいサービスには注意が必要です。自分の設定を年に1回見直す習慣が役立ちます。
関連用語
初期設定はそのまま選ばれ続けやすく、変更しない限り既定値が結果を決める。契約直後に支払方法や運用商品の初期設定を開いて確認する習慣が効く。
目の前の利益を将来の利益より過大に評価する傾向で、長期の計画は実行段階で崩れやすい。自動振替のように判断を挟まない仕組みにするのが定石である。
掛金全額所得控除・運用益非課税・受取時優遇の「三重節税」が特長の老後専用積立制度。NISAと異なり原則60歳まで引き出し不可のため、緊急予備資金を確保した上で活用する。
会社が掛金を出し従業員が運用する年金で、運用益非課税など税制優遇が大きい。商品未選択だと元本確保型で放置されインフレ負けの懸念。転職時は移換手続きが必須で、放置すると自動移換や手数料が発生しやすい。
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