「ヒストリカルシミュレーション法」とは
過去に実際に起きた価格変動をそのまま現在のポートフォリオに当てはめて損益の分布を作り、VaRなどのリスク指標を計算する手法。
📌 投資判断のポイント
過去の価格変動をそのまま現在のポートフォリオに当てはめて損益分布を作り、VaRを求める手法。分布の仮定を置かない代わりに、観測期間に含まれない種類のショックは結果に現れないという弱点がある。
ヒストリカルシミュレーション法はどういう仕組み?
たとえば過去250営業日分の日次変動率を取り出し、その1日ごとの変動が今日のポートフォリオに起きたら損益がいくらになるかを250通り計算する。得られた250個の損益を小さい順に並べ、下から5%目にあたる値が信頼水準95%の1日VaRになる。特徴は、リターンが正規分布に従うといった仮定を置かないことである。過去データに含まれていた分布の歪みや裾の厚さが、そのまま結果に反映される。資産間の相関も、過去の同じ日の動きを同時に使うことで自然に織り込まれる。
ヒストリカルシミュレーション法の具体例と注意点は?
観測期間250日、信頼水準99%なら、下から2番目から3番目の損失がVaRの目安になる。ここに二つの弱点がある。第一に、観測期間に入っていない種類のショックは結果に現れない。穏やかな相場が続いた期間を使うと、リスクを小さく見積もることになる。第二に、裾の推定はサンプル数に左右され、250日で99%水準を測ると実質2、3個の観測値で決めることになる。観測期間を延ばすと裾は安定するが、古い市場構造を引きずる。
分散共分散法・モンテカルロ法との違い
分散共分散法はリターンが正規分布に従うと仮定し、分散共分散行列から解析的にVaRを求めるため計算は速いが、裾の厚さを取りこぼす。モンテカルロ法は分布を仮定したうえで乱数から多数のシナリオを生成するため柔軟だが、仮定した分布が現実と違えば結果も違う。ヒストリカルシミュレーション法は仮定が少ない代わりに、過去に起きたことしか起こらないという制約を持つ。
実務での補い方
弱点を補うため、実務では三つの工夫が併用される。第一は、観測期間の取り方を複数用意し、平常時の期間と危機を含む期間の両方でVaRを計算して幅で見ることである。第二は、直近のデータに大きな重みを置いて相場環境の変化に追随させる方法である。第三は、統計から離れて、特定の事象を想定して損益を計算するストレステストを併走させることである。過去データだけに頼らない備えを置いておくという点で、三つ目がとくに重要になる。
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