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長期投資家が不在の季節に相場は荒れる――宮島秀直氏が読む夏枯れと年末決算の前倒し売り

宮島 秀直
宮島 秀直
投資戦略・マクロ経済スペシャリスト
🗓 開催 2026年8月27日 📅 公開

株価が大きく動くと、私たちはまず材料を探します。どんなニュースが出たのか、業績はどうか、と。宮島秀直氏はその前に、いま市場に誰がいて、誰がいないのかを確かめます。同じ売りでも、下がったところを拾う買い手がいるかどうかで、値動きの大きさはまるで違ってくるからです。

2026年8月27日開催の宮島秀直の投資戦略ゼミ 質問会では、年金などの長期投資家が動く時期と休む時期をカレンダーとして押さえ、相場が荒れやすい局面を前もって見積もる視点が語られました。

長期投資家が動くのは1月と7月

CTAのような投機筋は一年中売買を繰り返していますが、年金運用会社のような長期投資家には動きやすい時期があります。宮島氏が挙げるのは1月と7月です。四半期ごとに見直しの機会はあるものの、4月は意外とそうでもない、と付け加えています。

しかも、7月からの資産配分は6月半ばから7月初めにはもう決まっている、というのが宮島氏の説明です。つまり7月に入って配分を実行し終えると、長期投資家には次の大きな仕事がしばらくありません。この空白がそのまま夏の休暇につながっていきます。

8月はバーゲンハンターが休暇に入る

宮島氏によれば、ドイツのファンドマネジャーは労働法の関係で年に1か月の休暇を取る必要があり、夏にまとめて休む人が少なくありません。フランスでも1か月の休暇が定着しています。過去10年の米国株の出来高を並べると、7月初めにヘッジファンドが休んで戻り、8月に入ると今度は長期投資家が抜け、戻ってくるのは9月の初めから半ばごろ。そうした形が繰り返し表れていると宮島氏は見ています。

質問会の時点で示された資料では、米国と欧州の投資家による米国株・欧州株・日本株への週次の投資が、直近4週間ほぼ止まっていました。宮島氏はこれを「ペンペン草」の状態と表現します。

危ないのは、長期投資家が本来「バーゲンハンター」だという点です。投機筋が売り崩して値が下がりすぎたとき、割安だと見て買いを入れるのが彼らの役割でした。その支えが入らない8月は、投機筋の「やりたい放題」になりやすい。毎年8月下旬のジャクソンホール会議の前後で投機筋が大きく動くのも、長期投資家が邪魔をしない時期に変動を大きくすれば稼げると分かっているからだ、と宮島氏は指摘します。

決算前の手じまいは群れになって売られる

もうひとつのカレンダーが、ヘッジファンドの決算です。宮島氏はこの夏のAI株の急落を例に挙げました。6月末の決算に向けて、6月20日ごろから有力なグローバルマクロ系のファンドが手じまい売りを始めた。それを見て動揺した一般のヘッジファンドが一斉に追随し、AI株はピークから全体で25%下がったという説明です。

主力が売ると周りが慌てて同じ方向に売る。宮島氏はこれをハーディング、つまり群衆行動と呼び、コバンザメのように後に続くファンドが下げを大きくすると見ています。さらに、レバレッジを高めていた大型ファンドにはマージンコールが発生し、売りが売りを呼ぶ局面になりました。こうした動きが、支えとなる長期投資家のいない時期に重なったことで値動きが増幅された、というのが宮島氏の整理です。

宮島氏は、この一件そのものはほぼ収まったと見ています。ただ、AIに精通し巨額の資金を動かしていた運用者でさえ失敗したことで、AI株で簡単に勝てるわけではないという認識が市場に広がりました。AI株から少し引き気味になっている空気は、その後遺症だと宮島氏は指摘します。

業績が急に変わったわけではなくても、決算日という日付だけで売りが出る。この点は、売り圧力を45日ルールで読む回で取り上げた、解約通知の期限から売りの時期を逆算する考え方とも重なります。

9月に戻る長期投資家が支えに来ない可能性

本来なら、8月に休んだ分を取り戻すように、9月には年金などの長期投資家が大きく動きます。ところが今回は、その動きが封じられるかもしれないと宮島氏は警告します。理由は、戻ってきて2か月もしないうちに米国の中間選挙を迎えることです。

宮島氏は、2017年に導入された個人所得税の大幅減税の恒久化と、法人税の21%から15%への引き下げが、2025年1月の政権発足後に株価へ織り込まれてきたと見ています。中間選挙で与党が下院で大敗すれば、予算を伴う法案は通らなくなる。経済対策の多くは国債発行や減税を伴うため、それが一切できない国の株を、下がったから助けようと長期投資家が買いに来るかといえば、かなり厳しい、という見立てです。9月以降の米国株は輝きのない相場になり、危うい状態が続くことも考えておくべきだと宮島氏は述べました。

年末決算の売りは10月20日ごろから前倒しに

では、選挙の結果が出るまで相場は動かないのか。宮島氏の答えは否定的でした。ヘッジファンドは12月末の決算に向けて、10月28日ごろからポジションの圧縮を始める必要があります。選挙の情勢を示す世論調査は投票日の前から出ています。10月下旬の調査でも民主党の優勢が変わらなければ、減税が実現するかもしれないと期待して投票日まで待つファンドはいないだろう、と宮島氏は見ています。

そのため宮島氏は、10月20日ごろから売りが入る可能性が高いとして、時期を早めに見ておくよう呼びかけました。売りがS&P500の指数そのものに出れば、ナスダックも含めて全般が押さえられることになります。判断材料として、宮島氏は今後も世論調査の推移を講座で示していくとしています。

この記事のまとめ

  • 年金などの長期投資家が大きく動くのは1月と7月。7月からの配分は6月半ばから7月初めに決まっている。
  • 8月は欧州のファンドマネジャーが1か月休むため、下げを拾う長期投資家が不在になり、投機筋が値を大きく動かしやすい。
  • 決算前の手じまい売りは、主力の売りに他のファンドが追随する群衆行動で増幅されやすい。
  • 9月に戻る長期投資家も、中間選挙で政策が動かなくなる見通しが強まれば、米国株を支えに来ない可能性がある。
  • ヘッジファンドの年末決算に向けた圧縮は10月下旬に始まり、選挙前の10月20日ごろから売りが前倒しになり得る。

相場の値動きを材料だけで説明しようとすると、なぜその時期に振れ幅が大きくなるのかが見えにくくなります。長期投資家が動く月と休む月、ヘッジファンドが決算に向けて手じまう時期を手元のカレンダーに書き込んでおけば、同じニュースでも身構えるべき時期とそうでない時期を分けて受け止められるはずです。

本記事は、2026年8月27日開催「宮島秀直の投資戦略ゼミ 質問会」で語られた考え方を抜粋・整理したものです。1テーマに絞っており、質問会全体の内容は講座でご覧いただけます。

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本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資判断は最終的にご自身の責任で行ってください。

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この記事の著者
宮島 秀直
宮島 秀直
投資戦略・マクロ経済スペシャリスト

緻密なデータ分析で市場の深層をえぐる世界的スペシャリスト。国内外の機関投資家からも一目置かれる独自の投資哲学を持ち、ポートフォリオ最適化と出口戦略の第一人者。宮島秀直の投資戦略ゼミを主宰。

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