地政学リスクは、ニュースとして見るだけでは不十分です。

重要なのは、そのリスクを市場がどの程度織り込み、どの資産に、どの順番で影響が出るかを考えることです。

宮島秀直氏の投資戦略ゼミでは、ホルムズ海峡リスクを、原油価格、日本株、機関投資家の資金フロー、そしてセクター選別の視点から立体的に整理しました。

ホルムズ海峡は、単なる地政学ニュースではない

ホルムズ海峡は、中東原油の輸送における重要な chokepoint です。ここに不安が生じると、原油価格だけでなく、エネルギーを輸入に依存する国の株式市場にも影響が出ます。

宮島氏が注目したのは、完全封鎖か解除かという二択ではありません。

一部だけ通れる、しかし航路が制限される。安全に見えても通行量は落ちる。こうした「第3の状態」が市場にとっては厄介です。

相場は、わかりやすい悪材料よりも、判断しにくい不確実性を嫌います。

機関投資家は、下落局面で何を見ていたのか

宮島氏は、世界の機関投資家へのヒアリングをもとに、有事直後の資金フローを説明しました。

興味深いのは、戦争開始直後にもかかわらず、長期投資家の一部が日本株を買い越していたことです。

これは、ホルムズ海峡の封鎖が永続するとは見ていないためです。1年後には封鎖が解除されていると考えるなら、急落した日本株は割安に見える。長期投資家は、こうした局面でバリューハンターとして動きます。

ただし、これは無条件の強気ではありません。機雷、航路制限、原油価格の再上昇などが確認されれば、買いの量は変わります。

原油価格は、相場全体の温度計になる

ホルムズ海峡リスクで最も直接的に反応するのは原油価格です。

原油価格が上がれば、企業コストが上がります。インフレ懸念が強まり、中央銀行の利下げ判断にも影響します。さらに、株式市場ではグロース株のバリュエーションにも圧力がかかります。

宮島氏は、原油価格が一定水準を超えた場合、日本株に大きな下落リスクが生じる可能性にも触れました。

つまり、原油はエネルギー市場だけの話ではありません。株式、為替、金利をつなぐ市場全体の温度計です。

戦争に強いセクターという視点

宮島氏の解説で重要なのは、「戦争に強いセクター」を一時的なテーマ株としてではなく、構造的な視点で見ている点です。

過去の戦争局面を比較し、銀行、電力、海運、機械、総合商社、化学、石油といったセクターに注目しました。

これらは、単に有事で買われるという意味ではありません。エネルギー、物流、資本財、資源、金融といった実体経済の基盤に関わる分野です。

戦争が日常化する時代には、平時の成長テーマだけでなく、有事に耐える産業構造を見る必要があります。

中国リスクまで含めて見る

ホルムズ海峡リスクは、中東だけで完結しません。

宮島氏は、中国の動向にも注意を向けました。アメリカの注意が中東に向いている間、別の地域で地政学的な動きが進む可能性があるためです。

地政学リスクを見るときは、ひとつの戦場だけでなく、世界の軍事・外交資源がどこに割かれているかを見る必要があります。

この記事のまとめ

  • ホルムズ海峡リスクは、完全封鎖か解除かだけでなく、部分的制限という第3の状態が重要。
  • 長期投資家は、有事の急落を割安局面として見ることがある。
  • 原油価格は、株式・為替・金利に波及する市場全体の温度計になる。
  • 戦争に強いセクターは、短期テーマではなく実体経済の基盤として見る。
  • 中東有事は、中国など他地域の地政学リスクとも連動して考える。

地政学リスクは、恐怖を煽るための材料ではありません。

どの資金が動き、どの価格が反応し、どの産業が支えになるのか。その構造を読むことで、ニュースは投資判断の材料に変わります。

本記事は、2025年4月9日開催「宮島秀直の投資戦略ゼミ」セミナーで語られた考え方を抜粋・整理したものです。1テーマに絞っており、セミナー全体の内容は講座でご覧いただけます。

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