「経済資本」とは
経済資本は、金融機関などが抱えるリスクから生じうる予想外の損失に備えるために、自社の計測に基づいて必要と見積もった資本の額である。規制で求められる資本とは別に、内部の経営管理に使われる。
📌 投資判断のポイント
予想外の損失に備えて、金融機関が自社のリスク計測に基づき必要と見積もる資本。部門ごとの収益をリスクに照らして比べる物差しにもなる。
経済資本はどういう仕組み?
損失には、平均的に見込まれる「期待損失」と、それを超えて起こりうる「予想外の損失」がある。期待損失は貸出金利や引当金であらかじめ織り込むのが原則で、資本で備えるのは予想外の損失のほうである。経済資本は、たとえば信頼水準99.9%・保有期間1年で計測した損失額から期待損失を差し引いて求める。
計測の対象は、信用リスク、市場リスク、オペレーショナルリスクなど、事業が抱えるリスク全般に及ぶ。部門ごとに経済資本を割り当て、その資本に対してどれだけの収益を上げたかを比べれば、リスクに見合った収益かどうかを評価できる。資本の使い方を部門間で比べる物差しとして機能する。
計測した部門ごとの経済資本を合計すると、会社全体で必要な資本の額が求められる。ただし異なるリスクが同時に最悪の結果になるとは限らないため、単純に足し上げるより、リスク同士の相関を考慮した合算のほうが小さくなることが多い。この分散効果をどこまで認めるかも、計測上の重要な論点である。
経済資本の具体例と注意点は?
ある融資部門の期待損失が年10億円、99.9%の確率で収まる最大損失が60億円なら、経済資本は差額の50億円になる。この部門の年間利益が8億円なら、経済資本に対する収益率は16%と計算できる。ただし計測はモデルの前提に左右され、過去に起きていない危機の損失は小さく見積もられやすい。ストレステストで補うのが一般的である。
規制資本との違い
規制資本は、バーゼル規制など当局が定める算式で求める最低限の資本である。経済資本は各社が自らのリスクの実態に合わせて計測するもので、算式も信頼水準も会社ごとに異なる。両者を比べ、差が大きければ規制の算式では捉えきれないリスクが残っているかどうかを点検する材料になる。
金融機関の統合報告書やリスク管理の開示では、経済資本の配分状況や、自己資本に対する使用率が示されることがある。投資家が銀行の健全性を比べるときの参考になる。
個人に置き換えるなら、生活費の数か月分を別に確保したうえで、残りの資金でどれだけの値下がりまで受け止められるかを考える作業に近い。
関連用語
貸出や債券投資で平均的に生じる損失額を、デフォルト確率と損失率と与信残高の掛け算で見積もったものです。平均を超える振れは自己資本で備えるという役割分担があります。
VaRは一定確率で想定される最大損失額。危機時の想定外リスクにはストレステストも必要。
ストレステストは厳しい市場環境を仮定して耐久力を確認する手法。VaRでは見えにくい危機時リスクを補う。
組織がどの種類のリスクをどこまで取るかを明文化したもの。耐えられる限界を示すリスク許容度の内側で、取りたいリスクの量を決める。
自己資本比率は企業の財務安全性を見る基本指標。業種差を踏まえて読む。
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