マクロ経済 💎 講座記事

成長株は平和時に買う――宮島秀直が読む、戦時に世界の投資家が選んだ日本の5業種

宮島 秀直
宮島 秀直
投資戦略・マクロ経済スペシャリスト
🗓 開催 2026年8月13日 📅 公開

相場が荒れると、多くの個人投資家は「将来性のある銘柄なら、下がった今こそ買い時だ」と考えがちです。しかし宮島秀直氏は、その前に、いまが平時なのか戦時なのかを確かめるべきだと説きます。どれほど有望な銘柄でも、買うべき局面は環境によって変わるからです。

2026年8月13日開催の宮島秀直の投資戦略ゼミ 月例レポート解説セミナーでは、世界の投資家が戦時の局面で何を手放し、何を選んでいるのかという視点が語られました。

将来を担う銘柄は「平和時に買うもの」

宮島氏が手がかりにしたのは、8月6日の機関投資家の戦略会議です。8月以降の1か月の方針を決めるこの会議で、多くの運用会社が自分たちの選択は間違っていないかと考え、保有するポートフォリオの総点検を行ったといいます。宮島氏はその結果を、投資戦略ごとのリターンとして整理しました。

目を引いたのは、長期投資家が昨年11月以降にコツコツと買い集めてきた銘柄群です。自動運転、EV、エネルギー、データセンター、量子コンピュータなど、これからのアメリカを担うと見込んで選んだ新たな星でしたが、足元ではほぼ全面安で、プラスを保っているのは2銘柄にとどまります。

宮島氏の解釈は明快です。7月7日以降に戦闘が再び始まり、船が沈み人が亡くなっている状況で、AIや成長株を買っている場合ではない。長期の保有銘柄はやはり平和時に買うものであり、長期投資家にはいまそこまで買いに行く余裕がない、と見ています。

世界の投資家が選んだ日本の5業種

では、その長期投資家はいま何を買っているのか。宮島氏によれば、短期の投資家が選んだものと長期の投資家の答えが大きく重なり、行き着いた先は日本の海運、鉄鋼、ゴム製品、パルプ・紙、銀行の5業種でした。少なくとも戦闘が収まるまでの不安定な状況に対応できるセクターとして選ばれた、という整理です。

6月20日以降のリターンを見ると、海運が10.84%、鉄鋼が10%、タイヤが12%、パルプが8%、銀行が2%の上昇です。一方、アメリカで戦時向けに選ばれたヘルスケアなどのセクターは、全体として日本の半分ほどしか上がっていません。宮島氏は、日本の5業種が戦時のセクターとしてアメリカの倍以上の信頼感を集めていると指摘します。

同じ戦時でも、日米で選び方が違う

興味深いのは、選ばれた業種の性格の違いです。アメリカではヘルスケア、エネルギー、生活必需品といった、景気が悪くても崩れにくいディフェンシブ業種が中心でした。これに対して日本の海運、鉄鋼、ゴム、パルプ、銀行は、比較的景気がよいときに上がる業種です。

背景にあるのは景気の見通しの差だと宮島氏は説明します。アメリカは秋の中間選挙で与党が議席を失えば、予算を伴う景気対策を通せなくなる。対して日本は、誰が政権を担っても景気対策は打たれるだろうと見られている。だから日本の景気はそこまで落ちず、10月以降に戻る可能性もある――世界の投資家はそう読んだうえで、日本では景気に敏感な業種を選んでいる、というわけです。

宮島氏はアメリカの戦時セクターを、地味すぎると表現しました。景気が悪くなることを前提にした守りの選び方であり、攻めの余地を残す日本の5業種とは、そもそもの魅力度が違うという見方です。

市場規模17倍の差を超えて流れ込む資金

この信頼感は、お金の流れにも表れています。宮島氏が示したのは、日米の戦時セクターに入っているETFへの資金流入です。アメリカと日本の株式市場、とりわけETF市場の規模にはおよそ17倍の差があります。

それにもかかわらず、日本の戦時セクターへの流入はアメリカの3分の1程度に達し、7月20日にはほぼ同額になった場面もあったといいます。その資金はヨーロッパやアメリカのETFから入っており、明らかに外国人投資家の買いだと宮島氏は見ています。流入が目立つのが7月以降である点も、戦闘の再開に合わせて選ばれた業種であることを裏づけています。

戦争が終わったら、次の銘柄に乗り換える

では、日本の輸出ハイテク株はいつ買い戻せばよいのか。質疑で宮島氏は、FRBが年末に0.25%の利上げに動く可能性を挙げました。アメリカの成長企業の設備投資が重くなれば、日本の重機や工作機械、半導体製造装置への注文に響く。0.25%程度なら大きな影響ではないとしつつも、耐久消費財のセクターをいまから買いに行くのは少し待ったほうがよい、というのが宮島氏の考えです。

そのうえで示されたのが、今は戦時セクターを持ち、戦争が終わったところで次の銘柄に切り替えるという進め方でした。宮島氏はこれを、臨機応変なポートフォリオをしばらく持つことだと表現しています。半導体の長期サイクルそのものを否定しているわけではありません。この点は、調整後の押し目買いに備えるで取り上げた、停戦の裏を読みながら半導体の上昇サイクルに備えるという考え方とも重なります。

大切なのは、平時の主役と戦時の主役を同じ物差しで比べないことです。将来性という物差しだけで銘柄を選ぶと、戦時には報われにくい。局面ごとに主役が入れ替わると知っておけば、値下がりした成長株を慌てて買い増す必要も、戦時セクターにいつまでもしがみつく必要もなくなります。

この記事のまとめ

  • 長期投資家が昨年11月から買い集めた成長銘柄はほぼ全面安。宮島氏は、長期の保有銘柄は平和時に買うものだと見ている。
  • 戦時の局面で世界の投資家が選んだのは、日本の海運・鉄鋼・ゴム製品・パルプ・銀行の5業種。6月20日以降のリターンはアメリカの戦時セクターの約2倍。
  • アメリカはディフェンシブ中心、日本は景気敏感業種中心。差を生んでいるのは、中間選挙後の景気対策の有無という景気見通しの違い。
  • 市場規模に17倍の差がありながら、日本の戦時セクターETFには海外から相応の資金が流れ込んでいる。
  • 輸出ハイテク株の買い戻しは急がず、戦争が終わった段階で次の銘柄へ切り替える臨機応変さが要る。

銘柄の良し悪しは、それだけで決まるものではありません。いまが平時か戦時か、そしてその局面で世界の投資家がどこにお金を移しているか。この2つを確かめてから自分の保有銘柄を見直せば、値動きに振り回されずに次の一手を考えられます。

本記事は、2026年8月13日開催「宮島秀直の投資戦略ゼミ 月例レポート解説セミナー」で語られた考え方を抜粋・整理したものです。1テーマに絞っており、セミナー全体の内容は講座でご覧いただけます。

宮島秀直の投資戦略ゼミ

局面に応じて世界の投資家がどの業種に資金を移しているのか、その読み方を学びたい方へ。機関投資家の動きから相場を構造で読み解く講座です。

投資戦略ゼミを詳しく見る →

⚠️ 本記事のご利用にあたって

本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資判断は最終的にご自身の責任で行ってください。

💎
講座からの学び

続きは講座の完全版で。
宮島 秀直から直接学ぶ。

本記事は講義コンテンツの特別抜粋版です。 データ分析の詳細・具体的な銘柄・ポートフォリオ構築法など、 投資判断に直結するコアコンテンツは 「宮島秀直の投資戦略ゼミ」の完全版にてご覧いただけます。

講座を見る →
この記事の著者
宮島 秀直
宮島 秀直
投資戦略・マクロ経済スペシャリスト

緻密なデータ分析で市場の深層をえぐる世界的スペシャリスト。国内外の機関投資家からも一目置かれる独自の投資哲学を持ち、ポートフォリオ最適化と出口戦略の第一人者。宮島秀直の投資戦略ゼミを主宰。

講座を見る → 無料ガイドを受け取る