停戦合意のニュースが流れると、市場は一気に楽観へ傾きます。しかし宮島秀直氏は、表面の合意を額面どおり受け取ることに慎重です。「大きなステージアップであることは確かだが、その裏には大きな罠がある」――そう前置きしたうえで、合意の脆さと、半導体関連の長期サイクルの本質を解き明かしました。

2026年6月15日開催の投資戦略ゼミ月例レポート解説セミナーでの議論を整理します。

合意の「言った・言わない」を見抜く

宮島氏がまず指摘したのは、停戦合意の条件が明文化されていないという弱点です。巨額の資金負担をめぐって当事国の主張が食い違い、公式には否定されている――つまり「言った・言わない」の対立を抱えたままの合意だといいます。

合意には約60日間の交渉期間が設けられ、その期限までに条件をめぐる対立が激化する可能性が高い。だからこそ宮島氏は、この期間中に日本株が調整圧力を受ける場面を想定しておくべきだと語りました。合意という「明るいニュース」の裏側にある不確実性を読むことが、相場の急変に備える出発点になります。

寄り付きの弱さが示す「恣意的な上昇」

宮島氏は、直近の急騰が健全な買いによるものではないと分析しました。寄り付きからアメリカ勢がそれほど買っていなかったにもかかわらず、日本市場が開いてからCTAが急に買い上がってきた――この動きは、需給によって恣意的に押し上げられた不安定な上昇だという読みです。

指数が高値圏にあっても、その中身が一部の主体による機械的な買いに支えられているなら、土台は脆い。宮島氏は、こうした水準からしっかり上がり続けると見るのは難しいとし、一旦調整した後の押し目買いを基本戦略として推奨しました。

半導体は「新しい上昇サイクル」に入っている

一方で宮島氏は、AI株と日本の半導体関連銘柄が新しい長期の上昇サイクルに入っているとの見方を明確にしました。ソフトバンク、キオクシア、東京エレクトロンといった銘柄は、AI半導体およびデータセンター需要の恩恵を、数年先まで受け続けると予測します。

ソフトバンクについては、傘下企業の事業ドメインが設計支援から製造・販売へと広がっていることが売上成長の要因だと説明。キオクシアのようなデバイス製造会社は、相対的にバリュエーションが低く、データセンター需要の拡大で恩恵を受けやすいと位置づけました。10月以降に控える大型IPOも、長期投資家の資金を呼び込む材料になります。

したがって、たとえ交渉期間中に相場全体が調整しても、半導体関連の下落幅は相対的に限定的になりやすい。将来性のある銘柄群は、一時的な調整を「仕込みの機会」として捉えられる、というのが宮島氏の結論です。

プライベートクレジットは「質」で選ぶ

セミナーでは、欧米のプライベートクレジット市場の比較も語られました。宮島氏は現地でのインタビューを踏まえ、ヨーロッパ市場の優位性を指摘します。

ヨーロッパのプライベートクレジットは、利回り(スプレッド)が高いうえに格付けが安定しており、極端に低い格付けの案件が少ない。大手銀行が引受を担い、質の管理が効いています。対してアメリカ市場は、質の高い案件と怪しげな案件が入り混じる「玉石混交」の状態にあり、これが市場の混乱の一因になったといいます。

ここから導かれる教訓はシンプルです。利回りの高さだけで飛びつくのではなく、誰が引き受け、どの程度の質が担保されているのかを見る。プライベート資産への投資でも、「質を選ぶ」という基本は変わりません。宮島氏は、質の高いプライベートエクイティファンドのETFへの投資も一つの選択肢として挙げました。

この記事のまとめ

  • 停戦合意は条件が明文化されておらず、交渉期間中に対立が激化しうる。
  • 直近の急騰はCTAによる恣意的な上昇で、土台は脆い。
  • 基本戦略は「一旦調整した後の押し目買い」。
  • AI・半導体関連は新しい長期上昇サイクルに入り、調整局面は仕込みの機会になりうる。
  • プライベートクレジットは利回りだけでなく「引受の質」で選ぶ。

明るいニュースの裏にある不確実性を読み、恣意的な上昇と本物のサイクルを見分ける。宮島氏の視点は、楽観と悲観のあいだで判断を下すための、確かな手がかりになります。

本記事は、2026年6月15日開催「宮島秀直の投資戦略ゼミ 月例レポート解説セミナー」で語られた考え方を抜粋・整理したものです。1テーマに絞っており、セミナー全体の内容は講座でご覧いただけます。

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