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指数を買えば戻る時代は終わった――宮島秀直が読むディスパージョンとアジア産業スーパーサイクル

宮島 秀直
宮島 秀直
投資戦略・マクロ経済スペシャリスト
🗓 開催 2026年7月30日 📅 公開

日本株が大きく下げると、指数に連動する投資信託やETFをまとめて買っておけば、いずれ戻るだろうと考えたくなります。宮島秀直氏は、その発想そのものが海外の機関投資家のあいだで通用しなくなりつつあると指摘します。指数ではなく、どの国の、どの企業かを選び分ける時代に入った、という見立てです。

2026年7月30日開催の宮島秀直の投資戦略ゼミ 特別編では、「ディスパージョン」と「スーパーサイクル」という二つの言葉を手がかりに、指数買いから選別へ移る機関投資家の視点が語られました。

海外投資家の共通語になった二つの言葉

この回で宮島氏が冒頭に掲げたのが、二つの合言葉でした。海外投資家に直接インタビューする中で繰り返し出てきた言葉であり、相場の大きな方向性を示している、と宮島氏は言います。

ひとつはディスパージョン。差がつく、格差が広がるという意味です。もうひとつはスーパーサイクルで、ここではアジア企業の設備投資の波が通常より長く続くことを指します。宮島氏の整理では、日本はディスパージョンの面では危うさを抱える一方、スーパーサイクルでは勝ち組になりうる。ただし、その恩恵は指数全体ではなく、限られた企業に集中するというのが要点です。

ディスパージョン――ガラクタと優良を一緒にしない

この言葉が使われ始めたきっかけは、米国のプライベートクレジット市場の急落でした。トリプルC以下の質の低い案件と、ダブルB以上のしっかりした案件が玉石混交で売られていた。手数料を多く得られるからと質の低いものを熱心に売る仲介者がいて、それに引っかかる投資家も少なくなかった。その結果としての急落を受けて、両者を一緒にするなという意味で語られたのがディスパージョンだといいます。この点は、市場不安は本物か(プライベートクレジット)で取り上げた、不安の中身を見極めるという視点とも重なります。

いまこの言葉は、国や地域の選び分けにも使われています。宮島氏によれば、最も弱いのは欧州です。ドイツやフランスの指導者の支持率は10〜15%にとどまり、経済も弱っている。米国はニュートラルからやや売り、韓国・台湾・インドといった新興国はやや買い。そして日本は、政治的な不安定さがないと見られてきたことで最上位にいました。

ところが、その前提がいま崩れかけている、と宮島氏は見ています。政治の安定を評価されて上位にいた以上、それが揺らげば評価も揺らぐ。ディスパージョンの面で日本が危ういというのは、この意味です。

アジア産業スーパーサイクル――設備投資の波が長くなる

一方で日本を支えうるのが、アジアの産業スーパーサイクルです。設備投資は通常、2年半から3年半でひと巡りします。それが5〜6年続くのではないか、と宮島氏は指摘します。

背景にあるのは、インドなどの国々の姿勢です。米国の影響は受けたくない、ロシアと組む気もない、中国の軍門に下る気もない。だとすればアジアの企業同士で設備投資を進めるしかなく、その相手として日本が選ばれやすい。国防関係から半導体製造装置、自動車まで、産業の幅が韓国などに比べてはるかに広いからです。

宮島氏が紹介した米大手運用会社ティー・ロウ・プライスの運用責任者の分析では、柱は四つあります。AIインフラ、エネルギーインフラ、防衛インフラ、そして中国に頼らないサプライチェーンの再構築です。TSMCが進出した2022年以降、海外の半導体メーカーやデータセンター事業者が日本に拠点を相次いで設けてきたのも、この流れの中にあります。

ただし宮島氏は、手放しで歓迎してはいません。1ドル165円、170円まで円安が進めば、日本は質が高く安い労働力を得られる場所として選ばれる。それ自体は日本にとってマイナスだが、設備投資にかかわる産業には大きなお金が落ちる、という両面の評価です。

指数は上がらず、選ばれた銘柄が上がる

ここで最初の問いに戻ります。スーパーサイクルの恩恵を受ける企業として挙げられたのは17社でした。宮島氏によれば、これらの銘柄は4月以降、TOPIXに対して上回る動きを見せており、長期投資家が目立たないように買い進めています。

その買い方が、ポータブルアルファです。TOPIXをショート(売り)にして、その代わりに選んだ銘柄を買う。日本株が安くなったからインデックスを買いに行こう、という信頼感はもうどこの国にもない、と宮島氏は言います。S&P500ですら同じだ、と。長期投資を旨とするバリューハンターでさえ、この方法をとる時代になった、という指摘です。

同じ発想は短期筋にも見られました。大手CTAは、戦争が続くあいだはインデックスを買えないと判断し、最悪の悲観局面が過ぎたところで、指数ではなく個別銘柄の組み合わせを買いに行ったといいます。時間軸の異なる投資家が、そろって指数を避けている点は見逃せません。

ゆっくり買う投資家と同じ時間軸で見る

選別の時代には、もうひとつ覚悟が要ります。長期投資家は簡単には売らない代わりに、ゆっくり、ゆっくり買い進める。そのため、選ばれた銘柄もなかなか上がらないように見える時期が続きます。宮島氏は、それはしょうがないと割り切っています。

裏を返せば、短期で値上がりを追う物差しで測ると、この種の銘柄は評価を誤りやすい。宮島氏は、いま5〜6歳の子どもが18歳になって進学や留学を迎えるころを見据えるような、十年単位の資金のたとえで語りました。数か月の値動きではなく、設備投資の波が続く年数に合わせて見る対象だということです。

この記事のまとめ

  • 海外投資家の合言葉は、格差の拡大を意味するディスパージョンと、設備投資の波が長く続くスーパーサイクル。
  • ディスパージョンは米プライベートクレジットの急落から広まった言葉で、いまは国・地域の選び分けにも使われている。
  • 日本は政治の安定で評価されてきたが、その前提が揺らいでいる点に宮島氏は注意を促す。
  • アジア産業スーパーサイクルはAI・エネルギー・防衛・脱中国の四本柱で、産業の幅が広い日本が選ばれやすい。
  • 恩恵は指数全体ではなく限られた企業に集中し、長期投資家は指数を売って個別を買うポータブルアルファでゆっくり買っている。

相場が下がったとき、指数を買えば済むと考えるのは楽な選択です。誰が、何を、どの時間軸で買っているのか。そこまで確かめたうえで、自分の資金をどこに置くかを決める。選別が進む相場では、その一手間が判断を分けます。

本記事は、2026年7月30日開催「宮島秀直の投資戦略ゼミ 特別編」で語られた考え方を抜粋・整理したものです。1テーマに絞っており、セミナー全体の内容は講座でご覧いただけます。

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本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資判断は最終的にご自身の責任で行ってください。

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この記事の著者
宮島 秀直
宮島 秀直
投資戦略・マクロ経済スペシャリスト

緻密なデータ分析で市場の深層をえぐる世界的スペシャリスト。国内外の機関投資家からも一目置かれる独自の投資哲学を持ち、ポートフォリオ最適化と出口戦略の第一人者。宮島秀直の投資戦略ゼミを主宰。

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