大きく上がった半導体株が崩れると、目の前の下落をどう解釈するかに気持ちが向きがちです。バブル崩壊の始まりなのか、絶好の押し目なのか。毎日の解説を追うほど、判断は揺れます。田中泰輔氏は、その前に調整がどのくらいの期間続きそうかを見積もり、その時間軸に合った構え方を選ぶべきだと考えます。
2026年9月8日開催の田中泰輔のマーケットゼミ月例セミナーでは、半導体の調整を「全治3〜6か月」という時間で捉え、その間の過ごし方を考える視点が語られました。
「全治3〜6か月」という見立て
2026年の米国株は、4月の決算でハイパースケーラーが巨額の設備投資計画を示したことで、メモリーを中心とする半導体が6月まで大相場を演じました。その後は自律的に反落し、7月、8月ともたついています。田中氏は反落の初期段階から、これを全治3〜6か月と表現してきました。
ここでいう「立ち直り」は、高値の更新を指すものではありません。相場が落ち着き、それなりに上値も戻ってくる状態です。3か月という短い側は、AI関連は派手なニュースが多く、決算を含めた好材料が立て続けに出て買い急ぐ人が集まれば、一気に雰囲気が変わりうるという想定です。6か月という長い側は、これだけ下がれば、上がって止まるたびに戻り売りや損切りを出したい人が現れ、単純には上がりきれないという想定でした。
田中氏は、現状はどちらかといえば6か月側の流れで、年末まで尾を引く可能性があると見ています。半導体指数は100日移動平均線のあたりまで下がり、それより上で買って含み損を抱えたままポジションを残している人も少なくない。戻りが鈍くなりやすい状況です。
調整の間に起きるローテーション
半導体がぐずついても、株式市場全体が悲観に傾いているわけではありません。田中氏によれば、こうした局面では資金が景気敏感のバリュー株や、AIの中でもハードではなくソフトウェアへ移りやすい。医薬・バイオ・ヘルスケアのようなディフェンシブな業種が買われる傾向も確認されているといいます。
4〜6月には、業績のよい銘柄まで売ってメモリー半導体に乗り換える動きが広がりました。その反動として、半導体が調整に入ると、売られていた側が買い戻される。債券なら金利が上がるときは期間を問わずそろって動きますが、株は半導体が下がってもAIソフトは買われる、ということが起こる。シーソーの関係にあるものがたくさんある、というのが田中氏の説明です。
ただし、半導体が戻ろうとする場面では、ローテーションで買われていたものはいったん反落します。調整中に上がっていく銘柄が、半導体の持ち直し局面でも上がり続けるのか。そこまで問う必要があると田中氏は述べています。
時間軸で持ち方を決める
そこで選択肢は二つに分かれます。上下を繰り返す半導体を横目に、じわじわ上がっていく銘柄を亀の歩みで持つのか。あるいは、もたついた半導体が反発するときは相当強い反発になるとみて、押したところを拾うスイングの側に軸足を置くのか。
田中氏は両方とも目線としてはありうるとし、半導体のぐずつきが長引けば、地道に上がる銘柄のほうが、ならしてみれば結構いいパフォーマンスだったということも起こりうると見ています。一方、半導体は上下動が激しい分、スイングを好む人には妙味が大きい。どちらを選ぶかは、自分がどういう期間で相場を見ているかによる、というのが田中氏の整理です。
戻りの性質と、のしかかる長期金利
調整局面の戻りには注意点があります。田中氏は、上がり方がきつくなると、そのこと自体が反落の呼び水になると指摘します。8月にも、上がったと思ったらストンと落ちる動きがあり、1週間ほど上がった相場が止まったところで、いきなりはしごを外される場面が起きています。この点は、上がる相場ほどリスクを探すで取り上げた、上昇局面でこそ下振れの芽を探す姿勢とも重なります。
加えて、いまは金利が重しになっています。田中氏は、AI相場は金利や景気の循環に縛られにくいと基調の強さを認めつつも、王者のエヌビディアでさえ米長期金利が4%台後半に入るとぐずつくと見ています。反発が金利に押しつぶされて限られるなら、どこまで押し目があるかも金利との兼ね合いで見ていく必要がある。田中氏自身、押したところで買ったポジションについては、上がったら無理なく段階的に早めの利益確定を入れていくかもしれない、という構えを示しました。
季節性の扱いも同じ発想です。9月は米国株が下がりやすいとよく言われ、その理由として10月末決算の多い投資信託の売りが挙げられます。田中氏は、今年はAI株が先に下がっているため、その力が例年どおり出るかはわからないとします。平均だけで語らず、年ごとの散らばりを見ればプラスの年も結構ある。下がりやすい月という一般論より、今年の個別の事情を考えるのが基本だと述べています。
市況情報の9割は相場追認、いまはバブルでなくフロス
田中氏が繰り返すのが、市況情報の9割以上は相場追認だという点です。株が上がっているときは金利高も景気も気にしないのに、下がり始めると同じ材料が不安の理由に変わる。メモリーも、上がる局面では決算がこんなにいいのに安すぎるという話になり、下がる局面では価格だけで上がった相場で、供給が増えれば終わるという懸念が語られます。
メモリー半導体の下落をもってAIバブルの崩壊とみる声にも、田中氏は与しません。バブルと呼ぶのは、破裂したときに株式市場全体やマクロ経済にまで影響が及ぶ規模の場合です。いまは半導体が落ちても、その分ほかのものを買いたいという気持ちを多くの投資家が持っている。個別の銘柄で小さな泡がはじけた「フロス」の段階だ、という評価です。
だからこそ、目先の動きを理由に必要以上に語らず、少し引いて、3か月後、6か月後に向けて意味のある展開なのかを考える。下がっている最中なら、少し待ってから入ろうと判断できる冷静さを保つことが基本だと、田中氏は述べています。
この記事のまとめ
- 半導体の調整は全治3〜6か月と見積もり、現状は年末まで尾を引く6か月側の流れと田中氏は見ている。
- 調整の間は、景気バリュー株やAIソフトウェア、ヘルスケアなどへ資金が移るローテーションが起きやすい。
- 亀の歩みで持つか、反発を狙うスイングにするかは、自分が相場を見る期間で決める。
- 上がったこと自体が反落を呼びやすく、米長期金利の上昇も戻りの重しになる。季節性は平均でなく今年の事情で考える。
- 市況解説の多くは相場追認であり、いまはバブルではなくフロスの段階と田中氏は評価している。
下落を前にしたときに必要なのは、理由探しよりも時間の見積もりです。どのくらい続きそうかを先に置けば、待つのか、穏やかに上がる銘柄で過ごすのか、自分に合った選択が見えてきます。
本記事は、2026年9月8日開催「田中泰輔のマーケットゼミ 月例セミナー」で語られた考え方を抜粋・整理したものです。1テーマに絞っており、セミナー全体の内容は講座でご覧いただけます。
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本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資判断は最終的にご自身の責任で行ってください。
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