信用乗数

金融政策
よみ:しんようじょうすう
監修:所得向上委員会 編集部(編集責任者:加藤 寛) 編集方針
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「信用乗数」とは

世の中に出回っているお金の量(マネーストック)が、中央銀行が直接供給するお金(マネタリーベース)の何倍になっているかを示す比率です。「貨幣乗数」とも呼ばれ、マネーストックをマネタリーベースで割って求めます。

📌 投資判断のポイント

マネーストックがマネタリーベースの何倍あるかを示す比率。銀行の貸出と預金の繰り返しで増える度合いを表し、2013年以降の大規模緩和では当座預金が積み上がって大きく低下した。

信用乗数はどういう仕組み?

マネタリーベースは、日本銀行が供給する現金(日本銀行券と貨幣)と、金融機関が日銀に預けている当座預金の合計です。一方のマネーストックは、企業や個人、地方公共団体などが保有する現金と預金の残高で、M2やM3といった区分で日本銀行が毎月公表しています。

銀行は預かった預金の一部を手元に残し、残りを貸し出します。貸し出されたお金は別の銀行口座に預金として戻り、その一部がまた貸し出されます。この繰り返しで、最初に供給したお金の何倍もの預金が生まれる仕組みを「信用創造」と呼び、その倍率を表したものが信用乗数です。教科書的なモデルでは、預金のうち手元に残す割合が10%なら、理論上の上限は1÷0.1で10倍になります。

信用乗数の具体例と注意点は?

たとえばマネタリーベースが600兆円、マネーストックが1,200兆円なら信用乗数は2倍です。日銀が国債を買い入れてマネタリーベースを100兆円増やしても、銀行の貸出が伸びずマネーストックが10兆円しか増えなければ、乗数は2倍から約1.8倍へ下がります。

2013年以降の大規模な金融緩和では、マネタリーベースが大きく増えた一方で、マネーストックの伸びは緩やかでした。増えた資金の多くが日銀当座預金に積み上がったままになり、信用乗数は大きく低下しました。中央銀行がお金を供給すれば、その倍数で世の中のお金が増えるとは限らないことを示す例です。

マネーサプライ・マネーストックとの違い

マネーストック(旧称マネーサプライ)は「残高そのもの」を指す統計で、信用乗数はそれをマネタリーベースと比べた「倍率」です。残高が増えていても、マネタリーベースの増え方のほうが大きければ乗数は下がります。金融緩和がどれだけ貸出や預金の増加に結びついたかを見るときに、乗数の動きが手掛かりになります。

なお、信用乗数はマネーストックのどの区分(M2やM3など)を分子に使うかで値が変わります。時期による比較をするときは、同じ区分どうしで比べてください。

出典: 日本銀行「マネーストック」

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