「これだけ不安定な相場で、なぜ買い上がるのか」。多くの投資家が抱くこの疑問に対し、宮島秀直氏は正反対の論理を示します。相場を動かしているCTA(商品投資顧問)たちは、ボラティリティが下がっている今こそ「まだ買える」と判断しているのです。
2026年5月29日開催の投資戦略ゼミ質問会では、CTAの「リスク量」という考え方を軸に、上昇余地の測り方と、7月以降に予想される配当株の逆襲が語られました。
CTAは「リスク量」で買える・買えないを決める
宮島氏によれば、CTAの行動を理解する鍵は「リスク量」という一つの数式にあります。ごく単純化すると、リスク量は「時価総額 × ボラティリティ」で表されます。
戦争が始まった局面では、株価が下落する一方でボラティリティ(変動率)が急騰し、リスク量が跳ね上がりました。ところがその後、ボラティリティは戦時のピークからおよそ半分にまで低下しています。宮島氏はここに着目します。「ボラティリティが半減しているのに、株価は倍になっていない。それはおかしい」――CTAはこう考え、まだ上昇余地が残っていると判断して買い続けているのです。
つまり、株価の絶対水準ではなく、ボラティリティとの釣り合いでリスク量を測る。戦争前の平常時と比べてリスク量がまだ小さいなら、そのぶん株価は戻る余地がある、という機械的なロジックです。この視点を持つと、「不安定なのになぜ上がるのか」という一見のパラドックスが解けてきます。
ポジションの偏りが、次の下落の引き金になる
宮島氏は、CTAが株式を全体の約32%まで積み上げていると指摘しました。平常時の23%を大きく上回る、極端な強気ポジションです。これが日本株買いの大きなエネルギーになっています。
裏を返せば、この32%が平常時の23%へ圧縮される局面では、かなりの売り圧力がかかることになります。6月末から7月にかけて、決算に伴う益出しとポジション調整が重なれば、日本株――とりわけ買われすぎた半導体・記憶媒体関連が大きく売られる可能性がある、というのが宮島氏の読みです。
売られた配当株が「リターンリバーサル」で買い戻される
ここで宮島氏が注目するのが、これまでアンダーパフォームしてきた配当株です。半導体・AI関連が独走する裏で、高配当株・バリュー株・小型株は指数を大きく下回ってきました。
ポジションが圧縮される局面では、極端に買われた銘柄が売られる一方、極端に売られた銘柄が買い戻される「リターンリバーサル」が起こります。7月以降のポートフォリオの組み直しでは、売られすぎた配当株にニュートラル化の買いが入る可能性が高い――宮島氏はこう予測します。
さらに、ボラティリティが落ち着いて相場が正常化すると、CTAに代わって長期のバリューハンターが主役になります。彼らは日本の配当株を好みます。日本の配当利回りはすでにアメリカを上回り、ヨーロッパに肩を並べる水準まで来ており、配当株の競争力は歴史的に高いのです。
配当株は「戦時に強い」という歴史的傾向
宮島氏は、戦争や紛争が続く局面で買われやすいセクターとして、銀行、ガス、海運、機械、商社、電力などを挙げました。これらの多くは配当利回りの高い銘柄です。
戦争が日常と隣り合わせになる時代には、国家安全保障・経済安全保障・エネルギー調達の観点から、これらのセクターが繰り返し選ばれます。そして、どんな局面でも配当を守ろうとする内需系の企業は、貿易の影響を受けにくく、配当を出し続けやすい。「配当は戦時に強い」という歴史的傾向を、宮島氏は相場のセクター選別に結びつけて説明しました。
この記事のまとめ
- CTAは株価の絶対水準ではなく「リスク量=時価総額×ボラティリティ」で判断する。
- ボラティリティが半減しても株価が倍になっていないなら、上昇余地が残ると読む。
- 株式ポジション32%が平常時23%へ圧縮される局面で、売り圧力が高まる。
- 7月以降、売られすぎた配当株にリターンリバーサルの買いが入りやすい。
- 配当株は戦時に強く、日本の高い配当利回りは長期投資家に好まれる。
相場を動かす主体が何を基準に売買しているのかを知ると、値動きの「なぜ」が見えてきます。リスク量という物差しと、リターンリバーサルという需給の力学。この二つを押さえておくと、過熱局面でも次の一手を落ち着いて考えられます。
本記事は、2026年5月29日開催「宮島秀直の投資戦略ゼミ 質問会」で語られた考え方を抜粋・整理したものです。1テーマに絞っており、質問会全体の内容は講座でご覧いただけます。