「日本版ESOP」とは
日本版ESOPは、企業が設定した信託を通じて自社の株式を取得し、従業員持株会への売却や退職時の株式給付によって従業員に還元する仕組みである。米国の従業員株式所有制度(ESOP)を参考に、日本の法制度に合わせて作られた。
📌 投資判断のポイント
信託を通じて自社株を取得し、持株会への売却や退職時の給付で従業員に還元する仕組み。持株会型と株式給付型がある。
日本版ESOPはどういう仕組み?
代表的な型は2つある。持株会型では、信託が銀行から借り入れた資金で、持株会が数年かけて買う見込みの株式を一括で取得し、毎月持株会に売却していく。株価が上がれば信託に売却益が残り、信託終了時に持株会の会員へ分配される。株価が下がって借入金を返せなくなった場合は、借入れを保証した会社が返済を肩代わりする。株式給付型では、会社が拠出した資金で信託が株式を取得し、勤続年数や業績に応じて付与したポイントに基づき、退職時などに株式を給付する。
どちらの型でも、会社は株価を上げる動機を従業員と共有でき、従業員は資産形成の機会を得る。信託がまとめて株式を買うため、安定株主を確保する効果もある。
会計上は、信託が保有する自社株式を会社の自己株式として純資産から控除し、信託の借入金を会社の負債として計上する取扱いが一般的である。そのため、導入すると自己資本や1株当たりの指標にも影響が出る。
日本版ESOPの具体例と注意点は?
株価1,000円の会社が5年分の持株会の購入見込みとして100万株、10億円分を信託で取得したとする。5年後に平均1,200円で売れれば、借入金の返済後に約2億円が会員に分配される。逆に平均800円なら約2億円の不足が生じ、会社が負担する。導入の発表は、需給の面で株価の材料として扱われることもある。
従業員持株会との違い
従業員持株会は、会員の従業員が給与から毎月一定額を拠出し、その都度市場から株式を買う仕組みである。日本版ESOPは、信託が将来分をまとめて先に買う点が異なる。株価が上昇する局面では会員に有利になるが、会社は株価下落時の損失を負うため、財務諸表の注記で信託の残高と借入金を確認しておきたい。
人的資本の開示が重視されるなかで、従業員への株式還元の手段として関心が高まっている。導入を検討する企業は、信託の期間、対象となる従業員の範囲、株価下落時の会社負担の上限を、あらかじめ株主に説明できるようにしておく必要がある。
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