相場が急に上がり始めると、投資家の心理は一気に変わります。
少し前まで慎重だった人も、「このまま置いていかれるのではないか」と感じ始めます。特にAI関連や半導体メモリー関連のように、上昇スピードが速いテーマでは、その焦りが強くなります。
田中泰輔氏が4月の質問会で語ったのは、こうした速い相場にどう向き合うかという、非常に実践的なテーマでした。
速い相場ほど、焦りが生まれる
停戦期待を背景に、AI関連、特に半導体メモリー周辺が相場を牽引しました。ソックス半導体指数が連騰するような局面では、見ているだけの投資家ほど焦りを感じます。
しかし、田中氏は「速いから飛びつけばよい」とは考えません。
相場が速いときほど、上がったところでまとめて買うのではなく、どの程度の持ち高で入るのか、どこで押し目を待つのかを分けて考える必要があります。
一番危ないのは、相場そのものではなく、焦りに煽られて自分のペースを失うことです。
プロ投資家も「持たざる恐怖」に動かされる
有事では、プロ投資家もまずリスクを落とします。人のお金を預かっている以上、戦争リスクを前にヘッジやポジション削減を行うのは自然です。
ところが、その後に相場が意外と底堅く、停戦期待で反発すると、今度は別の心理が働きます。
それが「持たざる恐怖」です。上がる相場に乗れていないことへの焦りが、買いを急がせます。短期投機筋がその流れを煽ることで、相場はさらに速くなります。
つまり、急騰相場はファンダメンタルズだけで動いているわけではありません。ポジションの偏りと投資家心理が、上昇スピードを増幅させます。
段階的に入るという考え方
田中氏は、自身の考え方として、最初からフルポジションを取るのではなく、本来取りたい量の一部から入る姿勢を示しました。
これは、相場が上がる可能性を認めながらも、事故が起きた場合の下振れを残すためです。
一部は早めに乗る。下がったところでは丁寧に拾う。相場が続くなら少しずつ増やす。このように段階を分けることで、乗り遅れへの焦りと、急落への恐怖の両方を抑えることができます。
投資判断は、白か黒かではありません。どの程度の量で参加するかが重要です。
AI相場でも、すべてが同じように上がるわけではない
質問会では、AI関連は上がっている一方で、金融や商社は下がっているという業種格差も取り上げられました。
指数が上がっていても、中身を見ると多くの銘柄が下がっていることがあります。値がさ株や一部のテーマ株が指数を押し上げているだけの場合もあります。
そのため、「日経平均が上がっている」「AIが強い」という大きな言葉だけで判断すると、実際のポートフォリオ感覚とずれが生じます。
相場を見るときは、指数、テーマ、業種、個別銘柄のリズムを分けて見る必要があります。
決算期はポジション管理がさらに難しくなる
田中氏は、決算をまたいでポジションを持つことの難しさにも触れました。
最近は、期待が高まっていた銘柄でも、決算をきっかけに大きく下落することがあります。一方で、決算をきっかけに一段高する銘柄もあります。
そのため、リズムが悪い銘柄は一度下りる、リズムが良い銘柄は一部を利確して残す、といった柔軟な対応が必要になります。
相場が良いから何でも持ち続けるのではなく、銘柄ごとのリズムを見て判断することが大切です。
この記事のまとめ
- 速い相場では「乗り遅れたくない」という焦りが最大の敵になる。
- プロ投資家もヘッジ後の反発局面では、持たざる恐怖で買いに動く。
- 最初から全力ではなく、段階的にポジションを取る考え方が有効。
- 指数上昇と個別銘柄の実感は一致しない。中身を見る必要がある。
- 決算期は銘柄ごとのリズムに応じて、保有・利確・撤退を分けて考える。
速い相場で大切なのは、勇気ではなく設計です。
相場に参加するかどうかだけでなく、どの量で、どのタイミングで、どのリスクを残すか。そこまで分けて考えることで、投資判断はぐっと落ち着きます。
本記事は、2026年4月23日開催「田中泰輔のマーケットゼミ 質問会」で語られた考え方を抜粋・整理したものです。1テーマに絞っており、質問会全体の内容は講座でご覧いただけます。