この動画でわかること
  1. 1 2024年年初に米国株が強く上昇した背景を、中国株売却マネーの流れからどう捉えるか
  2. 2 ヘッジファンドの決算期に起きやすいリターンリバーサルを、どのようなロジックで見るか
  3. 3 CMBS、NYCB、KKR、PIMCO、SKEW指数、QTの変化を通じて、当時どんなブラックスワンリスクが意識されていたか

2024年初の米国株は、景気の底堅さや生成AIへの期待だけでは説明しきれないほど強い動きを見せていた。相場がなぜここまで上がるのかを考えるとき、企業業績や政策だけでなく、どこから資金が逃げ、どこへ流れ込んだのかという視点が欠かせない。

この動画で宮島秀直氏が提示するのは、「中国株から逃げた資金が米国株を押し上げた」という当時の資金フロー仮説である。2023年末の中国政策への失望が、中国株や中国株ETFの売りにつながり、その受け皿として米国株が選ばれたという見立てだ。そこに、2023年末には中立的だったヘッジファンドが、2024年1月にかけて一気に強気へ傾いた流れが重なったことで、米国株の急騰が起きたと整理されている。

ただし、この動画の価値は強気材料の説明だけにない。宮島氏は同時に、2〜3月の決算期に伴う利確売り、CMBSの延滞率上昇、NYCBやオフィス不動産への不安、SKEW指数の高止まり、FRBのQT運営の変化までつなげながら、相場の裏側にあるリスクも具体的に点検している。上昇相場の理由と、その裏で膨らむ不安の両方を学べる動画として読むべき内容である。

中国株売却20兆円という仮説 米国株上昇の背景をどう読むか

この動画の中心にあるのは、2024年年初の米国株上昇を、中国株売却による資金流入から説明する視点である。宮島氏によれば、2023年12月の中国中央経済工作会議で不動産救済策が十分に示されなかったことが、中国株への失望を強めた。その結果、中国株や中国株ETFからまとまった資金が流出し、その一部が米国株市場へ流れ込んだとみられる、というのが当時の分析である。動画では、香港市場から約10兆円規模、米国上場の中国株ETFからも約10兆円規模、合計で約20兆円規模の売却が生じたという整理が示されている。

もちろん、この資金がすべて米国株に向かったと断定しているわけではない。宮島氏が示しているのは、米国株上昇を理解するうえで、資金の逃避先という視点が極めて重要だということだ。中国株の不透明感が強まる一方で、米国市場には流動性があり、大型株中心に受け皿となりやすい構造があった。そのため、業績期待だけでなく、相対的な安心感を求める資金の受け入れ先として米国株が選ばれた可能性が高い、というロジックである。

さらに当時は、ヘッジファンドのポジションも2023年末のニュートラルから、2024年1月にかけて大幅な強気転換が起きていたとされる。ヘッジファンドとは、市場環境の変化に応じて機動的に売買する運用主体のことで、相場の流れを加速させる存在として注目されやすい。細かな比率ではなく、方向感として「一気に強気へ傾いた」という点が重要であり、この資金の流れが年初の上昇を加速させたと宮島氏は見ている。動画の見どころは、相場の強さを漠然とした楽観ではなく、具体的な資金移動の仮説として語っているところにある。

2〜3月の調整リスクはなぜ意識されたのか

強い相場が続くなかで、宮島氏が当時の注意点として挙げていたのが、2月15日から3月末にかけてのヘッジファンド決算期である。この時期には、上昇してきた銘柄に利益確定売りが出やすい。いわゆるリターンリバーサルとは、直前まで強かった銘柄がいったん売られやすくなる反動のことを指す。市場関係者のあいだで、こうした動きが起こりやすい時期として意識される局面だと説明されている。

動画では、その見方をより具体的にするために、機関投資家保有比率やヘッジファンド保有比率が使われる。宮島氏の2024年1月25日時点の資料では、マイクロソフトやGoogleは機関投資家保有比率が高く、下値が支えられやすい銘柄として扱われている。一方、テスラは支えが相対的に弱く、売りが出たときに下振れしやすい構造として整理される。AMDは調整局面で見直されやすい候補、Metaはヘッジファンド保有の増加が大きく、売り圧力に注意すべき銘柄として例示されている。

ここで大切なのは、「3月に必ず調整が来る」と断定しているわけではないことだ。あくまで宮島氏は、当時の市場構造を踏まえると、2〜3月は調整リスクが高まりやすい時期だと見ていた。銘柄分析も「何を買うべきか」という推奨ではなく、どの銘柄がどのような持ち高構造を持っているかを知ることで、売りが出やすい局面を読みやすくするためのロジックとして示されている。

CMBS、NYCB、SKEW指数 ブラックスワン候補をどう見るか

この動画で一段と緊張感が高まるのが、CMBSとオフィス不動産をめぐる話題である。CMBSとは、商業用不動産向けローンをまとめて証券化した商品のことで、オフィスビルや商業施設の資金繰り悪化が表面化すると傷みやすい。宮島氏は、そのCMBSのうち、オフィス向けの延滞率が収録時点で約8%に達していたことを取り上げる。前年の約4%から倍増していたことから、オフィス不動産の劣化が急速に進んでいるサインとして、当時強く警戒されていた。

この文脈で、KKRのオフィス案件、PIMCO系の不動産管理会社、NYCBといった事例が挙げられる。KKRは世界的な投資会社、PIMCOは債券運用で知られる大手資産運用会社、NYCBは米地銀の一つで、不動産関連の不安と結びつけて語られやすかった。いずれも収録時点で市場の不安材料として意識されていたものであり、動画はそれらを「その後どうなったか」の検証ではなく、「当時どこに脆弱性があると見られていたか」を整理する教材として読むべきだろう。宮島氏は、不動産市場の傷みが金融システムへ波及しうる点に着目しており、その意味でオフィス不動産問題をブラックスワン候補の一つとして扱っている。

ここで重要な補助線として使われるのがSKEW指数である。SKEW指数とは、市場が「めったに起きないが、起きると大きい下落」をどの程度警戒しているかを見る指標だ。宮島氏は、収録時点のSKEWがシリコンバレー銀行破綻時を上回る高水準にあった点を重視していた。表面上は米国株が強く見える一方で、プロの資金は見えないリスクに備えていた可能性がある。このギャップを理解できるのが、動画の大きな価値のひとつである。

FRBは何を恐れていたのか 利下げより先に注目されたQTの変化

市場では、FRBといえば利下げの有無が注目されやすい。しかし宮島氏が当時見ていたのは、政策金利だけではなく、量的引き締めであるQTの運営の変化だった。QTとは、FRBが保有資産を減らして市場の資金を吸収していく政策で、金融環境を引き締める方向に働く。動画では、FRBが資産圧縮のペースを落とす方向に傾きつつあることが、金融システムへの警戒感の表れとして読み解かれている。

宮島氏の見立てでは、利下げが先に来るというよりも、その前にQTの縮小や停止のようなかたちで実質的な緩和が先行する可能性があった。これは収録時点における分析であり、結果を断定するものではない。ただ、政策金利の見通しだけを追っていると見落としやすい論点であることは確かだ。

この視点を踏まえると、動画は単なる米国株の強気・弱気論では終わらない。相場が上昇しているときに、FRBや市場参加者がどこを不安視していたのか、どこにクレジット不安の芽を感じていたのかを学ぶ内容になっている。強い相場ほど、裏側のリスクを点検する必要がある。その姿勢自体が、この動画から学べる大きなポイントだ。

要点整理

  • 2024年年初の米国株の急騰は、業績期待だけでなく、中国株から逃げた資金の受け皿になったという資金フロー仮説で読み解かれている。約20兆円規模の売却マネーがどこへ向かったかという視点が、相場を見るうえで重要なポイントとなっている。
  • 一方で宮島氏は、2〜3月のヘッジファンド決算期に起きやすいリターンリバーサルや、CMBSオフィス延滞率の上昇、SKEW指数の高止まりといった、上昇相場の裏側にあるリスクも丁寧に点検していた。
  • 利下げ論議だけでなく、QTの運営変化にまで目を向けていた点は、当時の動画でしか確認できない。FRBが何を恐れていたのかを読む視点として、今からでも学べる内容がある。

米国株上昇の理由を、景気やAI期待だけでなく、資金フロー、ヘッジファンドの行動、CMBSリスク、FRBの政策運営まで含めて理解したい方は、ぜひ動画本編をご覧ください。宮島秀直氏が収録時点でどこにリスクを感じ、何を先に見ていたのかが、講義の流れの中でつかめます。


免責事項・時点注記:本記事は動画の収録時点の情報をもとに構成しています。制度・市場環境・人物の肩書や状況などは、その後変化している可能性があります。本記事は2024年2月上旬収録の動画内容を教育目的で整理したものです。記載している数値(機関投資家保有比率・CMBS延滞率・資金フロー規模等)、市場状況、リスク認識はすべて収録時点のものであり、現在とは異なる可能性があります。本記事は特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。