世界の金融市場で今、何が起きているのか?2025年7月9日、水曜日の朝を迎えました。週明けからリスクオフムードが強まった昨日のマーケットの動向を振り返るとともに、本日以降の投資戦略の鍵となる重要ニュースをプロの視点で徹底解説します。
マーケット概況(2025年7月8日):株安・円安の同時進行、市場は複雑な展開に
昨日7月8日火曜日の米国市場は、中国がクアッド参加国への対抗措置を示唆したことを受け、地政学リスクへの警戒から主要株価指数は軒並み下落しました。ダウ平均株価は前日比150ドル安と続落し、ハイテク銘柄の多いナスダック総合指数も大きく値を下げました。一方で為替市場では、リスクオフムードにもかかわらず、日米の金融政策の方向性の違いが強く意識され、円売り・ドル買いが優勢となりました。ドル円は一時1ドル=147円台前半まで円安が進行。米国の根強いインフレ懸念から長期金利が高止まりしたことが、ドル買いを後押ししました。地政学リスクによる「株安」と、日米金利差を背景とした「円安」が同時に発生する複雑な展開となり、投資家はポートフォリオの再構築を迫られています。
中国、レアアース輸出管理強化を示唆 – クアッドへの明確な対抗措置
クアッド外相会合の共同声明に強く反発した中国政府は8日、国営メディアを通じて、ハイテク産業の「ビタミン」とも呼ばれるレアアース(希土類)の輸出管理をさらに厳格化する方針を示唆しました。名指しこそ避けたものの、クアッド参加国を牽制する狙いは明らかであり、米中対立は新たなフェーズに入ったとの見方が広がっています。これは半導体やEV(電気自動車)、防衛産業など、世界の先端技術サプライチェーンの根幹を揺るがす可能性があり、関連企業の株価に激しい売りが出ています。地政学リスクが、具体的な経済的報復措置へと発展したことで、市場の不透明感は極度に高まっています。
大手半導体メーカー、台湾依存リスクの見直しを公式に言及
地政学リスクの高まりを受け、米国の複数の大手半導体メーカーが8日に開催された投資家向け説明会で、台湾有事の可能性を念頭に、生産拠点の多様化を加速させる方針を公式に表明しました。これまでは水面下で進められていたサプライチェーンの再編計画が公になった形です。この動きは、短期的には設備投資の増加や生産コストの上昇に繋がり、半導体業界全体の収益性を圧迫するとの懸念を生んでいます。企業の防衛策が、かえって市場の不安を煽るという皮肉な結果となりました。
ISM非製造業景況指数が予想外の悪化 – 関税懸念がサービス業にも波及
昨日発表された米サプライマネジメント協会(ISM)の非製造業景況指数が市場予想を大幅に下回り、景気減速懸念が再燃しました。内訳を見ると、特に新規受注や雇用の項目が悪化しており、企業の景況感が急速に冷え込んでいることが示唆されています。調査対象企業からは、米国の追加関税や世界的な貿易摩擦がもたらす輸入物価の上昇を懸念する声が多く聞かれました。これまで米国経済を牽引してきたサービス消費の勢いが明確に鈍化するとの見方が広がり、景気後退シナリオの現実味が増しています。
ECB高官、世界経済の分断に警鐘 – 欧州独自の経済安保戦略を模索
欧州中央銀行(ECB)の複数の高官から、米中対立の激化がもたらす世界経済の分断(フラグメンテーション)に対する強い懸念が相次いで表明されました。特に、米国と中国の対立の狭間で、欧州経済が最も大きな打撃を受ける可能性があると警告しています。これを受け、欧州連合(EU)内では、米国主導の対中包囲網とは一定の距離を置き、欧州独自の経済安全保障戦略を早急に確立すべきとの議論が本格化しています。世界の貿易体制が米・中・欧の3ブロックに分断されるとのシナリオが現実味を帯びており、グローバルに事業展開する日本企業にとっても、事業戦略の大きな見直しを迫られる事態となりそうです。
原油価格は乱高下、景気後退懸念と地政学リスクの綱引き続く
8日の原油市場は、非常に不安定な展開となりました。世界的な景気後退懸念の高まりが原油需要の減少観測に繋がり価格を押し下げる一方、中国によるレアアース輸出管理の強化といった地政学リスクの高まりが供給不安を煽り、価格を押し上げる要因となりました。この二つの要因が綱引き状態となり、WTI原油先物価格は一時的に急騰した後、急落するなど方向感の定まらない動きを見せました。エネルギー価格の不安定な動きは、各国のインフレ見通しを複雑にし、中央銀行による金融政策の舵取りを一層困難なものにしています。
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