人生の円熟期を迎え、ますます輝きを増しておられるアクティブ世代の皆様。これまでの豊かなご経験を胸に、これからの人生をどう描いていこうかと、心躍らせていらっしゃる方も多いことでしょう。一方で、ふとした瞬間に「これからのこと、そろそろ考えないとな…」という想いがよぎることはありませんか?特に、ご家族のこと、そして大切に築いてこられた資産のこととなると、「何から手をつければいいのか」「家族にどう切り出せばいいのか」と、少し立ち止まってしまうかもしれませんね。
ご安心ください。そのお気持ち、とてもよく分かります。この記事は、そんな皆様の心にそっと寄り添い、「相続」や「贈与」という少し難しく感じるテーマを、皆様の人生の物語の一部として、温かく、そして前向きに考えるためのお手伝いをいたします。最新の社会動向や制度を踏まえながら、ご家族皆様が笑顔で未来を迎えるための、具体的な第一歩を一緒に見つけていきましょう。
「円満な相続・贈与」とは? - 私たちの人生にどう関係するの?
「相続」と聞くと、なんだか難しい手続きや、ドラマで見るような家族間の揉め事、「争族」といった言葉を思い浮かべて、少し身構えてしまうかもしれません。ですが、本来、相続とは、皆様がこれまで一生懸命に歩んでこられた人生の証であり、大切なご家族への「最後のラブレター」のようなもの。財産だけでなく、感謝の気持ちや人生で大切にしてきた価値観といった「想い」を、次の世代へと繋いでいく、とても温かい営みなのです。
では、なぜ「争族」が起きてしまうのでしょうか。その多くは、財産の多い少ないが原因ではありません。実は「コミュニケーション不足」や「想いのすれ違い」がほとんどなのです。「きっと分かってくれているだろう」「言わなくても伝わっているはず」という思い込みが、残されたご家族を悩ませてしまうことがあります。だからこそ、輝く世代の皆様が、心身ともに元気でいらっしゃる今、ご自身の想いを整理し、ご家族と少しだけ未来の話をしておくことが、何よりもの「円満な相続」への近道となるのです。これは、残されるご家族の負担を軽くする最大の思いやりであり、ご自身の想いを確実に未来へ届けるための大切な準備なのです。
なぜ今考えるべき? - 知っておきたい3つの理由
「まだ先のこと」と思わず、なぜ「今」準備を始めることが大切なのでしょうか。それには、社会の変化に合わせた、いくつかの明確な理由があります。
理由1:2024年から始まった、知っておきたい新ルール
実は、相続や贈与に関するルールは、少しずつ変化しています。特に2024年からの変更は、皆様の計画に大きく関わる可能性があります。例えば、亡くなる前の一定期間内に行われた生前贈与を、相続財産に加えて計算し直す「持ち戻し」という仕組みがあります。この期間が、これまでの3年から2024年1月1日以降の贈与から段階的に7年に延長されました。つまり、より長期間の贈与が相続税の対象に含まれるようになったのです。また、生前贈与の非課税制度である「相続時精算課税制度」にも、新たに年間110万円の基礎控除が新設され、使い勝手が向上しました。こうした新しいルールを知っているかどうかで、未来の選択肢が大きく変わってきます。
理由2:不動産の相続登記(名義変更)が義務化
これも大きな変化です。2024年4月1日から、不動産の相続登記が義務化されました。これまでは、親から受け継いだ家や土地の名義変更をしないままでいるケースも少なくありませんでしたが、今後は正当な理由なく手続きを怠ると、過料が科される可能性があります。ご自身の代でしっかりと手続きを済ませておくことが、お子様やお孫様の世代への大切な配慮となります。
理由3:人生100年時代と、元気な「今」の重要性
私たちは今、人生100年時代を生きています。これは素晴らしいことですが、同時に、年齢を重ねる中で判断能力が少しずつ変化していく可能性も考えなければなりません。遺言を書いたり、財産の管理方法を決めたりといった大切な意思決定は、心身ともに健康で、ご自身の考えをはっきりと示すことができる時にしか行えません。ご自身の意思を法的に有効な形で残せるのは、判断能力がはっきりしている「今」だけなのです。ご家族のため、そして何よりご自身のために、元気なうちから準備を始めることが、未来の安心に繋がります。
まずはここから!家族円満のための3ステップ
「何から始めれば…」と迷ったら、まずはこの3つのステップから試してみてください。難しく考えすぎず、できることからで大丈夫ですよ。
□ ステップ1:想いと財産の「見える化」
まずは、ご自身の想いを整理してみましょう。誰に何を遺したいか、どんな感謝を伝えたいか。市販のエンディングノートや、普通のノートで構いません。併せて、預貯金、不動産、有価証券、保険など、どんな財産がどこにあるかを一覧にまとめておくと、ご家族も安心です。これは、ご自身の人生の棚卸しにもなります。
□ ステップ2:家族との「対話」のきっかけ作り
いきなり「相続の話をしよう」と切り出すと、ご家族も驚いてしまうかもしれません。「これからの人生をどう楽しむか、一緒に考えてみない?」「万が一の時のために、大事な書類の場所だけ伝えておきたくて」など、軽い雰囲気で話し始めるのがコツです。大切なのは、あなたの想いを直接伝えることです。
□ ステップ3:気軽に「専門家」の力を借りてみる
少し具体的な話になったら、一人で抱え込まずに専門家に相談してみましょう。自治体や金融機関が開催する無料相談会などを利用するのも良い方法です。「こんな初歩的なことを聞いてもいいのかな?」なんて心配は無用です。専門家は、皆様の不安に寄り添うプロフェッショナルです。
専門家はどこにいる? - 頼れる相談窓口と選び方
いざ相談しようと思っても、誰に相談すればよいか迷いますよね。相談内容によって、頼れる専門家は異なります。
- 税理士:相続税がかかるかどうか、どうすれば税負担を軽くできるか、といった税金に関する相談のプロです。
- 弁護士:遺産分割でご家族の意見がまとまりそうにない場合や、法的なトラブルを防ぎたい場合に頼りになります。
- 司法書士:不動産の名義変更(相続登記)や、遺言書の作成支援の専門家です。
- 行政書士:遺言書の作成支援や、遺産分割協議書の作成など、書類作成のプロです。
- ファイナンシャル・プランナー(FP):お金全体の視点から、これからのライフプランに合わせた総合的なアドバイスをしてくれます。
- 信託銀行などの金融機関:遺言の保管や執行(遺言信託)、財産の管理(家族信託)など、幅広いサービスを提供しています。
選ぶ際のポイントは、①ご自身の相談内容に合った専門分野であること、②親身に話を聞いてくれる、相性の良い相手であること、③料金体系が明確であること、の3つです。まずは初回相談などを利用して、気軽に話してみることをお勧めします。
まとめ:心豊かな未来を描くための第一歩
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。相続・贈与の準備は、決して難しいことばかりではありません。むしろ、ご自身の人生を振り返り、ご家族への感謝を再確認する、とても意義深い時間です。
- 相続準備は、財産だけでなく「想い」を伝える大切なプロセスです。
- 2025年を見据え、新ルールを理解して早めに始めることが、未来の安心に繋がります。
- まずはご自身の想いと財産を「見える化」し、ご家族と話すきっかけを作ってみましょう。
- 一人で悩まず、必要に応じて頼れる専門家の力を借りることも賢い選択です。
今日からできる小さな一歩は、例えば、大切なパートナーやご家族に「いつもありがとう」と伝えてみることかもしれません。あるいは、本屋さんでエンディングノートをそっと手に取ってみることでも良いでしょう。その小さな一歩が、あなたとあなたの大切なご家族の、心豊かな未来を描くための、確かな始まりとなるはずです。
免責事項
本記事で提供される情報は、記事作成時点のものです。税制、年金、法律などの制度は将来変更される可能性がありますので、必ず公式サイトや専門家にご確認ください。
また、本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品、法律、税務上のアドバイスを行うものではありません。個別の状況に応じた最終的な決定は、税理士、弁護士、ファイナンシャル・プランナーなどの専門家にご相談の上、ご自身の責任において行っていただきますようお願い申し上げます。


