マーケットニュース

昨日のマーケット概況(2025年7月9日):朝方は前日の米ハイテク株高の流れを引き継ぎ買いが先行したものの、米政権による対日追加関税の検討が報じられると、上値の重い展開となりました。日経平均株価の終値は前日比132.47円高の39,821.28円と続伸したものの、上げ幅を縮小して取引を終えました。外国為替市場では、日米の金利差を背景とした円安の流れが継続し、円相場は一時1ドル=147円台に迫るなど、円安水準で推移しました。米国市場ではダウ平均株価が下落しましたが、ハイテク株は底堅さを見せています。米長期金利は高止まりしており、日米金利差を意識した取引が続いています。原油価格は、世界経済の減速懸念から下落。市場では新たな関税問題への警戒感が燻る一方、好調な企業業績への期待も根強く、方向感の定まらない状況となっています。

米政権、対日追加関税25%を検討か 市場では警戒感広がる

米国の有力メディアが、政権内部で日本からの輸入品に対し最大25%の追加関税を課す案が浮上していると報じたことで、市場では新たな火種への警戒感が広がっています。特に自動車や電子部品、鉄鋼製品などが対象となる可能性が指摘されています。この報道に対し、日本政府は直ちに「極めて遺憾」とのコメントを発表。仮に発動されればWTO(世界貿易機関)のルールに抵触する可能性が高いとして、断固として反対する姿勢を強調しました。昨日の株式市場では、このニュースが重石となり、日経平均は一時マイナスに転じる場面も見られました。世界経済の減速懸念を強める内容だけに、今後の日米間の協議の行方が最大の焦点となっています。

米中対立は長期化の様相、中国への関税は高止まり

米中間の貿易摩擦は、解決の糸口が見えないまま泥沼化の様相を呈しています。米政権は、特にハイテク分野や知的財産権の問題を重視し、中国からの輸入品に対して高関税を維持する方針を崩していません。一部では、特定の戦略物資に対して100%を超える関税率も維持されており、世界経済の二大巨頭の対立がいかに根深いかを物語っています。この対立は、世界中のサプライチェーンに深刻な影響を与え、部品調達の遅延や生産コストの上昇を招いています。中国も報復関税や非関税障壁で対抗しており、米中両国の企業の業績悪化が鮮明になりつつあります。多くのグローバル企業が生産拠点の見直しを迫られており、市場の先行き不透明感を増幅させる最大の要因となっています。

EUなどへの関税猶予、7月上旬の期限切れを市場は警戒

米政権は、欧州連合(EU)や他の同盟国に対し、鉄鋼・アルミニウム製品などに課していた追加関税の適用を一時的に猶予していましたが、その措置が7月上旬に期限を迎えます。米国内の産業保護を求める声と、同盟国との関係を重視する声が対立する中、政権がどのような判断を下すか市場は固唾をのんで見守っています。もし猶予措置が延長されなければ、対象国との貿易摩擦が再燃し、世界的な保護主義の連鎖に拍車をかける恐れがあります。欧州委員会(EC)は米国に対し、一方的な措置は双方の利益にならないとして協議の継続を強く働きかけており、予断を許さない状況が続いています。

日米通商交渉、視界不良に

先週まで行われていた第7回の日米通商協議では、農産品の市場開放や為替条項などを巡って両国の主張には隔たりが残ったままでした。そうした中、今回の対日追加関税の検討報道は、これまでの交渉の前提を覆しかねないものです。日本側は強い不快感を示しており、交渉のテーブルに着くこと自体が困難になる可能性も浮上しています。市場関係者の間では、交渉が決裂すれば、日米の経済関係が急速に悪化し、大幅な円高と株価のさらなる下落を招きかねないとの警戒感が広がっており、今後の政府の対応が厳しく問われることになります。

在日米軍経費問題が再燃か、地政学リスクも重石に

米国内の厳しい財政事情や、国内インフラ整備の財源確保を優先する声の高まりを背景に、同盟国に対する応分の負担を求める動きが再び強まっています。一部報道では、在日米軍の駐留経費負担の大幅な増額要求や、一部機能の見直し・縮小の可能性も取り沙汰されています。こうした動きは、貿易問題と絡めて交渉のカードとして使われる可能性も否定できません。これは東アジア地域の安全保障環境に直接的な影響を与えるだけでなく、日本の防衛費増額圧力につながる可能性もあります。このような地政学リスクの高まりは、海外投資家の日本市場に対する見方を慎重にさせ、相場の上値を重くする一因となっています。

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