
昨日のマーケット概況(2025年10月29日、水曜日)
昨晩29日の米国市場は、FRBが市場の予想通り今年2度目の利下げを決定したものの、パウエル議長が12月の追加利下げに慎重な姿勢を示したことで、上値の重い展開となりました。長期化する政府閉鎖(29日目)も依然として市場の重しとなっています。一方で、ハイテク株は堅調で、特にAI半導体大手のNvidiaが時価総額5兆ドルの大台を突破し、相場を力強く牽引しました。この流れを受け、アジア市場は総じて好調に推移。米中首脳会談を控えて関係改善への期待が高まる中国市場は10年ぶりの高値をつけ、日本の日経平均株価も米国株高を好感し、遂に51,000円台に乗せ史上最高値を更新しました。好材料と悪材料が綱引きする複雑な相場展開となっており、投資家は慎重な判断を迫られています。金利はFRBの発表後にやや上昇し、為替市場ではドルが主要通貨に対して小動きとなるなど、全体的には次の方向性を探る動きとなっています。
【米国】FRBが利下げ断行!しかしパウエル議長の「一言」が市場に冷や水
FRBは29日、市場の予想通り0.25%の利下げを決定しました。これは今年に入って2度目の利下げであり、背景には長引く政府閉鎖による経済への悪影響や、一部経済指標に見られる景気減速の兆候への懸念があります。利下げ自体はポジティブな材料ですが、市場の反応は限定的でした。その最大の理由は、記者会見に臨んだパウエル議長の発言にあります。市場が期待していた「連続利下げ」への道筋が不透明になったことで、今後の金融政策の方向性を見極めたいとする様子見ムードが広がっています。議長は12月の追加利下げを確約せず、あくまで「データ次第」であるとの姿勢を強調しました。これは、FRBが拙速な金融緩和に慎重であることを示唆しており、株価の上値を抑える要因となりました。さらに、29日目に突入した政府閉鎖問題が解決に向かわなければ、企業の投資活動や個人消費がさらに冷え込むリスクも残ります。利下げというカンフル剤が投下されたものの、米国経済の先行きには依然として不透明感が漂っています。
【米国】AIの巨神、Nvidia時価総額5兆ドル!この熱狂はいつまで続くのか?
AIブームの象徴である半導体大手Nvidiaの勢いが止まりません。29日の取引で同社の株価は続伸し、ついに時価総額が5兆ドルの大台を突破しました。これは市場最高値であり、その巨大な企業価値は、同社が提供するAI向け半導体が現代経済においていかに不可欠な存在であるかを物語っています。生成AIの急速な普及に伴い、データセンター向けの高性能GPU(画像処理半導体)への需要は爆発的に増加しており、Nvidiaの業績を力強く押し上げています。この動きはNvidia単独にとどまらず、関連するハイテク企業や半導体セクター全体に好影響を与え、株式市場全体を牽引するエンジンとなっています。Nvidiaの株価動向は、もはや一企業の業績を超え、市場全体のセンチメントを左右する重要な指標となっています。ただし、一部からは急激な株価上昇に対する過熱感を指摘する声も上がっており、今後の金利動向や市場全体の地合いの変化には注意が必要です。
【中国】10年ぶり株高!米中首脳会談への「過剰期待」に潜むリスクとは
間近に迫った米中首脳会談への期待を追い風に、29日の中国株式市場は10年ぶりの高値を記録しました。特に、エネルギー株や非鉄金属株が相場を牽引しました。市場の楽観ムードの背景にあるのは、米国が中国製品に対する一部関税の引き下げを検討しているとの報道です。これが実現すれば、長らく中国経済の足かせとなってきた貿易摩擦が緩和され、企業業績の改善につながるとの思惑が広がっています。中国政府が発表した新たな5カ年計画案で、経済成長を「合理的な範囲内」に保つ方針が示されたことも、安定成長への安心感を与えました。楽観論が先行しているものの、米中間の構造的な対立が根深いことを考えると、首脳会談の結果次第では期待が失望に変わるリスクも念頭に置くべきでしょう。また、EUが中国系半導体メーカーNexperiaを巡る問題で中国に懸念を示すなど、ハイテク分野での対立の火種は依然としてくすぶっており、予断を許さない状況が続いています。
【日本】日経平均、青天井の51,000円突破!政府の「920億ドル」対策が起爆剤に
日本の株式市場が歴史的な局面を迎えています。29日の日経平均株価は前日の米国市場の上昇や、米中関係の改善期待を背景に買いが先行し、取引時間中に51,000円の大台を突破、史上最高値を更新しました。この株高を後押ししているのが、高市政権が準備を進めているとされる大規模な経済対策です。報道によると、その規模は920億ドル(日本円で13兆円以上)を超えるとされ、物価上昇に苦しむ家計への負担軽減策が盛り込まれる見込みです。海外要因に加えて、政府による大規模な経済対策への期待が国内投資家の心理を強力に下支えしている構図です。政府が発表した月例経済報告では、景気は「緩やかに回復している」との判断が維持されたものの、個人消費は物価高の影響で、設備投資や輸出も伸び悩んでいると指摘されており、日本経済が完全に好循環に入ったとは言えない状況です。経済対策が実体経済をどこまで押し上げられるかが、今後の株価の持続性を占う上で重要な鍵となります。
【地政学】氷が溶ける北極圏が新たな火種に?EUが警戒する中露の野望
欧州連合(EU)が、新たな地政学的なフロンティアとして「北極圏」への関与を強めています。フォンデアライエン欧州委員長は、気候変動による氷床融解で北極海航路の利用可能性が高まっていることを指摘。これが経済的な機会であると同時に、安全保障上の新たな課題を生んでいるとの認識を示しました。背景には、この地域で影響力を増す中国とロシアへの強い警戒感があります。中国のコンテナ船が既に北極海航路を利用して欧州に到達しており、ロシアは旧ソ連時代の軍事基地を再稼働させるなど、北方海路の管理を強化しています。これまで遠い存在だった北極圏が、資源、航路、安全保障を巡る大国間の新たな競争の舞台となりつつあります。EUは、この地域への投資を拡大し、独自の北極圏政策を見直すことで、中露の動きに対抗する構えです。経済安全保障はEUの重要課題であり、インドとのFTA交渉や中国系半導体メーカーを巡る問題など、多方面で戦略的な動きを見せており、北極圏はその最新の焦点と言えるでしょう。
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