経済用語解説

「また値上げか…」「給料は上がらないのに、どうしてモノの値段だけが上がるんだろう?」「私の貯金、このままで大丈夫?」

最近、スーパーでため息をついたり、将来のお金に不安を感じたりすることが増えていませんか?実はそのモヤモヤ、テレビやネットで毎日流れてくる「インフレ」「金利」「円安」といった経済ニュースと、がっちり繋がっています。

一見すると難しそうで、自分とは関係ない遠い世界の話に聞こえるかもしれません。しかし、これらの言葉は、あなたの給料、貯金、そして日々の買い物の値段を決める「社会のルール」そのものなのです。この記事では、経済ニュースの裏側を読み解くために不可欠な5つの重要キーワードを、人気経済ジャーナリストが世界一やさしく解説します。読み終わる頃には、ニュースの点が線でつながり、自分の資産を守り育てるためのヒントが見えてくるはずです。

1. インフレーション - スーパーの買い物かごが軽くなるワケ

【基本のキ】
インフレとは、「インフレーション」の略で、モノやサービスの値段(物価)が全体的に、継続して上がり続ける現象のことです。例えば、去年1個100円で買えたリンゴが、今年は110円に値上がりしたとします。これが色々な商品で起こるのがインフレです。ここで重要なのは、モノの値段が上がるということは、逆にお金の価値が下がっているということです。去年は1000円で10個買えたリンゴが、今年は9個しか買えない。同じ1000円札なのに、買えるモノの量が減ってしまうのです。これが、あなたの銀行預金の実質的な価値が目減りする仕組みです。

【なぜ起こる?】
インフレには大きく分けて2つのタイプがあります。ひとつは、景気が良くてみんなの給料が上がり、「もっとモノが欲しい!」という需要が高まって値段が上がる「良いインフレ」。もうひとつは、原材料費や輸送費が高騰し、企業がコストを価格に上乗せせざるを得ず、給料は上がらないのに値段だけが上がる「悪いインフレ」です。最近日本で起きているのは、後者の側面が強いと言われています。

2. 政策金利 - 経済全体の「蛇口」をひねるハンドル

【基本のキ】
「日銀が金利を引き上げ…」といったニュースの「金利」とは、多くの場合「政策金利」を指します。これは、国の中央銀行(日本の場合は日本銀行)が、一般の銀行にお金を貸し出すときの「基本レンタル料」のようなものです。このレンタル料を安くすれば、一般の銀行は私たちや企業にお金を貸しやすくなり(住宅ローン金利が下がるなど)、世の中にお金が出回りやすくなります。逆にレンタル料を高くすれば、お金を借りにくくなり、世の中のお金の量が減ります。

【なぜ動かす?】
中央銀行は、この「政策金利」というハンドルを使って、経済の温度調整をしています。景気が悪すぎるときは金利を下げて(金融緩和)、経済活動を活発にしようとします。逆に行き過ぎたインフレのように景気が過熱しているときは、金利を上げて(金融引き締め)、経済を少しクールダウンさせようとします。つまり、金利を上げ下げすることで、世の中に出回るお金の量をコントロールしているのです。

3. PER(株価収益率) - 株の「お買い得度」を測るモノサシ

【基本のキ】
少し投資の話になりますが、PERは「株価収益率」と訳され、その会社の株価が、利益と比べて「割安」か「割高」かを判断するための代表的な指標です。計算式は「株価 ÷ 1株あたりの利益」。例えば、あるパン屋さんの会社が1000万円で売りに出されているとします(これが時価総額=株価)。このパン屋さんが年間100万円の利益を上げているなら、PERは10倍(1000万円 ÷ 100万円)です。これは「もし会社を買ったら、10年分の利益で元が取れる」という意味になります。

【なぜ重要?】
この「10倍」という数字だけでは意味がありません。ライバルのパン屋さんのPERが平均15倍だったり、このパン屋さん自身の過去のPERが20倍だったりした場合、「今の10倍という値段は、お買い得かもしれない」と考えることができます。PERは、いわば株の「お買い得度」を測るモノサシ。投資をする際に、企業の価値を冷静に分析するための重要なツールなのです。

4. 為替レート(円安・円高) - 海外旅行と企業の成績表を左右するシーソー

【基本のキ】
「1ドル=150円」といったニュースで聞くのが為替レートです。多くの人が混乱しがちですが、シンプルに考えましょう。1ドルのジュースを買うのに、以前は100円で済んだのに、今は150円必要になったとします。これは「円の価値がドルに対して安くなった」ことを意味します。これが「円安」です。逆に1ドル80円になれば、より少ない円でドルが買えるので「円高」です。円安とは、日本円の価値が外国の通貨に対して安くなること、と覚えましょう。

【なぜ起こる?生活への影響は?】
為替が動く最大の要因の一つが、先ほど解説した「政策金利」の差です。例えば、アメリカが金利を上げ、日本の金利が低いままだと、投資家は金利が低い円を売って、高い金利がもらえるドルを買おうとします。この「円売り・ドル買い」が加速すると円安が進みます。円安は、自動車など海外に製品を売る輸出企業にとっては、海外での売上が円換算で増えるため追い風です。しかし、私たちは海外からガソリンや小麦、スマートフォンの部品などを輸入しているため、円安は輸入品の価格を押し上げ、物価高の大きな原因となるのです。

5. サプライチェーン - あなたの牛丼が届くまでの「リレー」

【基本のキ】
サプライチェーンとは、商品が原材料の調達から製造、在庫管理、配送、販売を経て、私たちの手元に届くまでの「一連の流れ」のことです。例えば、一杯の牛丼を考えてみましょう。アメリカで育てられた牛、中国産の玉ねぎ、国産のお米が、それぞれ船やトラックで運ばれ、工場で加工され、お店に届けられて初めて、私たちは牛丼を食べることができます。この壮大なリレー全体がサプライチェーンです。

【なぜ重要?】
コロナ禍でのマスク不足や、半導体不足による自動車の減産を思い出してください。あれらは、海外の工場が止まったり、物流が滞ったりして、サプライチェーンが寸断されたことで起きました。このリレーは、どこか一か所でもトラブルが起きると全体がストップしてしまい、モノが手に入らなくなったり、価格が急騰したりします。企業の業績や株価は、このサプライチェーンの安定性に大きく左右されるため、投資家にとっても無視できない重要な視点となっています。

私たちの生活への影響MAP

これら5つのキーワードは複雑に絡み合って、私たちの生活に影響を与えます。例えば、海外のインフレを抑えるための利上げが、日米金利差を生んで円安を招き、日本の輸入品価格を上昇させるという連鎖が起きています。

【メリット(良い影響)の可能性】

  • 輸出企業の株:円安は輸出企業の業績を押し上げるため、関連企業の株価は上昇しやすくなります。
  • 外貨建て資産:外貨預金や米国株などを持っている場合、円安が進むと円換算での資産価値が上がります。

【デメリット(悪い影響)の可能性】

  • 預貯金:インフレが進むと、銀行に預けているお金の価値が実質的に目減りしていきます。
  • 輸入品・光熱費:円安やサプライチェーンの混乱で、ガソリン、食料品、電気・ガス代などが値上がりし、家計を圧迫します。
  • 住宅ローン(変動金利):将来、日本の政策金利が引き上げられると、変動金利型の住宅ローン返済額が増加する可能性があります。
  • 海外旅行:円安だと、海外での買い物や食事が割高になります。

まとめ:未来を生き抜くための経済リテラシー

難しく感じられた経済ニュースも、5つのキーワードを理解することで、その裏側にある大きな流れが見えてきたのではないでしょうか。

  • インフレは「お金の価値」、政策金利は「経済の温度計」、為替レートは「円の通信簿」です。
  • これらの指標は互いに連動し、私たちの給料や貯金の価値、ローンの返済額まで、あらゆる面に影響を及ぼします。
  • 企業の株価を見るときは、PERで「お買い得度」を、サプライチェーンの状況で「安定性」を確認することが重要です。
  • 大切なのは、ニュースの数字だけを追うのではなく、「なぜそうなっているのか?」とその背景にある経済の仕組みを考えるクセをつけることです。

ニュースの裏側にある経済の大きな流れを読み解くことが、これからの時代、インフレや円安から自分の大切な資産を守り、賢く育てていくための第一歩となるでしょう。

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