
「政府が新たな経済対策を発表」「国の借金、過去最高を更新」…ニュースでこんな言葉を耳にして、「また難しい話か…」とチャンネルを変えていませんか?実は、この話、あなたの「給料」、毎月の「住宅ローン返済額」、そしてスーパーでの「買い物カゴの中身」に直結するとても大切な話なのです。政府が使うお金、つまり「財政」の動きは、遠い霞が関の話ではありません。それは、私たちの家計と密接に繋がった、いわば「日本という国の家計簿」そのもの。この記事では、経済ニュースを読み解く上で絶対に欠かせない5つのキーワードを、家計簿や買い物に例えながら、ゼロから徹底解説します。この記事を読み終える頃には、ニュースの裏側にある政府の意図が見え、自分の資産をどう守り、育てていくべきかのヒントが得られるはずです。
「財政政策」とは? - 国を一つの「家計」に例えてみよう
まず、すべての基本となるのが「財政政策」です。難しく聞こえますが、要は「国のお金のやりくり」のこと。あなたの家庭で、収入(給料)と支出(生活費、教育費、ローン返済など)を管理するのと同じです。
- 国の収入(歳入):主に私たちが納める「税金」です。家庭でいう「給料」にあたります。
- 国の支出(歳出):道路や学校を作る「公共事業」、医療や年金などの「社会保障」、警察や消防のサービスなどです。家庭でいう「生活費やインフラ費」ですね。
景気が良い時(給料が増えている時)は、少し贅沢したり、将来のために貯金を増やしたりできます。しかし、不景気で収入が減ってしまうと、家計は苦しくなりますよね。国も同じです。景気が悪くなると、企業の業績が悪化し、人々の所得も減るため、税収(国の給料)が落ち込みます。
そんな時、政府=家計の管理者(親)として、「このままではマズい!」と特別な対策を打ちます。これが財政政策の出番です。具体的には、税金を安くして(減税)、みんなが買い物をしやすくしたり、公共事業を増やして仕事を生み出したりします。このように、政府が税金や公共事業の規模を調整することで、景気の波をコントロールしようとすること、それが財政政策の役割なのです。
カンフル剤か、未来へのツケか?「財政出動」と「財政赤字/国債」
景気が悪い時に政府が取る強力な一手、それが「財政出動」です。これは、家庭で言えば「一時的にカードローンで借金をしてでも、子どもの塾代(将来への投資)や、緊急の出費(生活の立て直し)にお金を使う」ようなものです。政府は、給付金を配ったり、大規模な公共事業を行ったりして、世の中に出回るお金の量を強制的に増やし、経済を活性化させようとします。
確かに、財政出動は落ち込んだ経済を刺激するカンフル剤になります。しかし、問題はそのお金をどこから持ってくるかです。税収が落ち込んでいるのですから、収入だけでは足りません。そこで政府は「国債」を発行します。国債とは、国が発行する「借用書」のようなもの。これを銀行などに買ってもらうことで、政府は一時的にお金を借り入れ、財政出動の財源とするのです。
この結果、何が起きるか。国の収入(税収)より支出(公共事業や社会保障費など)が多くなり、家計が赤字になるのと同じ「財政赤字」の状態に陥ります。そして、その赤字を埋めるために発行された国債は、「国の借金」として積み上がっていきます。財政出動は短期的な景気刺激策ですが、その原資は未来からの借金である国債であり、財政赤字を拡大させるという副作用があるのです。
なぜモノの値段が上がる?「インフレ」と政府の政策の危うい関係
政府が財政出動でお金をたくさん使うと、世の中に出回るお金の量が増えます。すると、どうなるでしょうか。みんながお金を持つようになると、モノを買いたい人が増えます。一方で、モノの量はすぐには増えません。結果として、モノの値段が上がっていきます。これが「インフレーション(インフレ)」です。
例えば、一杯1000円だったラーメンが、数年後には1200円になっている。これがインフレです。給料も同じペースで上がっていれば問題ありませんが、給料は変わらないのに物価だけが上がると、実質的にお金の価値が下がり、生活は苦しくなります。これが「悪いインフレ」です。
政府の財政出動は、人為的に需要を生み出すため、インフレを加速させる要因になり得ます。特に、供給能力(モノやサービスを作る力)が追いつかない中で大規模な財政出動を行うと、給料の上昇を伴わない「悪いインフレ」を引き起こし、私たちの生活を直撃する危険性をはらんでいます。
私たちの生活への影響MAP(財政出動が行われた場合)
【メリット(良い影響)】
- 景気・株価:世の中にお金が出回り、企業の活動が活発になるため、景気が上向き、株価が上昇しやすくなります。
- 雇用:公共事業などが増えることで、新たな仕事が生まれ、失業率が改善する可能性があります。
- 給付金など:減税や給付金によって、短期的に家計が助かることがあります。
【デメリット(悪い影響)】
- 預貯金:インフレが進むと、お金の価値が実質的に目減りします。銀行に預けている100万円の価値が、1年前より下がってしまう可能性があります。
- 物価:輸入品を含む様々なモノやサービスの値段が上がり、家計の負担が増えます。
- 将来の負担:国債という名の借金が増えるため、将来、その返済のために増税されたり、年金などの社会保障サービスが削られたりするリスクが高まります。
- 住宅ローン金利:国の借金が増えすぎると、国債の信用が揺らぎ、長期金利が上昇する可能性があります。これは住宅ローン(特に固定金利)の金利上昇に繋がることがあります。
国の“健康診断書”「プライマリーバランス」で未来の負担を読む
さて、国の借金が増え続けると、「この国は本当に大丈夫か?」と不安になりますよね。その財政の健全性をチェックするための重要な指標が「プライマリーバランス(PB)」です。日本語では「基礎的財政収支」と言います。
これは、国の家計簿でいうと、「今年の給料(税収など)だけで、ローン返済以外の生活費(政策的経費)をまかなえているか?」を示す指標です。
- PB黒字:税収だけで政策的経費をまかなえている状態。家計で言えば、給料だけで生活費を払えている「健全な状態」です。
- PB赤字:税収だけでは足りず、政策的経費を支払うためにも新たな借金(国債発行)をしている状態。家計で言えば、生活費のためにカードローンを組んでいる「危険な状態」です。
現在の日本は、長年にわたってこのPBが赤字の状態です。つまり、過去の借金の利払いだけでなく、その年の政策を行うためにも新たな借金を重ねている「自転車操業」の状態にあると言えます。ニュースで政府が「PB黒字化目標」を掲げているのは、この不健全な状態から脱却し、財政の持続可能性を取り戻そうとしているからです。この指標の動向は、未来の私たちや子供世代の負担(増税や社会保障削減)に直結する重要なサインなのです。
まとめ:未来を生き抜くための経済リテラシー
ここまで見てきた5つのキーワードは、すべて繋がっています。最後に、その関係性を整理し、私たちが今後どう行動すべきかを考えてみましょう。
- 政府は景気をコントロールするために「財政政策」を行います。
- 景気後退時には、景気刺激策として「財政出動」が行われることがあります。
- その財源は「国債」で賄われることが多く、結果として「財政赤字」が拡大します。
- お金が市場に増えすぎると「インフレ」が起き、私たちのお金の価値が下がるリスクがあります。
- 国の財政の健全性は「プライマリーバランス(PB)」でチェックでき、これが赤字続きだと将来世代の負担が増えます。
これからは、ニュースで「大型の補正予算が成立」「国民への一律給付を検討」といった言葉を聞いたら、こう考えてみてください。
「これは財政出動だな。財源は何だろう?また国債発行かな?」「これが実行されたら、インフレは加速しないだろうか?自分の貯金は大丈夫か?」「日本のプライマリーバランスはさらに悪化するな。将来の増税に繋がるかもしれない…」
このように、政府の決定を自分事として捉え、その裏側にある影響を多角的に予測する視点を持つこと。それこそが、不確実な未来を生き抜き、自身の資産を賢く守り、育てるための第一歩となるのです。
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